千年恋物語~何度生まれ変わっても、また君に恋をする~【R18】

白夜

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38話 初めての物語

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【陽向side】



遠い昔


一番始まりの、俺たちの最初の物語


全ては、ここから始まった。


それは、俺の好きな…大切な人が、雨を司っていて雨を降らせていた頃の話。



その雨を止ませて、空を晴れさせることが俺の使命だった。



思えば、その時から…俺とひーくんはふたりでひとつだったのかもしれない…。


俺たちふたりがいなければ、農作物が育つことも、生態系を維持することもできなかった。



正反対の性質を持つ俺たちが、惹かれ合うのは…


 ---運命。


決められていた事の様に思えた。


当たり前に好きになって…

当たり前に愛してしまった。


お互いの気持ちに気が付きながら、なかなか進めずにいた

そんな中…

まるで、大きなまん丸なお月様が背中を押してくれたかのように


ふたりは満月を見ながら距離を縮めた


満月を見ようと、ふたりで夜道を歩いた

大きな月が俺たちを照らして

君の姿がすごく綺麗で…


君に見惚れてた


すると、君は




『月が綺麗だね』

って、月より綺麗な横顔で言った


だから…思わず


『君と見ているから、綺麗なのかもね』

って、俺は言った



少し驚いたような君は、俺を見つめて


どちらかともなく唇を重ねた


自然にふたりの距離が近づいて、キスをするのが決められていた事のようだった



愛おしい人とのキス


俺たちの最初のキス

忘れることはない


君は覚えている?


どれだけ、俺が嬉しかったか…わかる?

幸せで、とても言葉には言い表せない


そんな俺とひーくんを菜の花が祝福してくれているみたいに、菜の花が月明りに照らされて

とても綺麗な光景だった


いつまでもひーくん【雨の君】と一緒に居たかった


それなのに…


幸せは長く続かなかった。


病に気が付いた時、俺たちは幸せの真ん中にいて


雨の君に触れる度に好きになっていた


君を抱く度に、濡れていく可愛い君を離したくない


強く想った


深く、愛してしまった事がまるでイケナイ事だったかのように、俺の病は進行していった



苦しいくらいにどんどん君を愛して


神様のイタズラなのか?それとも神様さえもヤキモチを妬くくらいの愛だったのか?


ふたりの時間は限られて


俺の命がもうすぐ消えるとわかった時


君は泣き叫び俺の手を握っていた



病で動く事すらできなくなった俺の手を握って


ただひたすら、俺の手を握って泣いていた君


  ごめん…もう、君とはお別れしなくてはいけないようだ…

君の涙が辛かった


笑顔が好きだったから

大きく口を開けて笑う君が好きだから


君の泣いている姿を見るのが辛かった…


君を愛しているから…


愛している人を泣かせてしまう自分を恨んだ



俺の手にすがり涙する君


君の涙で濡れていく自分の手が、少しずつ感覚をなくしていった


君を残して、先に逝ってしまう事を悔やんだ


どれだけ悔やんでも…


 ---どうすることもできない運命。


せめて…最後に、いつもみたいに笑う君が見たかった。



君の笑顔が好きだから…




『泣かないで…君は…笑って生きて。また、逢おう。…きっと、逢えるから…だから、君は…生きて。』

君に笑って生きて欲しかった。


だから、最後に残した言葉。


必ず、生まれ変わって君に逢いに行くと決めた。


考えてみれば、これが始まりだったのかもしれない。


君を忘れないと、魂に刻んだ。


そして、最初の物語に終止符を打った。



雨の君は泣き続け、雨を降らせ続けたそうだ。


流す涙がなくなって、信頼できる友に

『自分が亡くなったら、晴れの君と一緒に眠らせて欲しい』と、言っていたそうだ。


その言葉を残して、


自らの命を絶ったそうだ。



ふたりの亡骸は一緒に葬られた。


雨の君の願い通りに…。


しかし、ふたりが一緒に葬られたことによって

 ---雨と晴れが消えた。


雨が降らずに、晴れもせず…


ひたすら曇りの日ばかり



神の命令のより、亡骸が掘り起こされ…


ふたりはまた、離れ離れとなった。


こうして、ふたりの初めての物語は終わった。


想いを残したまま…。



そして、第2の人生が始まる。




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