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56話 恋物語
しおりを挟むふたりの記憶を何度も、刻んだ。
お互いの魂に…。
それから、ふたりは一緒の時間を過ごした。
一緒に歌って、踊って、食べて、笑って…時には喧嘩をしたり、涙したことも…。
大切なのは、ふたりがどれだけ強い絆で結ばれているかって事!
同じ時代を一緒に生きて、同じ時間を共有する
こんなに長い時間、同じ時代を一緒に生きたことは、今までなかった。
それくらい、幸せで満たされた人生だった。
月日はゆっくりと流れた
そして今、氷雨の命の炎が消えようとしていた。
しわしわになった手を握りあう、老人ふたり
『…ひーくん、ありがとう…』
涙ではなくて、穏やかな笑顔がそこにあった。
べっどにふたり横たわり、離れないように…忘れないように固く手を繋ぎ直す。
『…先に、逝くよ…。』
『…うん。大丈夫。…たくさんの同じ時間を過ごしたから…大丈夫。』
向かい合って、微笑み合うその瞳には、悲しさや虚しさ、孤独感は見えない。
そっと、唇を重ねて
瞳を閉じた氷雨。
氷雨の脳裏には、今までの事が全てフラッシュバックされていく
この人生で初めて陽向を見た日の事
苦しいくらいに恋に翻弄された日々
友達でもいい近くに居たいと気持ちを隠した日々
初めて繋がった日
全てを思い出した日
少しずつ増えていくしわの数を一緒に数えていける人生
そんなふたりだから
強い絆で結ばれている
ふたりの想いは、きっと、ずっと、同じ
……まん丸なお月様。
『月が…きれい…だ…ね…』
言葉は途切れ途切れに、呼吸が落ちていく
その表情は穏やかだ
最後にふっと微笑んで、静かにこの物語の幕を下ろした。
『…君と…見ているから…きれいなのかもね…。』
息を引き取った氷雨に、静かに言葉を届ける陽向
そこに、涙は無かった。
陽向は想う…
----大丈夫。また、見つけ出して見せるから!!
---いつまでも、君を愛してる。
ーーー何度、生まれ変わってもまた君に恋をする
それから、ほどなくして陽向もこの物語の幕を下ろした。
こうして、今までで一番長く一緒に過ごした、第7の物語は終わった。
まん丸なお月様を見ていた。
どれだけの時代が流れても、
たくさんの時間が過ぎても…
この、まん丸なお月様だけは変わらないっ。
塾の帰り道、制服で歩くいつもの歩道橋
見上げた月があんまり綺麗だから、思わず立ち止まった。
ぼーっと月を見上げていた。
すると、突然体に衝撃を受ける。
ドンっ!!
『…痛っ…』
『っ///すみませんっ!!月を見ながら、歩いていたら…すみませんっ///』
ひたすら、頭を下げて謝る制服姿の男の子
『いえっ!…こちらこそ…ぼーっと…月を見ていた……ので…す…みま…』
途中まで言いかけて…
その男の子が顔をあげた
視線が絡んで
直ぐに、君の姿が涙で霞んだ
そして、君の瞳からも大粒の涙がぽろぽろと零れた
男の子は懐かしい笑顔で
『…月が…綺麗ですね…』と、言った。
『君と見ているから、綺麗なのかもね』と、返すと
ぎゅっと抱きしめられて、俺も、君をぎゅっと抱きしめた。
---また、逢えた。
また始まるふたりの物語
次は、どんな恋の物語になるのだろう。
何度、生まれ変わっても変わらない。
やっぱり、君に恋をしてしまうのだから…。
終わり
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