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第六章 【二つの世界】

6-28 設定

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「……ねぇ。あんた、この世界が”偽”の世界だとしたら……どう思う?」



サヤはステイビルにそう問いかける。
ステイビルはその質問を聞き、考えることもなくすぐに答えた。



「そうであれば……どれ程良かったか。こんな世界が偽物ならば、どれだけ……」




そう言って、手にしていた枝を握りつぶして折ってしまった。
ハルナはその姿を見て動揺していたが、サヤは平気な顔をして手にした干し肉のスープをゆっくりとお腹の中に流していった。



「……しかし、なぜそのようなことを?」



ステイビルはふぅっと息を吐いて自分の感情を抑え込み、その意図を質問者に問いかけた。




「ん?なんとなくよ……それにあんたの顔がさ、アタシたちの知り合いに似てて……そいつはいい男なんだけどさ、アンタの顔はなんていうかシケた顔したんでね」


「その知り合いの方の評価を下げてしまって申し訳なかったかな……それに初めに質問をしていたのは私の方だった気がするが、それに対しては答えていただけるのかな?」



ステイビルの言葉には少し、怒りの感情が込められていた。
確かにサヤやハルナはステイビルのことを知っていても、相手からしてみればどんな相手かもわからない人物に気分の良くない言葉を掛けられれば面白くはないだろう。




「あぁ……そうだね。とある”人物”を探してるんだ、アタシたちの仇みたいなやつなんだけど……アタシたちはそいつを探しているんだ」




そうして、国を出てきたところ資金が底をつき始めた時、誰かの手伝いをしながらこの国まで来たと、たった今即興で作りった話を説明した。
ハルナはドキドキしながら、その話を聞き設定を合わせることができるように、ステイビル以上に必死でサヤの話に耳を傾けた。



「……行く先々で雇ってもらわないとダメだからね、普通の仕事なんか付けなかったわけよ」


「なるほど……それであの金貨を持っている理由がわかった。危ないことをしてあの報酬を手にしたのだな」


「まぁ、おおざっぱだけどそんなところね。この国の王子様が王選に負けて、王宮を追い出されたっていう話を耳にしてね……そんなわけでアンタを探してたのよ。ね?ハルナ、そうだよね」


「……手伝いをしながら……えっとなんだっけ?」


「ハルナ……あんた、アタシの話聞いてた?」


「必死に聞いてたわよ!?で、なに?アタシに何の用!?」





記憶が苦手なハルナにとって、今の設定を覚えるということは難しい仕事だった。
そのため、ハルナにはいま微塵の余裕もなかった。


余裕のないハルナをよそに、ステイビルは今の話で納得できたようだった。
その目的を果たすために、今回は旅を同行する――ステイビルは二人の身の上が判っただけで少し安心したようだった。

それだけの困難を乗り越えてきた二人なら、この旅の危険度は少しは楽になるだろう。
それに旅慣れた感じの理由がそういった理由であることから、今回二人だけに同行を依頼したのも間違いではないとステイビルは思った。



三人は、交代で眠りにつき朝日が昇る前にこの場所を出発することにした。







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