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しおりを挟む「今年の夏は、どこか涼しい所へ行きたいですわ」
夏の長期休暇までまだまだありますが、どこか遠くへ行き、のんびりしたいと思ってしまいます。
最近、王妃から王宮へ来るようにという呼び出しが増えてきました。
おそらくフローラの教育を私に押し付けるつもりなのでしょう。
理由を付けて、全て断っておりますわ。
本来なら不敬だと罰せられるかもしれませんが、今の私にはそのような心配は無いのです。
なぜならば、何があっても王太子の婚約者から私を外す事が出来ないからです。
他の方では絶対に、あの素晴らしい王太子を支える事など無理でしょう。
何も、本当に何も出来ないのですから。
王太子の本質は前回と変わっていません。
違うのは、私が陰から支えていたか、見える形で支えているかだけです。
恋は盲目とは、よく言ったものです。
自分の時間も、功績も、愛も、全て捧げていましたものね。
とにかく、休みの間くらい王族から離れてゆっくりしたいですわ。
「では、私と一緒に旅行しましょう」
独り言のつもりだったのに、思いの外大きな声が出ていたようです。
サンドラに返答されてしまいました。
「それなら、私の実家にもぜひ来てください。自然豊かで夏にはお勧めです」
長期休暇の時には、領地に里帰りするカレーリナです。
「その時はぜひ、隣の領地のうちにも来てください」
ネイサンまで乗り気になってますね。
「でしたら、最後はうちの領地に来て、私の誕生日パーティーに出席してください。生徒会役員としての出席なら、問題無いでしょう?」
タイラーの誕生日は夏なのですね。
私の夏の予定が決まったようです。
王妃からの呼び出しが鬱陶しいと愚痴ったのを、皆様覚えていてくれたのでしょう。
「あら?でもネイサンはそれほど長期に領地へ帰ってしまって大丈夫なの?」
ハロルドの調達する薬の交換をしなくては駄目なのでは?
「大丈夫です。最近は毎日飲むのが面倒になったらしく、娼館などで使われる強い物になりました。あれなら、1回飲んだら1ヶ月もちます」
まぁ!他人事ながら頭は大丈夫なのかと心配になります。
偽薬だから心配無いですが、不妊になるかもとは思わないのでしょうか?
「それほど強い薬を飲み続けてるのなら、妊娠できない体になっていたかもしれませんね。お薬の交換をしない方が良かったのでは?」
サンドラも私と同じ事に気付いたのでしょう。
心配の方向が違いますが。
「たとえ妊娠できない体になっていても、フローラは側妃になってしまいます。妾なら王太子の私費で養いますが、側妃は国家予算が使われます」
「確かにそれは勿体無いですね」
テイラーが楽しそうに笑いました。
「それにしても、娼館で使う薬を飲むほど励んでいるのですね」
呆れた声が出るのはしょうがないですわよね。
前回もそうだったのでしょうか?
そうだとしたら、フローラは強い体を持っていますわね。
あれだけ大々的に発表したのですから、懐妊が嘘だったとは思えません。
「すり替えた薬が媚薬ですから、そりゃあ盛り上がるでしょうね」
ネイサン。思った以上に腹黒でしたわ。
「強い薬になってからは、単なる栄養剤ですよ。1ヶ月も持続する媚薬なんて無いですからね」
とても良い笑顔で言われました。
前回は、ここまで強い薬は飲んでいませんでしたわね、多分。
応援ありがとうございます!
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