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「イアン、好きだ」
「俺も。けど待て」
「なんでだ」
「いいから、ちょっと話そう」
両手を広げたままムッとしているアルフレートに笑って、アルフレートのベッドの上に飛び乗り胡坐を掻く。初めて入った恋人の部屋に目をキラキラさせている場合ではなかった。食事の後はあれよあれよと王宮の使用人たちに体を磨かれ、当然の様にアルフレートの部屋に押し込められた。身に着けているバスローブの下には絶対にアルフレート希望であろうスケベな下着を身に着けている。ちなみにニールは王宮の侍従長に引き摺られるようにしてイアンの傍から離されていった。
こんなスケベな下着を全く見慣れない使用人に着替えさせられる此方の身にもなって欲しい。羞恥心で死にそうになったし文句も言いたかったがそれどころではない。
渋々イアンの前に同じように胡坐を掻いて座ったアルフレートにイアンは問いかけた。
「陛下と王妃様、なんで本当の事知らないわけ?呪い解けたのって偶々じゃん?ラブロマンスは作り話じゃん?どういうこと?」
「……その方が都合が良い」
「でも国のトップを騙しているのは胃が痛いんだけど」
「全くの嘘でもない」
「そうだけどさ……なんなら、呪い解けたのアルフレートのお陰みたいなとこあるじゃん。功績を横取りしてるみたいで嫌なんだけど」
「何故。その功績とやらで今やイアン、とその他婚約者達の好感度は他の追随を許さない程になってる」
「うん、有り難いね。でもさ、実際に頑張ったのって神子だし。みんなが目が覚める切欠になったのもアルフレートからじゃん。俺達婚約者がやったことと言えば冷たい態度をとったくらいだし。なんなら強制力が働いている間、離れようとした薄情者とも言えるわけ。なのにこう持て囃されるとさ」
「真面目だな。得するだけなんだから問題ない」
「いや、それがね。それが申し訳ないっていうか。何か周りが物凄い盛り上がってるけど、俺達何もしてないのにって心臓が痛くなる気持ち分かる?今全員そんな感じで毎日崇め称えられることに胃が痛むわけよ」
「大丈夫だ。俺が守る」
「うーん相変わらず偶に通じねぇな」
そうなのだ、ある程度時間が経てば噂など小さくなっていくかと思われていたのに、一か月経っても噂は小さくなるどころか大きくなっていく。
最近とにかく周りがヒートアップしすぎて悪役予定だった婚約者達はそれはそれは毎日胃が痛いのである。全員学園にいる間死んだような目をして毎日賞賛の声を聞いている。そう言った話はどんどん日に日に大きくなっていっており、今や悪役令息達は愛の天使と称されている。恥ずかしいしダサいし事実と異なり過ぎて辛い。
イアンはアルフレートの呪いを解く最中に邪教徒に襲われ三回は死にかけた事になっているし、ドミニクはその美しい姿から生贄にされそうになっているし、マシューは潜入捜査をしては何度も襲われそうになっていて、バロンはその血筋から邪教復活の資金の為牢に入れられ衰弱、身代金要求をされかけた設定になっている。
ベージルは暴行を受けて骨が折られた事になっているし、コリンは毒を飲まされ生死を彷徨った事になっている。もちろん全体的になんとか騎士団に助けられている。
いや、皆学園に来てたじゃん休みなく、と言いたいのに言えないのが辛いとイアンは嘆く。最近では専ら、もしかして俺達影がすごく薄かったのか?と全員で困惑している状態であった。
どんな状況になればそこまで話が大きくなるのか不明だが、何かしら皆その身に命の危機があった事になっているのだ。どうせならもっと神子に焦点を当てて欲しい。
神子のローズリーだってそれはもう英雄扱いではある。だが影が薄い。婚約者達の話が大きくなり過ぎたせいである。本人はこれ以上目立つと面倒だから丁度いいと飄々としているが、イアン達からすれば本物の英雄を知っているのに誉れを横取りしたようで落ち着かない。
