お金目的で王子様に近づいたら、いつの間にか外堀埋められて逃げられなくなっていた……

うしまる

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その後1

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 あれからというもの、色々あった。
 湖に落ちた私達は、何故か去ったはずのジルさんに救い出され。私が投げ捨てた魔導具もちゃんと回収をされた。
 あの日はそのまま、湖の上のお屋敷にて一泊を過ごし。そこから、城に戻ると共に私の厳重なる監視と拘束が始まったりもした。
 だから、その日の学園は当然のようにスキップして。代わりに王子による綿密な刷り込み教育を受講した。
曰く、『君はこれから、全ての欲を思うがままに叶えることができるんだよ。幸せだね。幸せになろうね』と。
 こんな言葉を延々と、それこそ意識のある間はずっ――と囁かれ続ける特別授業である。
 最初こそ気持ちを強く持てと、果敢に王子に交渉を持ち掛けようとした私だったけど、閉ざされた空間に食事ですら王子に食べさせて貰うような状況だ。夕方過ぎにはすっかり懐柔されかけてた。
 だってこれが政略結婚と見たら、私側に拒否する権利などは微塵もないはずなんだ!
 美味しい食事に素敵な寝床があって、毎晩王子の洗脳子守唄付き!
 ワァ、ナンテ幸セ! 幸セダナァ!
 と、そんな感じで迎えた翌日。
 私は、ひらっひらでフワッフワの妖精ドレスを身に纏い――
 艶めく大理石の床。
 黄金の祭壇。
 天井高く伸びるオルガンのパイプ。
 白と金で統一されたこの崇高な空間で。
「では、指輪の交換を」
 途轍もなく場違い感半端ない場所の、主役になってしまっていた。
 私の前に立つは、綿毛を寄せ集めて作ったみたいな髭と眉毛を装備した恰幅のいいご老人。
 ちなみにこの人は、かの有名な大司教という役にあらせられる御方らしい。
 そんな方が見守る中、私は隣の王子と向かい合い左手を取られていく。薬指には、直視もままならないほどの眩い指輪がはめられて。私も王子へと指輪をはめていく。
 石などの装飾はなくとも、同じゴールドのお揃いの指輪だ。
 いつから用意してたの……? とか考え出したら洗脳が切れて発狂しそうなので、考えない。
 ついさっき婚約証書なるものにサインをした時だって、震える手でガッタガタの名前を記す醜態を見せつけたばかりなのだ。
 後から、あれ? これ、名前間違えて書けば無効になったのかな? とか思いついたけど、今となればそんな浅はかなことしなくて良かったと心から安堵する。
 なんせ、指輪の交換を経て参列者へと向いた私たちの目の前――そこには、王様王妃様王太后様王太子様諸々。
 気高きロイヤルな面々が勢揃いだった。
 改めてこの場の重さを思い知る。
 横には、約一週間ぶりに相見える私の両親がいたりするけれど、何故か彼らの中では『大好きな相手と一週間楽しんだ娘』みたいに盛り上がってて。とてもじゃないけど同じ温度の喜びは、絶対表せないので目を逸らす。
 向いた先には、開け放たれた重厚な扉から光の道が輝いていて。
 全身に響くオルガンの演奏と聖歌隊の讃美歌に包まれながら、私は王子の腕をとって王室礼拝堂を後にした。
 その薬指には、名実ともに最強最大に重たい枷を感じつつ。
 『ハーデウス王国・第二王子婚約者――ミラ・オーフェル』爆誕の瞬間である。
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