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乙女ゲーム本編突入です。
第65話:魔法
しおりを挟む今回来ているのは、避暑地というだけあり、山に近く涼しい土地。
フォンティーヌ家の避暑地とは、また違う雰囲気である。
うちが北海道とすると、カヌーレイ家は軽井沢みたいな感じ?
去年の夏の海とはまた違う趣がある。
そして今までとは決定的に違うのは、敷地内に何と魔法訓練所があります!余程強い魔法でなければ、破れない結界で囲まれているのです。
学園以外では思いっきり魔法を放つなんて普通はできませんからね!
ちょっとストレス解消しましょうか。
「怖っ!ちょ、やめ、怖っ!!」
訓練所の中に悲鳴にも似た声が響く。
罰ゲームかよ!
何でこんな事になったの!?
ちょっと状況整理しよう。
「もう!折角綺麗だから癒し要素で出したのに、何で溶かしちゃうかな」
雪の結晶を大きくした物を皆に見せようと訓練所に降らせた私。
「寒かったのよ!綺麗だったけどね」
寒さに負けて、室内の温度を上げたジェラール。
一瞬で雪の結晶が蒸発し、訓練所内に靄が掛かった。
「2人が魔法使ったから、私も何かやった方が良いかなぁと思って」
テヘッとでもいうように笑うミリフィール。
大気中の水分に、電気を通電させやがった。
パチパチしてるのが見える。
私が氷魔法でダイヤモンドダスト現象の大きい結晶を作って訓練所の中に撒き散らしたのを、ジェラールが炎魔法の応用で溶かし、出来た水分にミリフィールが雷魔法で電気を流した。
お陰で空気中に静電気というか、そこら中にスタンガンがあるみたいというか、とにかく動くと身体がビリビリするんだよ!
そんな阿鼻叫喚の中、サラが訓練所の隅で何やらボソボソ呟いていた。
耳を澄ますと、誰かと会話している。
「とれないわよ、自分でやんなさいよ」
取る?盗る?
「私は雷と水と光なのよ」
へぇ、そうなんだ。
「姿を映すほどの光魔法は無理よ。ジェラールの方がまだ上手いわよ」
へぇ、そうなんだ~。
「大丈夫?サラ」
盗み聞きするのも何なので声を掛けると、サラがゆっくりと振り返る。
ホラー映画の「み~た~な~」みたいな振り返り方はやめて欲しい。
怖いから。
「またお義姉様に無茶振りされてるの?どうせ兄も絡んでるんでしょ?
断って良いからね」
自他共に認めるシスコン夫婦は、何かとサラに頼み事をする。
主に義姉が。
だが今回は違ったらしい。
「今回は違うわよ。同じくらいごり押しされてるけどね」
サラがクルリと身体ごと振り返る。
その胸元には妖精が。
闇魔法の召喚術だろう。
でも義姉じゃないんだよね?
誰なんだろう。
「ありがとうね。もう帰って大丈夫よ」
手の中の妖精を放すように、サラが両腕を上へと大きく広げた。
ふわりと浮き上がり、光の玉になって飛んで行き、そのうち消えていった。
「今の妖精は?」
撮影できる子ではないんだよね。
「遠くと会話できるのよ。でも、会話の内容は録っておけないの」
へぇ、電話みたいなものかしら?
そんな妖精がいるなんて初めて聞いた。
「闇魔法で召喚できる妖精って、そんなに種類がいるの?」
素朴な疑問。
「王妃教育でやらなかった?」
うん。妖精召喚ができるのは聞いたけど、細かい内容は聞いてないかな。
「そう……姉がよく使うのは、状況を撮る妖精ね。本来、諜報活動とかで使う能力であって、義妹の成長記録の為に使ったりしないわよ?勿体ない」
面目ない……てか、私のせいじゃない。
「後は、会話の録音?長く取っておきたいものは、魔石に封じたりするわね。国家間の取り決めや、商人の取引とかに使われるわね。
決して義妹との初めての挨拶とか、歌を録っておくなんて使い方は普通しないわよ?」
なんだろう、いたたまれない。
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