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第六章 【二つの世界】
6-205 違和感15
しおりを挟むカステオは、東の王国へ軽微な攻撃を仕掛けることを準備していた。
西側だけの戦力では問題があると考え、事前にディヴァイド山脈に住まう亜人たちで”人間を嫌う者”に協力を取り付けている。
そのくらい西側の”怒り”を示す必要があると、カステオは説明した。
万が一対立することになるならば、それなりの戦力も必要となってくるため、事前に人間以外のものたちへの協力を呼び掛けていたという。
そのことを知り、キャスメルは驚愕する……これまでの期間、そんなに長くはない。
だが、カステオはここまで先を読み、様々な事態に対応できるようにと考え、手を尽くしていたのだった。
それは自分にはないもの……ステイビルと同じような思考力をもつカステオにキャスメルは、嫉妬にも似た感情が沸き上がってくる。
だけどもキャスメルは今、そんなことを気にしている場合ではないと悟った。
今ここで大切なのは、カステオの作戦に協力するか否かだった。
「で、どうする?我々に協力してもらえるか?……キャスメル」
キャスメルの考えがまとまらないうちに、カステオは今話したことに対しての結果を求める。
どうやらカステオは、キャスメルに考える時間を与えてくれる様子はない。
キャスメルはカステオの問いに対し、承諾する意思を示した。
ニーナのあの姿を見れば何とかしてあげたいという気持ちと、ハルナのことを諦めきれない気持ちと、ステイビルに一泡吹かせたいという気持ちが、カステオの提案を承諾した理由だった。
キャスメルはカステオと組んで、ステイビルとニーナを一緒にさせるために協力することになった。
そうしてキャスメルは一度、カステオの部下と東の国へと戻り、キャスメルの派閥の協力者を集めていった。
そして、当初の目的である亜人の仲間を集めるため、キャスメルはグラキース山に入っていった。
「……そうか、ありがとう。また何か動きがあったら教えてくれ」
「畏まりました」
そう告げ、マイヤはステイビルの前から退室する。
「……キャスメルのやつ、何を考えているんだ?」
「わかりません。ですが、その動向には注意をしておくべきではないかと」
王の席の隣に立つアルベルトが、ステイビルの独り言に対して自分の意見を口にした。
普段では、王に対して無許可や聞かれていないことに対し意見を述べることなど許されるものではない。
だが、アルベルトは騎士団から特別な任務でステイビルの補佐役として付けられていた。
ステイビルとしては今後アルベルトに騎士団だけでなく、東の王国の兵全体の指揮をとって欲しいと願い、近くでその経験を積んでもらっていた。
「エレーナ。今のマイヤの報告をどのように見る?」
「わたくしも、アルベルトと同じ意見です。あのマイヤにでさえ、キャスメル様の行動の目的が見抜けなかったとなると、その背後に”何者”かがいる可能性も否定できません」
「……そうだな。その”線”もあるな」
ステイビルは、エレーナの言葉の意味がよく分かっていた。
エレーナはキャスメルが王宮を独りで抜け出た際に、キャスメルのことをよく見ていただろう。
ステイビルも幼いころから見てきたため、今回の行動がキャスメルの行動とは何か異なるところがあるとは感じ取っていた。
「ともかく。キャスメルの行動には、警戒していくことにしよう」
「「――畏まりました」」
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