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第六章 【二つの世界】
6-120 おかしい?
しおりを挟む「ねぇ……何かおかしいと思わない?」
「え?おかしい……ってなにが?」
「元いた世界に似ているけど、微妙に違うことが……ってとこよ」
「……?」
サヤの言葉に対し、ハルナは感じるものも思い当たるところもない。
その様子を見たサヤは起こることもなく、ハルナに自分が考えたことを告げる。
この世界は、あのオスロガルムを倒してから”変わってしまった”ということは、ハルナとも意見が一致している。
しかし、サヤの中では”本当に変わってしまったのか?”という考えが浮かんできた。
確かに、今まであってきた人物は変化が起きる前から知っている人物などであったが、関わりを持っていたハルナのことは覚えていなかった。
そのことから、サヤとハルナはこの世界が変わってしまったと思い込んでいた。
そこでサヤが考えたのは、”もし、初めから知らなかったのだとしたら?”ということだった。
「……それが、どうしたの!?結局、ステイビルさんもルーシーも……ラファエルさんやモイスさんだって私のこと覚えてないじゃない!!」
ハルナの声は、今までよりも大きめで力の入ったものになる。
きっとそこには、悲しみや悔しさなどが混ざっているのだろうとサヤは感じる。
見知らぬ世界にこの身を移し、孤独で不安のなかで色々と手を貸してくれた仲間たちだ。
その者たちが、ハルナのことを全く覚えていないことが最大の苦痛であることは、これまでのハルナの言動をからも判っていた。
だが、サヤの考えていることはそのことを解決することにはならない。
それでも、今の状況を変えていくために必要なことであると判断している。
「……だけどね、もしかしたらだけどね。アタシの考えが正しければ、アンタの……その悩みだって改善する可能性があるかもしれないんだ」
「……可能……性?」
「あぁ、そうだよ……って、なんなのよ!アンタのその顔は!?」
ハルナはネガティブなイメージしかなかったサヤから、”可能性”という前向きな言葉を聞いて驚いた表情をみせる。
それを指摘されたハルナは、笑顔で取り繕いいくら何でも少し失礼だったかと誤魔化しながら反省した。
「ったく!?……ま、いいけど。それより、さっきの話なんだけど。やっぱり少しおかしいって思うんだよね」
「おかしい?……なにが?」
「アンタのことは覚えてない人がほとんどだけど、少しずつ話が今までの世界と変わってたり、その歴史も違っていたりしてるよね?」
「ん?……うん」
「ラファエルが言ってた大いなる存在っていうのは、今までこの世界に来てからアンタは聞いたことある?」
「ない……かな?」
「でも、”盾”っていう存在は確認できたよね?だとしたら……”剣”の存在は?」
「……!?」
ハルナはサヤに指摘された事によって、まだぼんやりとしたものであるが頭に何かが浮かびあがった。
それと同時に布で包まれた、サヤの近くにある長いものへと視線をやる。
「そう……剣は確かにあの前の世界から変わらずここにあるのよ」
サヤはそういうと包みを前に出して立てて、その上端をトントンと手で叩いて見せる。
その物体の硬さは、まぎれもなくオスロガルムを倒したあの剣だった。
「……ってことは?」
「アタシはね、この世界は元いた世界とは別の世界じゃないかって思ってるんだ」
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