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第六章 【二つの世界】

6-230 何かの間違い

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「そんなことが……」



ハルナの隣でエレーナの聞いていたマーホンは、グラキアラムで起きた話をエレーナから聞かされたあと、思わず感情が言葉になって口から漏れていた。
同じくハルナも、マーホンと同様の感情を抱いていた。さらには、今の自分のことを知っているエレーナがその場所で、そのことを話せずにいた苦労も感じ取っていた。
先ほどのハルナのステイビルに対して、軽い気持ちで行った質問も、エレーナの心情を考えれば軽率とも言える言葉だったと反省する。



「ごめんなさい……多分、私のせいなのよね……きっと」


「そ、そんなことないわよ!?ハルナだって、突然こんな状況になって辛いんだろうし……」



これまでのハルナが言ったことが本当のことではなく、”何かの間違い”だったらと思うこともこの短い期間で度々あった。
ハルナが本気でステイビルのことを愛していれば、この問題も少し楽になっていたのかもしれない。
少なくとも今のハルナには、ステイビルに対して全くそんな気がなかった。
あの質問も、ステイビルのことを心配して……いや、心配はしていたが、ステイビルが期待するところとは全く別な感情からきた質問だったのだろう。

……しかし、それ以上考えてしまうのはハルナを疑ってしまうことにもなるし、今考えても仕方のないことだと浮かぶたびにその考えを切り捨てる努力をしていた。


ハルナは自分のことを打ち明けてから、色々と悩んでくれているエレーナに申し訳なく思う気持ちが強くなる。
それに、自分にはそこまでの思い入れはないが、ニーナは身体を壊してしまうほど思い詰めていた。
そのことも、ハルナの気持ちを更に重くしいった。



「ニーナさん……ステイビルさんのこと……そこまで」


「ちょっと、ハルナ!?あなた、いま変なこと考えていないでしょうね!?」



ハルナの性格からして、こういう場合は自分の立場をニーナに譲ることを平気で考えているだろうと考えたその推測が間違っていないことは、ハルナの態度から見てとれた。




「え?やっぱり、わかる?」


「わかるわよ……そんなの。アンタとどのくらい一緒にいると思ってるのよ!?……あ!申し訳ございません!?私なんて言葉遣いを」


「いいのよ、エレーナ!?ここには昔の仲間しかいないんだから……それにエレーナやマーホンさんたちからそんな風に呼ばれると……なんかこう、背中がムズムズするのよ……」


「ですが、何度も申し上げておりますが、きっちりとして頂く癖を付けていただけませんと、貴族たちから甘く見られてしますのです。ですから……」


「あーごめんなさい、そうでしたね。マーホンさん……気を付けます」



ハルナの言葉に、マーホンは満足そうに頷いて見せる。



「だけど……このままじゃ、良くないわよね。ずっと、ステイビルさん騙しているみたいで」


「そうね……私も、そう思っていたのよ」



いまハルナが口にしたことは、エレーナがここ数日で感じている心の痛みの原因の一つでもあった。
ステイビルが今からハルナに伝えようとしていることは、結局その問題を解決しないと先に進まないことでもあった。



「それじゃ……いく?ステイビルさんのところへ」


「えぇ、行きましょうか」


ハルナとエレーナとマーホンは、ステイビルの部屋へと向かっていった。








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