上 下
22 / 50

第22話:神の御加護 アモローサの場合

しおりを挟む
※間違っても、物を食べながら読まないでください!





 天使だと言われたアモローサは、どこにもいなかった。
 肌は青黒く変色し、ガサガサなのに変な汁が染み出してる。
 体はパンパンに浮腫んで……てか、これ、水死体じゃない?

 嫌われ者のお婆さんが行方不明になって、しばらく誰も気付かなくて、川岸に打ち上げられていた死体を発見したのが、学園から帰宅中の私だった。
 家に真っ直ぐ帰りたくなくて、ちょっと遠回りしたのよね。

 遠目から見ただけだったけど、パンパンに膨らんで青黒く見えた。



「きゃあぁぁぁ!」
「いやぁ!」
「気持ち悪い!」
 会場内からは悲鳴があがり、そこかしこで人の倒れる音がする。
 コッソリ盗み見ていた令嬢達が倒れたみたいね。

「え?何?何なの!?」
 アモローサはポケットから手鏡を取り出す。
 ドレスに手鏡用のポケットを必ず付けるのよね、アモローサは。
 どれだけ自分大好きなのよって話。

 それなのに、水死体。
 さぞかし驚く、ってか、倒れるよね?


「え?何とも無いじゃない!何なのよ!」
 はぁ!?
 アモローサは手鏡を持ち、右から左から、そして正面からも自分を確認している。
 それなのに、全然驚いていないなんて、おかしいわよね?

 神様に視線を向ける。
 どういう事なのか、説明を求めたい。

『あの者に相応しい見た目にしたのだが、本人だけは今まで通りに見えておるのだ』
 神様が楽しそうに言う。
『心が美しくなれば、周りからもそれに相応しい見た目に見えるようになるだろう』
 でも本人には今まで通りに見えてるなら、反省しなくない?

 ニヤリ。神様が口端を持ち上げる。
 あれ?もしや、考えてる事が筒抜け?
『自分で気付かなければ、意味が無かろう?』
 確かに、自分では可愛いつもりで今まで通りに過ごすだろう。
 しかし周りから見れば、動く水死体。

 可愛い私が頼んでいるんだもん、やってくれるよね?って態度のままのアモローサ。
 しかし周りは、水死体が何言ってんだってなるよね?
 しかも本人気付く間も無く、周りから人が居なくなるだろう。

 神様、意外とエゲツナイな。
 多分と言うか絶対、アモローサは改心しないな。



 アモローサのあの見た目は、高性能な幻覚みたいな物で、アモローサから離れると無くなるらしい。
 だから、あの汁もアモローサから離れると消えるので、家の中が汚染される事は無いらしい。

 ドレスも今までのが入るけど、着用するとあの汁が滲んできて、汚くなるとか。
 脱ぐと普通のドレス。
 メイドの仕事に負担は……ある。
 私に悪意を向けていた使用人達には、あの見た目通りのアモローサの世話をする事になるらしい。
 お風呂とか大変そうね。
 同情はしないけど。


 何で水死体なのかと思ったら、私の記憶の中で、1番醜く汚いものだったらしい。
 動物の腐乱死体と迷ったらしいけど、どっちもどっちだわよ!


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:18,097pt お気に入り:7,954

断罪された当て馬王子と愛したがり黒龍陛下の幸せな結婚

BL / 連載中 24h.ポイント:255pt お気に入り:1,706

ずっと、君しか好きじゃない

BL / 連載中 24h.ポイント:21,528pt お気に入り:656

フェロ紋なんてクソくらえ

BL / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:387

今の幸せを捨て新たな幸せを求めた先にあったもの

恋愛 / 完結 24h.ポイント:461pt お気に入り:6,053

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:11,963pt お気に入り:257

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:426pt お気に入り:4,396

悩む獣の恋乞い綺譚

BL / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:69

10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:553pt お気に入り:2,850

処理中です...