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乙女ゲーム本編突入です。

第66話:あと1年

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「動かなくて良いのであれば、光魔法の方が綺麗に撮れるのは知ってる?」
 サラが先生のようだ。
 そして、それはさすがに知っている。
 習った時に写真って事か~と思った記憶がある。
「それを頼まれたのよ。正直、私は光魔法はあまり得意ではないので、撮るのは苦手なのに……」
 すっごい大きな溜息。
 公爵令嬢がダメじゃね?

 余談だが、皆がよく見ているホログラムみたいな動画は、闇魔法で撮った物を、光魔法を入れた魔石で投影しているのだ。
 この石は、学園から1人1個支給されていて、『光の魔石』として認知されている。

 実は、皆投影の仕方は知っているが、撮影方法は知らされていない。
 諜報活動に支障が出るからだろう。
 動画も光魔法で撮影されていると思っている人も多いだろう。

 光魔法も闇魔法も、あまり持っている人がいない。
 そのせいか、学園から支給される光の魔石は、卒業時に返却が義務付けられている。
 高いからね!
 宮廷魔術師が1個1個魔力を入れてるんだよ!
 たまに魔物から取れる事とかもあるらしいけど、本当に稀である。

「今回の召喚術者は、王都にいるわ。さすがに距離が遠過ぎて、会話がせいぜいだったみたい」
 マジか!王都とここでは、かなり離れている。この距離で召喚術使うって、とんでもないレベルだよ?
 いや、この世界にはレベルって概念はないんだけどさ。
 会話だけでも、普通じゃないわ。
「誰だかは、言えない」
 えぇ~。義姉じゃないんでしょ?


「2人で何コソコソしてるの?」
 後ろから声を掛けられて、必要以上にビクリと身体が揺れてしまった。
 別にやましい事はないよ!
「コソコソなんてしてないわよ」
 サラがさらりと嘘をつく。
 私はコソコソしてないけど、サラは明らかに何かコソコソしてた。

「何?何か文句ある?」
 サラがフンッて感じで胸を張る。
 え?それは私に対する嫌味ですか?
 揉みますよ?
「凍らせたろか」
 両手を前に出して胸を掴む真似をすると、背中を向けられた。
「ちょ、やめてよ!胸が凍傷とか、誰に診て貰えば良いのよ!」
「う~ん。宮廷魔術師?」
 若い兄ちゃん達が多いから、きっと喜んで診てくれるよ!

「ビゼタール様も、元宮廷魔術師よ?」
 え?そうなの?
「フィオ?何、驚いた顔してんのよ。子供の頃、王妃教育受けたでしょう?」
 え~受けたけど、宮廷魔術師だなんて知らなかったよ。
 自慢の婚約者なのに、知らなくてすみませんでした。
 ジェラールの視線が冷たい。
「お詫びに、サラの胸が凍傷になったら、ビゼタール先生呼ぶからね!」
 何で2人して叩くのよ!!



 スタンガン現象は、風魔法で小さな竜巻を起こして、帯電していた水分をかき混ぜて放電させた。
 綺麗だったが、離れていても肌がピリピリしたし、皆の髪がコントの爆髪になった。
 そんな笑える姿を記念に撮影してもらった。
 ジェラール、便利だな。
 あ、間違った。光魔法便利だな。

 魔石に貰った画像を確認する。
 学園では絶対に見せない、馬鹿みたいな姿。
 山で遊ぶ気満々の為、仕立て屋に無理を言って作ってもらったお揃いのジャージを着て、頭が爆髪していて、扇で隠さず大口を開けて笑っている4人。
 これが高位貴族の令嬢とか、誰が信じるだろう。

 こんな馬鹿な事ができるのも、あと1年か。
 バカ殿下やヒロインチョコアの相手は、正直ウンザリだけど……。
 ちょっとだけ、卒業するのが寂しく感じた。


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