1,026 / 1,278
第六章 【二つの世界】
6-253 成功
しおりを挟むその信じられない結果を、ラファエルは自分では解決できないと判断した。
そのことを自分の産み出した存在、創造者へと報告をする。
創造者はラファエルからの報告を見て、その存在の情報を調べた。
驚くことはしなかったが、その人間のデータは自分たちが創った他の人間と同じデータを持つところもあるが、能力的にこの世界では発生することのないデータも見られた。
以前、一度だけ同じようなデータをみたことがあり、そのことについてはラファエルやそこから派生した神々に対して監視するよう伝えていた。
そのことに興味を持った創造者は、自らこの人間のデータを採取したいと考えた。
尻込みしていた最後の精霊に自分のデータを組み込んだ。
そして一番最後にその精霊は飛び降り、ハルナとの接触を試みた。
飛び降りた精霊は自分以外には誰もいない……出遅れたことを少しだけ後悔しながら精霊はゆっくりと降りていく。
目標物がそこに降り立つようにと仕向けているのか、手のひらを上に向けて舞っているように見えた。
(よーし……!)
その精霊は、その手の上をめがけて降りようとする。
だが、自然風が時折その行動をじゃまをしていき、その度に向きを変えて目的地点へと修正していく。
最終的には、自分が思い通りの場所に着地することができた。
精霊はさっそく自分が行うべき行動を取ろうと、意気込んだその時。
(――うわぁああぁ!?)
天地がひっくり返るかの揺れは、目標物が手のひらを左右に揺らし始めたために精霊は左右に転がってしまった。その行動に精霊は、自分がすべき行動を取ることができないでいた。
数回転がされるとその行動は止まった……だが、なぜか気持ちが悪くなってしまい接続するチャネルを見つけ出せないでいた。
揺れが収まってから徐々に気持ちも回復したため、精霊は本来やるべきことを続行しようとする。
だが、この目標物は容易にそれをさせてくれなかった。
上から大きな何かを被せられ、精霊の周囲は真っ黒になってしまった……だが居心地は悪くない。
そのおかげもあってか、暗闇など精霊にとっては何の問題もないため、接続すべきチャネルを探した。
幸いにも、手のひらにも多数のチャネルが存在しており、精霊はその中の一つに自分が持つチャネルを接続した。
(えっと、今回はなんだっけ?吸い取るんだっけか?)
精霊は先生に言われたことを実行しようと、繋げたチャネルを解放し開いてのチャネルを引き出そうとした。
(――っ!?)
その途端、自分の存在が消滅してしまいそうなほどの元素が一気に流れ込んできた。
(もうだめだ……また次にお預けか……)
その精霊がこの契約は諦めようとした時、自身の中で起きている変化を感じた。
大量に流れ込んでくる元素は自然の流れのように制御され、そのエネルギーを使って勝手に自分の存在が組み替えられていくのを感じた。
「え!? なにこれ……!」
外からはそんな声が聞こえてくる。
そして、自分を覆っていたものが外されて、再び外気に含まれている元素が感じられ始めた。
昼寝が終ったような感覚が襲ってきて、精霊は背伸びをするが自分の身体に異変が起きたことそこで初めて気付いた。
精霊と言えば無形の存在だったが、人間や亜人と同じように手と足がついていた。それと同時に、自分以外の存在を常に感じられるようになっていた。
それによって、契約が成功したことを実感していた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
370
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる