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05:素敵なドレス

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「結婚の儀、このドレスで出てくれないかい?」
 従兄あにの従者が大きな箱を持って来ます。
 うちの侍女が受取り、箱を開けました。
「素敵なドレス……」
 侍女が思わずといった感じで呟きます。
 淡い藤色と水色、そして光の加減で七色に輝く布で作られたドレス。
 しかし、藤色ですか。
 私の色でも王太子の色でもありません。
 従兄の色でもないのですけどね。

「これは、お従兄にい様からのプレゼントではありませんね?」
 私の台詞に従兄あには、ニヤリと口の端を持ち上げます。
「俺からはこれな」
 今私が付けている物と同じグレードの、サファイアとタンザナイトの宝飾品。
「やはり『僕の可愛いお姫様』には、この位のグレードは必要だろ?」
 ドレスととても合うデザイン。
 不本意な結婚の儀の衣装に、そんなに気合入れなくても良いのに。

 結婚の儀の為に衣装を着替えます。
 勿論、頂いたドレスと宝飾を身に付けました。
 先程のドレスと似たようなデザインなのは、わざとなのでしょう。
 デザイナー達もグルだったのですね!
 似たようなデザインで同グレードの衣装なんて、本当の贅沢品ですわね。


 結婚の儀は、王太子と王太子妃は別の入り口から入場します。
 王太子は1人ですが、王太子妃は家族にエスコートされての入場です。
 私は父の予定だったのですが、急遽従兄あにに変更されました。
 本来なら有り得ない事な気もしますが、従兄は隣国の公爵家当主なので有り……なのでしょうか?
 自国の正装を身に付けた従兄は、私から見ても惚れ惚れとする美丈夫です。
 扉が開いた瞬間、拍手の前に溜息が聞こえたのは気のせいではないでしょう。
 既婚者ですけどね。


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