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 目覚めると、見覚えのある天井でした。
 いえ、記憶にあるよりも新しいような?
 目をシパシパと何度もまばたきしますが、見える光景は変わりません。
 ひたいに触れようと手を持ち上げ、そのまま固まりました。

 手が、小さい。

 まるで王太子との婚約が決まった10歳の頃のよう。
 急いで起き上がり、ドレッサーの鏡を見る。
 そこに映っていたのは、鮮やかな青い髪にブルートパーズのような瞳で、目はハッキリとした二重だけど少し吊り気味なのでキツい印象になるのが悩みの顔でした。
 ただし、幼い子供の。

 時間が戻っている?

 着替えもせず、慌ててリビングへと急ぐ。
 途中でまだ皆寝ているかもと思ったが、居なかったら寝室へ向かおうとそのまま駆けた。
 リビングへ行くと、同じように夜着を着たままの両親が居た。


「アンシェリー!」
 お父様が駆け寄って来て私を抱き締めます。
 お母様も幼いルパートを抱き締めてボロボロと泣いていました。
 まだ4歳のルパートは、母の腕の中でスヤスヤと眠っています。

「ご迷惑を……お掛けしてすみませんでした」
 私の涙声の台詞を聞いて、お父様の腕に更に力がこもる。
「お前は悪くない!全てはアイツが……あのクズが悪いのだ!」
 お父様の言葉に、同じように記憶があるのだと悟りました。


 落ち着いてから使用人に確認すると、既に王太子とは婚約した後のようでした。
 父が鬼のような形相で「破棄してくる」と言っておりますが、まだあのクズも子供で何もしていないのです。
 こちらの有責での婚約破棄になります。
 円満な解消も難しいでしょう。
 王家アイツらが自分達に何の恩恵もない事を承諾するとは思えません。
 前回の公爵家への対応からは、王も王妃も了承済みの茶番だったのでしょう。

「私が国を牛耳ります」
 家族の為だけに、私は王妃となる事を決めました。
 前回は陰からクズを支えました。
 私の案を嬉々として自分の手柄にしていたクズが、今回も優秀なわけがありません。
 私が居なければまつりごとが回らなくしてやりましょう。
 そして、王家アイツらは離宮にでも監禁してやります。

 今回の彼等はさぞかしでしょうね。

 長時間苦しみ、醜く死んでいく毒を探さないといけないですね。
 今回の彼等が悪人とは限らない?
 そんな事は思わないし、有り得ないですね。
 あの醜い性根は、魂にこびりついているはずですから。

 勿論、あの女も一緒ですよ。
 良かったですね、王太子様。
 今回も愛する人と添い遂げさせてあげますからね。


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