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第六章 【二つの世界】

6-257 生きてた鳥

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「あの鳥……生きてた!?」




ハルナはいまだに両手を合わせたままの状態で、鳥が押さえつけられた羽を羽ばたかせようとする動きの感触がまだ手の中に残っている。
しかし、その実態はどういう仕掛けかはわからないが、すでにハルナの手の中から消えてしまっていた。



「こ……これは?」



『これで分かってもらえたかしら?私が”創造者”だということを……』




エレーナたちも、ハルナの行動の一部始終を見ていた。
だが、それでも実際に目の前で起きたことは信じ難いものであった。



「生き物を……創り出せる?そんな……まさか……」



エレーナは信じられない……信じたくもない気持ちでいま見たことを整理しようとしている。
それよりも先に、ステイビルは落ち着いた声で、創造者に対し言葉を掛ける。




「いま起きたように、この世界に存在する生き物たちが……あなたの思いによって消すことも生み出すこともできるということですか」



『そう……ね。その通りなのだけれど、私だってこの世界に愛着を持って接しているわ。だからこそ、この世界を消してしまいたくないのよ?』





その口調から読み取れるものは、然程この世界に対して強い熱意があるというわけではなさそうなだとステイビルは感じた。
それでも、これ以上何ができるかと考えれば、何もできないというくやしさだけが口の中に残った。




『少しずつ、頭の中が整理できてきたみたいね。もう一度説明するけど、この世界に限られた資源の量は決まっているの。いま二つに分かれた世界がそれぞれで資源を使っていくと資源はすぐに枯渇してしまうことになる。そうなったときに、どちらの世界に何が起きるかなんてことは私を含め、誰にも判らないの』





「確認なのですが……そのもう一つの世界というのは、ハルナが話してくれた……この世界と同じだがそれぞれに違うことが起こっているという世界のことを指しているのですか?」


『えぇ……その認識は間違っていないわ。ステイビル』


「であれば、もう一つの世界を消してしまうことが……この世界の崩壊を止めるという解決手段になるのですか?」



『えぇ……そういうことになるわね。本来もう一つの世界は、存在してはならないもの。それを正すことで、この世界が元通りに戻るのよ』



これまでの話を聞き、エレーナはハルナから聞いていた向こうの世界で気になっていたことを問いかけた。



「あの……もしも、そうなったら……もう一つの世界の”私たち”はどうなるのですか?」


『世界が消えるということは……そういうことよ?何もなくなってしまうわ』


「それは……向こうの世界で生きる……人たちや、新たに存在した者たちも……?」


『……例外はないわよ。それともこっちの世界を消してしまうことにする?』



創造者の言葉に、エレーナはそれ以上何も言えなくなってしまった。


もう一つの世界で生まれたという自分たちの子供や、もう一人の自分が消えてしまうと考えただけで、エレーナは選ぶことのできない選択を考えると、喉の奥から何かがこみ上げてきそうになる。


そんなエレーナを他所に、創造者は運命の選択をハルナに迫った。


『それで、あなたはどうするの?……ハルナ』






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