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第六章 【二つの世界】
6-27 もしも
しおりを挟む「ステイビル様……どうかご無事で。モイスティアでご無事をお祈りしております」
「うむ、ここまで世話になった。ブロードにもよろしく伝えてくれ」
「お二人とも……ステイビル様のこと、どうかよろしくお願いします」
「あぁ、安心しな。無事に目的地まで送り届けるから」
「わかりました……ソイさんも、ここまで色々とありがとうございました。お一人ですが、道中お気を付け下さいね」
ハルナがお礼を告げて、ソイが馬車に乗り込むのを見届ける。
ソイは御者台に座り、手綱を手に取りもう一度振り返る。
初めはステイビルの意見に反対し、供をしたいと言い続けたソイだった。
馬車の問題とここから先は森の中を隠れて移動するため、危険な場所が出てくるためソイは連れていくことができないとステイビルは言った。
ステイビルたちに時間がないため、ソイもようやく納得をしてくれた。
だが、差し出した金貨は受け取らなかった。
それに関しては、ステイビルがいなければまともに使えないとのことだったが、その気になれば換金は問題なく行われるためソイなりの受け取りを拒否する理由をつけたのだと悟った。
ゆっくりと馬車の車輪は回り始め、今来た道を戻っていった。
馬車との距離が声の届かない距離になったのを見届けて、ステイビルは分けてもらった荷物の入った袋を担いだ。
ハルナとサヤもステイビル程大きな袋ではないが、一緒に荷物の入った袋を背負った。
しかし、ステイビルはサヤの背中だけにもう一つの荷物があることを不思議に思いその中身を聞いてみた。
「あ、これ?……うん、気にしないで。うちに伝わるお守りみたいなものだからさ!」
薄汚れた布に巻かれた棒状の包みは、剣のような長さにも見えた。
しかし、気にしないでと言われた以上、ステイビルはそれに対して聞くことはなかった。
そうして、ステイビルたちは森の中を気を付けながら進んでいった。
時折遠くから物音が聞こえることがあったが、それは野生の動物がほとんどだった。
位置的にも街道から距離をとった場所を進んでいったため、誰かと出会うこともなく目的地に向かって進むことができた。
しかし、かなりの距離を迂回して進んでいるため、通常の日程よりも時間がかかることは仕方のないことだった。
ある晩、時間的には零時あたりを過ぎた頃……ステイビルたちは火をおこし、一夜を過ごすために食事などの用意をした。
少し腹が満たされた後、ステイビルはハルナたちになぜ自分に協力をしてくれているのかを改めて問いかけた。
その際に――ハルナたちはそれを受ける必要はないが――ステイビルはある条件を付けた。お金の問題ではなく、本当の理由を聞きたいと告げた。
ハルナはサヤの顔を見て、どう答えるべきかを探った。
もちろん嘘のことを言ってしまったとしても、ハルナたちには何の問題もないはずだった。
ハルナもサヤの出した言葉に、少し驚いてしまった。
「……ねぇ。あんた、この世界が偽の世界だとしたら……どう思う?」
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