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乙女ゲーム本編突入です。
第15話:入学式で既にイベントが!?
しおりを挟む手入れのされていないフワンフワンの髪。
これ、ただ単に傷んでるからまとまりないだけで、巻いたわけじゃないよね?
席順もまったく知らない位の下位貴族?地方出身なのかな~?
そもそも高位貴族席に座れるような身分の人間なら、顔も名前も知っているし。
面倒だけど、ここは公爵家令嬢として注意しないわけにはいかない。
個人的には別に良いんだけどね。
王子の隣の席なんて、正直嫌だし。
でも貴族ってプライドが服着て歩いてるようなモンだからさ。
私だけの問題じゃなく、公爵家として舐められるわけにはいかない。
「どなたか、この方のお連れの方はいらっしゃらないの?常識を教えて差し上げないと」
周りを見回すが、誰も名乗り出ない。
マジか。
周りからコソリと「平民」とか「常識がない」とか聞こえてくる。
あぁ、なんか今年は平民で魔力が高い人が見つかって、入学して来るとか言ってたな。
「初めまして。エルクエール公爵家の長女、フォンティーヌと申します」
いくら平民でも貴族の階級くらいは知ってるでしょう。
席を立ったら、誰か係の者にでも案内させれば良いか。
いや、さすがに前世日本人の私でもドン引きデスヨ。
まさかの、高位の人間に対しての挨拶が椅子に座ったままでの歯を剥き出しで笑う笑顔ですか。
面接で一発アウトなヤツですね。
「チョコアです。よろしくね」
そんなふざけた挨拶をされた瞬間、アレですよ、アレ。
ここ何年かご無沙汰だったアレ。
**ピンポーン**
<イベントが一つ解放されました>
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主人公って、ゲーム中は姿が見えてないから、気付かなかった!
平民で魔力が高くて入学って、まさにそうじゃないか。
主人公目線だと高圧的に挨拶されてたけど、主人公は座ったままで見上げてたのか!!
そりゃ相手怒るわ。
とりあえず『甘王公式本』は取り出せないし、このどこぞのサプリと同じ名前の娘は退きそうもないし、誰か係の人を……。
目が合った。
あら、懐かしい事。
ニッコリ微笑むと、相手も気付いたらしく溜息と共にこちらに向かってくる。
ゆっくりと近付いて行き、ご挨拶。
「ビゼタール先生、お久しぶりですわね気付いていらしたのなら、早々にいらして下さらないと。
ワタクシ、無駄な挨拶をしてしまいましたわ」
さっさと動けや、ロリコン講師……とは、おくびにも出さない。
「フォンティーヌ様、またお美しくなられて、すぐには誰だか気付きませんでしたよ」
それが本心だとは思わないが、仮に私だと気付いてないにしても、動こうか?お前、関係者だろ?
そんなやりとりをしていたら、ザワリと会場内の空気が動いた。
何かと思って顔を向けると、バカ殿下が会場に入って来るところだった。
さすがにまずいと思ったのか、ビゼタールが私に黙礼をして席に向かう。
しかし残念な事に、間に合わなかったようである。自業自得?
お前、面白がって見てたもんな。
「君は?」
バカ殿下が王子の隣席に座るチョコアに笑顔で声を掛ける。
その笑顔は、私への嫌がらせを良くやった!的なヤツですかね?
貴族令嬢が絶対にしない、ポカーンと大口を開けた表情で『第一王子』を椅子に『座ったまま』見上げるチョコア。
うわぁ、ダメだろ~。
そこでやっと現場にたどり着いたビセタールがチョコアの腕を引き席を立たせる。
「彼女はチョコアと申しまして、今年唯一の平民の入学者でございます、殿下」
ドンッと音がしそうなほど強く彼女の背中を叩くビゼタールに、ちょっと驚いた。
あれ?『ビタール』って、もっと丁寧に主人公に接していなかったっけ?
立たせるのも腰に手を当てて、そっとエスコートするような感じだったような……ロリコンだけど、とても紳士なイメージ。
背中を叩かれたチョコアは、慌ててカーテシーモドキをする。
とてもとてもカーテシーとは呼べませんね、アレは。そりゃ足を引きながら頭を深く下げたら前につんのめるだろうな。
バレリーナ並みの身体能力があれば別だけど。
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