届かない恋に手を伸ばす君は

まこと

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改札前、バスの待ち時間

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「え?またなの?」
呆れたように笑う女の子が、俺のとなりに一人。
彼女の名前はなづき。
俺がよく恋愛相談をする、頼れる友人である。
「まただよ…」
と項垂れながら俺は言う。
なにがまたなのかと言うと、
「今回はなんでブロックされたの?」
俺の恋人であるりょーこに、ラインをブロックされたのだ。
「たぶん、だけど、テストの点が下がったから母親にやられたんだと思う」
また、や今回は、などでだいたい察しはつくだろうが、実は何度もブロックされている。
理由は様々だが、全て母親がしているらしい。
しばらくすれば戻ってくるのだが、やはり何度経験したって辛いものは辛い。
慣れるなんてことは全然ないのだ。
「はぁー…しんどいな…」
「どのくらいで戻ってくるのかわからないの?」
「26日にテストがあるって言ってたから、たぶんその後かな」
「あー、じゃあまだだね」
「うん…」
ところで、なぜなづきと俺が一緒にいるのか、そもそもどこにいるのかを説明していなかった。
時は昨夜に遡る。

時刻は夜8時を少し過ぎたぐらい。
俺は、晩飯を食べ終え風呂にも入り、後は寝るだけの状態でなづきとラインをしていた。
「しんどい」
このときには既に、りょーこにブロックされていた。
「まだ返信来てないの?」
2分ほど経ってなづきから返信が来る。
「来てないの。気になって夜も寝れないよ」
「まだ寝るには早いけどね笑。明日暇?」
まだってなんだ。
寝る時間を決めるのは俺だろう。
などと思いながら、スマートフォンのディスプレイをなぞる。
「暇だよ。なに?気晴らしに付き合ってくれるの?」
送信。
「付き合ってあげるよ笑」
やはり返信は2分経ってから。
なづきの中でなにかルールがあるのだろうか。
「惚れちまうぜ。どこ行きます?」
スマホに充電器を差し込みながら送信。
明日出掛けるなら、充電はしっかりしておかなければ。
「惚れていいよ笑。映画観に行きたい」
そういえば観たい映画があるって言っていたな。
「ロマンス劇場?」
「うん。いいの?2回目になっちゃうでしょ?」
そう、俺はそのロマンス劇場という映画を一度観ている。
観に行ったのだ。
りょーこと一緒に。
「いいよ。面白かったし、もう一回ぐらい観ても」

ということで、なづきと映画を観に行くことになったのだ。
今は、集合場所である県内で一番大きい駅にいる。
ここから映画館のあるショッピングモールまで、バスで行こうという考えだ。
「バス何時のに乗る?」
「まって、ちょっと調べる」
となづきが携帯を取り出した。
「10:30のバスがあるよ」
今の時間は9時過ぎ。
「あと1時間以上あるじゃん」
集合時間を決めたのはなづきだ。
俺はなづきを見る。
「そーだね」
事実確認以外の意味を持たない返事をする。
別に言い訳を求めていたわけではないが、理由くらいは聞いておきたい。
「集合早くない?」
「できるだけ長く、一緒にいたかったから」
「りょーこと同じこと言うなよ」
だいぶ動揺した。
が、顔には出さないように。
ばれないように、深呼吸した。
「りょーこちゃんかわいい。そーゆーつもりで言ったんじゃないけどね」
顔色を変えずなづきは言った。
動揺してないのかな。
「そーゆーこと普通に言うんだね」
「ドキドキした?」
笑うなづき。
こうゆうところをきっと俺は、好きになった。
「したよ。するでしょ、普通」
「普通はしちゃだめでしょ。恋人いるんだから」
お前のせいだ、と思ったが口にはしない。
「今はブロックされてるから、セーフじゃない?」
「セーフじゃないよ」
じゃあ軽々しくそーゆーことを言うなよ、と思ったがこれも口にはしなかった。
たぶん、俺を信用してるからこそ、結ばれないことを確信してるからこそ言えるのだろう。
そう思うとあまり強くは言えない。
「俺朝ごはん食べてないんだよね。食べた?」
座っていた改札前のベンチから腰を上げて、両腕を突き上げ欠伸を一つ。
「食べてないの?私は食べたよ」
「一応食べたんだけど、お腹減った」
朝ごはんになにを食べたのか思い出しながら、俺は歩き始めた。
「どこ行くの?」
なづきが横を歩きながら聞いてくる。
「そこのパン屋さん。あそこのフランスパンみたいなパンに野菜がはさんであるやつ、めっちゃ美味しいんだよ」
「へー、そーなんだ」
バスが来るまで、あと40分ぐらいかな。
食べているうちにすぐ過ぎてしまいそうだ。
話すことは、話したいことはいくらでもある。
「私服かわいいね」
「なにその今思い出したみたいな言い方」
笑いながらなづきが言う。
あぁ、やっぱりお前の笑顔は俺を魅了するな。
そんなことは絶対に、口にすることはできないけれど。
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