上 下
18 / 31

18a:アンダーソン子爵家

しおりを挟む
 


「子爵?アンダーソン、子爵だと?」
 フーリーが横のミアを今までとは違う視線で見る。
 一方ミアの方は、フーリーの変化には気付いていない。
「いきなり叩くなんて、酷いです!私は王太子妃になるんですよ!?」
 泣きながら文句を言っている為か、周りの様子には目が向いていない。

「アンダーソン子爵、いきなりではありません。公爵家に居た間も常に「私は兄では無い」と伝えていましたよね?」
 言われて、ミアは思い出した。
 ロバーツは「自分の妹はアメリアだけだ」と何度も言っていた事に。

「それに公爵家の庇護下から出たのに、さも公爵家の人間のように振る舞うのは詐称行為で、犯罪になりますよ」
「え?」
「私に叩かれた程度で済んで良かったですね。子爵が公爵家を詐称したら、極刑でもおかしくない罪ですからね」
 ロバーツの言葉に、王宮の護衛も頷いた。



 フーリーは、ようやく自分の行動の愚かさに気が付いた。
 婚約者である公爵家令嬢のアメリアをないがしろにし、子爵家令嬢だったミアと懇意にしていたのだ。
 自分はアンダーソン公爵家に見限られたのだと。

 舞台の上を見ると、王と側妃だけでなく、実の母である正妃もフーリーを見ていなかった。
 第二王子であるアルフィーとアメリアが寄り添い、前を向いて立っている。
 まるでここには誰も居ないかのように。
 今の彼等にとって、フーリーは路傍の石と同じなのだと。


「アメリア!アメリアは俺の婚約者だろう!」
 フーリーは思わず叫んでいた。
 名前を呼ばれたからか、アメリアがフーリーを見た。
 いつもと同じ優しい笑顔を浮かべて。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

限界集落で暮らす専業主婦のお仕事は『今も』あやかし退治なのです

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:2,186pt お気に入り:1

ある国の王の後悔

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,754pt お気に入り:102

本当はあなたを愛してました

m
恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,962pt お気に入り:218

異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,406pt お気に入り:2,229

いっぱいの豚汁

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:1,278pt お気に入り:0

ちーちゃんのランドセルには白黒のお肉がつまっていた。

ホラー / 完結 24h.ポイント:2,087pt お気に入り:15

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:12,873pt お気に入り:3,370

処理中です...