闇鍋という名の短編集

悠木全(#zen)

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男子校へ行こう

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 私の名は王子おうじ美春みはる
 これでも花の高校生だけど、私はちょっと普通じゃない高校生だった。
 なぜなら通っている高校が男子校なのだ。
 女の子にも拘らず、である。
 なぜそんなことになったのかと言うと、とある少女漫画の影響だった。引きこもりの兄の代わりに学校に行けと家族に命じられるという、なんとも理不尽な物語だけど、 私の愛読書だった。ちなみに少女漫画のラストはというと、主人公の秘密を知っているクラスの男子に、告白されて卒業後に結婚するんだけど。それがまたドラマチックで良かったのよね。
 できれば私も男子校の中から王子様を探したいと思ったのだけど。

 まずは入学式。
 男子の制服を着た私は、どこをどう見ても男の子だった。胸がないので、怪しまれることもなく。つつがなく入学式を終えることができた。あまりにも緊張しすぎて、王子様イケメン探しはできなかったんだけど。
 ちなみに登校が始まっても、私のことがバレることもなかった。
 ただ、自己紹介の時に、あまりに綺麗な声をしているからって、エンジェルボイス美春とか、わけのわからないあだ名をつけられた。
 そして十日が過ぎて、ようやく周囲を観察できる余裕ができた時。クラスのイケメンを覚えることができた。スポーツタイプのイケメンもいれば、インテリ系のイケメンもいた。中には野生味を帯びたイケメンもいたけど、遊び人すぎてドン引きだった。
 それから男子校での生活は普通だった。体操着は中に着ていくという方法で体育は乗り切り、身体測定も保健室の先生に賄賂を握らせてテキトーに終わらせることができた。私の夢は達成したも同然——のはずだった。
 だけど、季節が三回過ぎても、イケメンと接点を持つことはできなかった。なぜなら、バレた瞬間ゲームオーバーになるからだ。だから私は一生懸命、男のふりをして、男のふりをして、男のふりをして……気づけば学校を普通に卒業していた。



「……てなわけで、私は女の子だったのよ」

 二年後の同窓会で、クラスメイトたちに打ち明けた私。すっかり男装に慣れてしまった私は、その日も体型が隠れる服を着ていた。すると、クラスの面々は驚くどころか、一笑した。

「またそんな嘘を……そんなこと、あるわけないだろ。……まあ、確かに美春と付き合いたいやつは何人もいたけどな」

 カジュアルレストランで同窓会をしていた私は、クラスで一番仲の良かった鬼頭おにがしらくんに知らない事実を告げられた。

「は? 私と付き合いたい?」

 私が目を丸くしていると、同じく仲の良かった大木くんも頷いた。

「美春は綺麗な顔してるだろ。だから、男でもいいから……って、ことを話してたやつがいたんだよ」

「そんなの初耳なんだけど」

「まあ、そういう奴らは俺たちがねじ伏せてきたけどな」 

 ぼそりと告げた鬼頭くんに、私が「なんて?」と尋ねると、近くに座っていた山本くんがナプキンで私の口元を拭った。

「ちょっと、子供扱いしないで」

「じゃあ、汚さないように食べろよ」

 山本くんが甘い声で言うと、鬼頭くんが山本くんを睨みつける。

「お前、抜け駆けすんな」

「お前もだよ、鬼頭。ちゃっかり美春の隣に座んなよ」

 睨み合う元クラスメイトたち。
 まさか私が、イケメンに好かれたいという野望を達成しているとは知らず。三度目の同窓会で初めて教えられるのであった。
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