ちなみに他の婚約者達は本当の事情は知らないが、神子が何かとんでもない苦労をしていただろう事は察知している。みな頭の回転が速いし察しが良いのだ。イアンの取り繕えない態度から感づいたとも言える。
「イアンと俺の為だ」
「アルの?」
「そうだ。俺は呪われていたとは言え他の者を抱いていた。これは事実だ。本来なら婚約を破棄されても文句など言えない」
「まぁ、確かに」
「イアンの家族は俺を嫌っているだろう。あれが普通の家族の感情だ」
「それは分かるよ」
「外堀を埋めるのが最善だ」
(やっぱり腹黒いなぁコイツ)
うぅむ、と唸ってそれでもとイアンは口を開く。
「でもさ、陛下と王妃様を騙すのは心情的にちょっと……」
「欺くは身内から、だ」
「でも」
「話はここまでだ。待てない」
「アル……ぅ」
開き切った瞳孔に欲望の火が点いていて少し体が震えた。
それは怯えでもあり期待でもある。アルフレートの掌が体を滑る度、快楽を仕込まれたイアンの体はピクリピクリと見っとも無く震えた。
「ふ……っん、は、ふ」
「イアン、可愛い」
「ん、んぅ」
アルはカッコイイよ、と言いたくてもくっ付いて離れない唇のせいで言葉を発する事が出来ない。とろりと目を蕩けさせたイアンは、ふふ、と小さく笑って両腕をアルフレートの首に回した。
「好きにして」
唇が一瞬だけ離れた隙に呟くと、アルフレートが手早くバスローブを剥ぎ取り自身の選んだ下着を見て笑う。その狂気の混じったような笑顔に恐ろしさよりも興奮を覚えた事で、イアンはこれはもう自分はダメだなと思いながらも誘う様に腰を振った。甘く溺れるこの快楽と幸福から抜け出したくない。
(なんでかなぁ……アルのこの顔、すっごい好きだ)
イアンは自身の姿を見て独占欲を焦がす危なげな男に、何とも言えない高揚感を隠すことなく微笑んだ。
「俺も。けど待て」
「なんでだ」
「いいから、ちょっと話そう」
両手を広げたままムッとしているアルフレートに笑って、アルフレートのベッドの上に飛び乗り胡坐を掻く。初めて入った恋人の部屋に目をキラキラさせている場合ではなかった。食事の後はあれよあれよと王宮の使用人たちに体を磨かれ、当然の様にアルフレートの部屋に押し込められた。身に着けているバスローブの下には絶対にアルフレート希望であろうスケベな下着を身に着けている。ちなみにニールは王宮の侍従長に引き摺られるようにしてイアンの傍から離されていった。
こんなスケベな下着を全く見慣れない使用人に着替えさせられる此方の身にもなって欲しい。羞恥心で死にそうになったし文句も言いたかったがそれどころではない。
渋々イアンの前に同じように胡坐を掻いて座ったアルフレートにイアンは問いかけた。
「陛下と王妃様、なんで本当の事知らないわけ?呪い解けたのって偶々じゃん?ラブロマンスは作り話じゃん?どういうこと?」
「……その方が都合が良い」
「でも国のトップを騙しているのは胃が痛いんだけど」
「全くの嘘でもない」
「そうだけどさ……なんなら、呪い解けたのアルフレートのお陰みたいなとこあるじゃん。功績を横取りしてるみたいで嫌なんだけど」
「何故。その功績とやらで今やイアン、とその他婚約者達の好感度は他の追随を許さない程になってる」
「うん、有り難いね。でもさ、実際に頑張ったのって神子だし。みんなが目が覚める切欠になったのもアルフレートからじゃん。俺達婚約者がやったことと言えば冷たい態度をとったくらいだし。なんなら強制力が働いている間、離れようとした薄情者とも言えるわけ。なのにこう持て囃されるとさ」
「真面目だな。得するだけなんだから問題ない」
「いや、それがね。それが申し訳ないっていうか。何か周りが物凄い盛り上がってるけど、俺達何もしてないのにって心臓が痛くなる気持ち分かる?今全員そんな感じで毎日崇め称えられることに胃が痛むわけよ」
