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12.
しおりを挟む急いで馬車まで行き、侯爵家へ向かいます。
エントランスで侯爵夫妻と挨拶を交わしていると、「王家の馬車がなぜか来ている」と焦った門番が報告へ来ました。
それとほぼ同時に開けられる扉。
「この家は、家の者に迎えも出さないのか!」
ふふふ。馬鹿丸出し、御苦労様。
「あら、王太子殿下、ご機嫌よう。サンドラ様なら公爵家の馬車で送ってこちらにおりますが?」
私の横でサンドラがカーテシーをします。
王太子は一瞬言葉に詰まりましたが、こちらを睨みつけてきます。
「ならばなぜ、フローラの迎えの馬車を寄越さない!」
この問いには、侯爵様が答えます。
「なぜ子爵家の者の送迎を、侯爵家が行わなければいけないのでしょうか?殿下」
「こちらに来られても困ります。既に縁は切れておりますし、子爵家へ送って差し上げてくださいませ」
夫人もにこやかにフローラを拒否しました。
不敬罪?いえいえ。連絡もせず突然押しかけた方がいけないのですよ。
「殿下、子爵家へ行かれれば解決いたしますわよ」
横領と上位の貴族へ対する不敬罪、間接的にではあるけれど公爵家へも迷惑を掛けた旨をしっかりと公文書として送るように手配しました。
前回は後手後手に回り、殿下の無理な要求をのまざるを得なかったのでしょう。
させません。
ですが、フローラを潰す事もしません。
彼女にはゴミの受け皿になってもらわなくてはいけませんので。
「そちらのフローラ?様でしたかしら?早く新しい制服をお買いにならないと。特別な制服が許されるのは伯爵家からでしたわよね?」
「特別な、制服?」
「殿下?まさか、そちらの方が侯爵家令嬢の制服を勝手に着ているのを気付いていらっしゃらないのですか?」
まあ!面白いくらいにフローラの顔が青白くなりましたわ。
既製品の制服とは明らかに違う光沢を放つ生地。
小柄なフローラでも膝上のスカート丈。正当な持ち主のサンドラが着たら足が丸出しになる丈です。
さすがに足りない頭でもおかしいと気付いたのでしょう。
フローラを見る王太子の目が困惑してます。
「あぁそうですわ、殿下。今からでは既製の制服でも子爵家で用意するのは多分難しいですわ。子爵家へ行く前に一緒にお店に行って差し上げたらいかがでしょう?」
フローラが言い訳する時間も、王太子が冷静に状況を判断する時間も与えずに、彼等を大通りにある制服を取り扱う店へと追い立てました。
これで1週間もすれば、王太子が子爵令嬢の為に、権力を使って制服を手に入れたと噂が流れるでしょう。
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