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45.フローラ視点

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 冷めた食事を急いで掻き込む。
 肉は脂が固まっているし、スープも冷めて分離している。
 デザートは温まって変にドロリとしているし、飲み物は水だけ。しかも革袋に入ってる。
 更に時間になると、食べてる途中だろうが水以外を全て片付けられてしまうのだ。

 初日、何も知らないからちゃんとした料理を持って来るように、ヤコブと二人で文句を言った。
 その間、メイドと騎士はずっと話を聞いていた。
 そして、料理を全て片付けて持って帰って行った。
 新しい料理を待っていたが、いつまで待っても届かなかった。

 次の食事が届いたが、やはり時間の経った料理だった。
 ヤコブがメイドを殴ろうとして、逆に騎士に殴り倒されていた。
 そしてヤコブが倒れていようがお構いなしで、時間になると料理が全て下げられた。
 ヤコブを介抱していた私も、一口も食べられなかった。
 これで2食抜いた事になる。
 次に届いた食事は、ヤコブは文句を言っていたが、私はすぐに食べ始めた。
 ヤコブは半分しか食べられなかったが、私は全て食べた。
 そして、時間が来たら、やはり全て片付けられた。


 お風呂は週に一度、お湯を浴槽に張ってくれた。
 体と髪は自分で洗う。
 髪を洗う石鹸と体を洗う石鹸が別だと、初めて知った。
 メイドは手伝ってはくれないが、聞けば教えてくれた。
 お風呂に入ってる間に、部屋の掃除をしてくれる。
 ヤコブはお湯に浸かるだけらしく、段々と臭くなっていった。

 寝室を分けた。
 今まで一緒に寝てたけど、臭いに耐えられなくなったから。
 そしたら、ヤコブも自分で体と頭を洗うようになった。
 また寝室を戻すように懇願されたので、戻した。
 ここでの娯楽は、閨事しかないからね。


 どれくらい経ったのだろう。
 何年も経つのに、なぜか子供はできなかった。
 暇さえあれば、ヤッてたのにね。
 そして食事が届かなくなった。
 テーブルの上に、いつの間にか水袋が置かれているだけになった。
 しかも1日分をまとめて置かれる。
 最初は気付かす、空腹を水で誤魔化したら、すぐになくなった。
 それから大事に飲むようにした。

 3日目だったか、4日目だったか。
 水の取り合いで喧嘩した。
 それでも、その時はまだ大丈夫だった。
 6日目。
 お風呂に入った後だった。
 自分の分の水は飲みきっていたヤコブが、私の水を奪おうとした。
 お風呂の日だってわかってたから、私は大切に飲んでたのに!

 叩かれた。叩き返した。
 最初は手のひらだったのに、ヤコブが拳で殴ってきた。
 意識が朦朧とする。
 もう水関係なく、殴られてる。
 床に水袋が落ちているのが見えた。


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