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第六章 【二つの世界】
6-392 一撃
しおりを挟む『……くぅっ!?』
盾の創造者は、サヤがゆっくりと進んでくる様子を見て今までに感じたのことない恐怖という感情を初めて認識する。
サヤとの距離は手を伸ばしてもわずかに届かない距離だが、今までに見たこともなく自分の考えを超えた結果を出してくる人間……得体のしれない存在が確実に迫ってきている……しかも、自分に対して敵意を持って。
敵意に関しては自分自身にも思い当たるところがあり、それについては何ら問題はない。
だが、何をしてくるかわからず、自分が発している攻撃に耐えられる存在が、ゆっくりと迫ってきていることに対して危険を感じていた。
剣の創造者が付いていたとしても、それだけがこの人間が自分の能力に耐えれれている理由とは考え辛い。実際に身体を支配しているハルナの身体を使っても、目の前の人間ほどの能力を再現することは自分にはできなかった。
そのような得体のしれない存在が、じわじわと自分のことを追い詰めてくる状況には、恐怖以外の感情が湧き出てこなかった。
「……っそが!!」
サヤの口は堅く閉ざされており、今までのような言葉を発することは出来ない。
ただ、もう少しで目標に手が届く位置に到達するため、特殊な能力関係なく全力で身体を動かすしかなかった。
サヤが二歩進むとき、盾の創造者が一歩後ろに下がる。
そうして二人の距離は縮まっていった。
そして……
――ポン
ついにサヤの手は、盾の創造者の肩に触れた。それと同時に、今までサヤが近づくことを拒んでいた威圧は消え、この辺りに再び森の心地よい音が戻ってきた。
「捕まえたよ……ったく、手間かけさせやがって」
そう言いながらも、サヤは肩の上に乗せた手を離さない。盾の創造者も、これから起こることに警戒しているのか、肩に乗せられた手を振り解くこともせずにサヤの顔から目を外せないでいた。
「アンタさぁ……これまでいろんなこと、よくやってくれたよね?まぁ、これだけやってきたってことは、自分も何かをされる”覚悟”はあってのことだよね?……まさか、あれだけのことをして自分だけは”何もされない”とか思ってはないよね?」
『……』
盾の創造者は、サヤの言っていることがすぐには理解できなかった。だが、じわじわと言葉の意味が思考の核に浸透し、それが恐怖の感情へと変わっていった。
肩を掴んでいるサヤの手にも、盾の創造者から怯えによる震えが伝わってくる。
サヤはもう一つの手を反対側の肩において、視線をそらさないように真正面からハルナの顔を覗き込む。
そして、冷たい視線のまま本体のハルナに対して、お詫びの言葉を掛けた。
「悪いね……ハルナ。もし、聞こえてるなら、歯を食いしばってなよ?」
『……!?』
盾の創造者には、サヤが何を言っているのか全く理解できないでいた。だが、もしこの言葉をハルナが聞いていたとしたら、これから起こることに対し、納得は出来ないでいたが理解はできていただろう。
そんな無防備な盾の創造者の頬とこめかみ付近を狙い、肩から手を離したサヤの手が拳となって打ち付けられた。
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