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第六章 【二つの世界】

6-376 二人の決意

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「お帰りなさいませ、サヤ様。お出迎えできず申し訳ありませんでした」

「あぁ、いいよ。それよりも、あんたも”無事”だったんだね……よかったよ」



無事という言葉に疑問を感じながらも、ヴァスティーユはサヤの言葉に対して笑顔で返した。

サヤはヴァスティーユの顔をちらりと見て、再び手にしていたカップに目をやり、お茶を口に含む。
一くち二くちと丁度良い温度のお茶を喉に通しカップを皿の上に置き、それをテーブルの上に置いてヴァスティーユに顔を向ける。




「それよりもアンタ……”ラヴィーネ”に行きたいんだって?」

「え!?どうして、そのことを……あ!あの子から聞いたのですね!もう、黙っておいてって言ったのに……」

「何で黙る必要があるのさ?アタシには知られたくなかったことなのかい?」

「い、いえ!?そんなことは決して!!!」

「なら……なんでアタシに黙ってようとしてたのさ?」



その質問に対し、ヴァスティーユの口は何かを告げようとするも、何かが引っ掛かってその言葉の先がどうしても続いてこなかった。



「あーはっきりしないヤツだね!!はっきり言え!!」

「は、はい!!」



後で黙ってみていたヴェスティーユが、そっとヴァスティーユの背中に手を当てる。
それを感じ取ったヴァスティーユは、意を決して自分の望みをサヤに伝えた。


「ラヴィーネではそろそろ精霊との契約が行われる時期なのです。ですから、あの……」

「ふーん、それを"見てみたい"ってこと?」



ヴァスティーユは静かに頷いて見せた。



「あ!で、でもですね……サヤ様もお忙しいでしょうし、き、きっと大したものでもないので……」

「ヴァスティーユ……アンタもしかして……”精霊使い”になりたいのか?」

「――!?」




隠していた思いを当てられて、ヴァスティーユは恥ずかしいとかサヤにお願いしたかったことが伝わったとか、様々な感情が心の中を乱しながらスカートを握りしめて答えた。




「……はい」

「そっか……なんで、そう思ったの?」

「そ……それは……」



その言葉以降を、ヴァスティーユは閉ざしてしまった。それには決して”ただの憧れ”というような、簡単な理由ではないことはヴァスティーユの態度からも感じ取れている。
サヤはそのことを察して、ヴァスティーユの本心を確かめることにした。



「ホントのこと言ってくれれば、アタシだって協力できるかもしれないのにねぇ。それとも、アタシのことが”信用できない”……か?」

「い、いえ。そういう訳では……」

「なら、教えてくれたっていいじゃない?まぁ、これ以上話したくないなら聞かないけどさ?」

「じ……実は、私も……」

「……ヴェスティーユ!?」



近くで二人のやり取りを聞いていたヴェスティーユは、ここが自分の人生の転機と捉えていまの想いをサヤに告げる決意をした。




「す、すみません。あの、”私たち”もサヤ様のお役に立ちたくて……で、でも!?わたくしは普通のメイドですし、運動神経も頭も良くないですし……でも、なにかサヤ様のお役に立ちたいと考えた結果で……私たちに優しくして頂いた恩をどうしてもお返ししたいのです!!」


「……そう。そうなんだ」



サヤは本当の理由を聞き、ため息を吐きながら深くソファーに身体を沈めた。
しかし、大した理由じゃなくてホッとしていた。



「ちょっと、どうなるかわからないけどさ。アタシも気になってきたよ、ラヴィーネっていう町がさ。視察に行こうと思うけど……アンタたち付いてくる?」

「は……はい!」

「ぜひお供させてください!!」





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