「大丈夫だ。俺が守る」
「うーん相変わらず偶に通じねぇな」
そうなのだ、ある程度時間が経てば噂など小さくなっていくかと思われていたのに、一か月経っても噂は小さくなるどころか大きくなっていく。
最近とにかく周りがヒートアップしすぎて悪役予定だった婚約者達はそれはそれは毎日胃が痛いのである。全員学園にいる間死んだような目をして毎日賞賛の声を聞いている。そう言った話はどんどん日に日に大きくなっていっており、今や悪役令息達は愛の天使と称されている。恥ずかしいしダサいし事実と異なり過ぎて辛い。
イアンはアルフレートの呪いを解く最中に邪教徒に襲われ三回は死にかけた事になっているし、ドミニクはその美しい姿から生贄にされそうになっているし、マシューは潜入捜査をしては何度も襲われそうになっていて、バロンはその血筋から邪教復活の資金の為牢に入れられ衰弱、身代金要求をされかけた設定になっている。
ベージルは暴行を受けて骨が折られた事になっているし、コリンは毒を飲まされ生死を彷徨った事になっている。もちろん全体的になんとか騎士団に助けられている。
いや、皆学園に来てたじゃん休みなく、と言いたいのに言えないのが辛いとイアンは嘆く。最近では専ら、もしかして俺達影がすごく薄かったのか?と全員で困惑している状態であった。
どんな状況になればそこまで話が大きくなるのか不明だが、何かしら皆その身に命の危機があった事になっているのだ。どうせならもっと神子に焦点を当てて欲しい。
神子のローズリーだってそれはもう英雄扱いではある。だが影が薄い。婚約者達の話が大きくなり過ぎたせいである。本人はこれ以上目立つと面倒だから丁度いいと飄々としているが、イアン達からすれば本物の英雄を知っているのに誉れを横取りしたようで落ち着かない。
ちなみに他の婚約者達は本当の事情は知らないが、神子が何かとんでもない苦労をしていただろう事は察知している。みな頭の回転が速いし察しが良いのだ。イアンの取り繕えない態度から感づいたとも言える。
「イアンと俺の為だ」
「アルの?」
「そうだ。俺は呪われていたとは言え他の者を抱いていた。これは事実だ。本来なら婚約を破棄されても文句など言えない」
「まぁ、確かに」
「イアンの家族は俺を嫌っているだろう。あれが普通の家族の感情だ」
「それは分かるよ」
「外堀を埋めるのが最善だ」
(やっぱり腹黒いなぁコイツ)
うぅむ、と唸ってそれでもとイアンは口を開く。
「でもさ、陛下と王妃様を騙すのは心情的にちょっと……」
「欺くは身内から、だ」
「でも」
「話はここまでだ。待てない」
「アル……ぅ」
開き切った瞳孔に欲望の火が点いていて少し体が震えた。
それは怯えでもあり期待でもある。アルフレートの掌が体を滑る度、快楽を仕込まれたイアンの体はピクリピクリと見っとも無く震えた。
「ふ……っん、は、ふ」
「イアン、可愛い」
「ん、んぅ」
アルはカッコイイよ、と言いたくてもくっ付いて離れない唇のせいで言葉を発する事が出来ない。とろりと目を蕩けさせたイアンは、ふふ、と小さく笑って両腕をアルフレートの首に回した。
「好きにして」
唇が一瞬だけ離れた隙に呟くと、アルフレートが手早くバスローブを剥ぎ取り自身の選んだ下着を見て笑う。その狂気の混じったような笑顔に恐ろしさよりも興奮を覚えた事で、イアンはこれはもう自分はダメだなと思いながらも誘う様に腰を振った。甘く溺れるこの快楽と幸福から抜け出したくない。
(なんでかなぁ……アルのこの顔、すっごい好きだ)
イアンは自身の姿を見て独占欲を焦がす危なげな男に、何とも言えない高揚感を隠すことなく微笑んだ。
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