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30a:何も無い結婚

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 王宮で王太子の盛大な結婚式が行われている頃。
 ミアの元に、王家と神殿の認印の押された結婚証書が届いた。
 相手は勿論フーリーである。
 王命での結婚の場合、本人達のサインが無くても認められてしまうのだ。


「おい!はやく朝食にしろよ!」
 自室から出て来たフーリーがミアに命令する。
 屋敷には、通いで掃除婦だけが来ていた。
 それ以外の事は、メイド達が居た1ヶ月の間に、ミアが必死に教えてもらい覚えた。

 我儘放題で育ってきたフーリーは、我慢する事が出来ない。
 不満があると周りに当たり散らし、王宮から持って来た家具も、何個もゴミになり庭に放置されている。

 その暴力は、ミアへも向いた。
 フーリーは子爵邸に初めて来た日にミアを殴ってから、当たり前のようにミアを殴った。
 食事が不味い、風呂のお湯がぬるい、用意された服が気に食わない、色々な些細な理由でミアを殴った。


 朝食の席で、フーリーの横に立ち給仕する。
 それほど豪華な食事ではない。
 ワンプレートにスープに水だけだが、水が無くなった時にすぐに注がないと、「遅い!」と殴るのだ。
 公爵家からのメイドが居なくなってから、ミアとフーリーが食事を共にした事は無い。

 フーリーが食べ終わってから、ミアは食事をする。
 量が足りないと何度もおかわりされ、ミアの分が無くなる事もあった。


 掃除以外の全ての事をミアになっていた。
 フーリーは何もせず威張り散らし、あまつさえ暴力を振るう。
 もう限界だった。


「短い間でしたが、ありがとうございました」
 通いの掃除婦へミアは給金を渡した。
 掃除婦は痣の消えていないミアの頬を撫でる。
「大丈夫なのかい?バレてないかい?」

「私に興味が無いですから、大丈夫です。住込みの就職先を紹介してくれて、ありがとうございました」
 ミアはニッコリと笑った。


 その日、ミアはアンダーソン子爵邸を出て、伯爵家でメイドとして働き始めた。
 子爵邸へは二度と戻らなかった。



 終



_______________
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これにて終了です。

カクヨムまで読みに行ってくださった方、そちらもありがとうございました。

感想欄を開けますが、申し訳ありませんが返信は致しません。
しかし、全て読ませていただきます!!

また次作でお会い出来たら幸いです
(*^_^*)
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