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第六章 【二つの世界】

6-175 見覚えのある者21

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「な……なんなのだ!何が起きている!?」



見えない壁に遮られ、隊長が放った槍は男に対し傷を負わせることはできなかった。
その状況を誰一人理解する者はおらず、ただエレーナの腕の中で小さな存在が泣き続ける声だけが聞こえていた。


「た、隊長!?」


そこに新しい若い兵が、厳しい表情で部屋の中に声をかける。
今この空間で何が起こっているのかわからない状況だが、そんな若い兵士の前で狼狽える姿など見せられるはずがない。

建物の外にも、数名の兵を配置していた。
それはアルベルトたちがここから逃げ出さないためと、周囲の警戒にあたらせる任務を与えていた。
二人はずっと目の前にいたため、外からの援軍がやってきたのだと隊長は推測しながら呼びかけられた兵に応える。





「どうした!一体、何事だ!?」







「は、はい!外に見たことのない大きな”鳥”が……」


「”鳥”だと?……それに貴様、鳥ごときに何を怯えている!」


そう言ってみたものの、隊長は鳥ごときでこんなに慌てるような訓練はしていないと思い直す。
であれば、この若い兵の想像想像を超えてしまうほどの大きな姿であるということが考えれられる。

「それで!?お前が見た鳥の大きさはどの程度のものなのだ!?」


「はっ!未だ遠方に存在しておりますが、その時点で普通の鳥の大きさではありませんでした!」



その報告を受け、隊長の中にある可能性が思い浮かび、その可能性を確認する。


「それはまさか……竜のような形をしていなかったか?」



「じ……自分は竜を見たことがありませんが、大きさはそのぐらいかと……それと」



「何!?まだほかに何かあるのか!?」


「は、はい!?その鳥は、二羽と確認しております!!」


「そ、それも同じ……大きさか?」


静かに確認を取る隊長に、若い兵もそれに合わせて静かに頷いて質問の内容が正しいと答えた。


隊長の背中には、汗が大量に流れ落ちていく。
その鳥の存在をモイスである可能性を見ていた、モイスはわざわざ王都まで来て宣戦布告をしていったのだから。
どこで知ったのか、ステイビルの仲間であるエレーナとアルベルトの危機を聞いて助けに来たのだろう。
しかも、自分と同格の仲間を引き連れて。



「お……お前たち!て、撤退だ!!急げ!!早くしろ!!」



隊長は急いでこの場から離れることを命令する、もしかして逃げる途中で何人かやられてしまうことも考えられるが、それは仕方のないことだろう。
とにかくここ近付いてくる二体の竜から、何とかして逃れることが最優先と考えた。


「いくぞ!あとに続け!!」


隊長は真っ先に部屋を出ていく、そしてその姿を見た者たちも隊長の後を追って部屋を出ていった。
見えない力で動けなかったが、それがいつの間にか解除されていることにも気付かないまま。

この部屋にはエレーナとアルベルト、そして自らの意思で残った二人の人物だけが残っていた。

腕の中の赤子は泣き疲れたのか、それとも静かになった部屋の雰囲気に落ち着いたのか。
いつの間にかエレーナの腕の中で、すやすやと眠ってしまっていた。






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