137 / 425
第2章
今の僕が生きる理由
しおりを挟むオーレさんと別れてすぐ奴は現れた。
「おいおいおいおいおい!!!なぁ~に抵抗してくれちゃってるの!?それに糞精霊がさっきまでここにいたよなぁ~あ?ふっざけんなよぉ!!!」
姿を現した夢魔はでかい声で叫び頭を掻きむしる。
むちゃくちゃキレてる姿にドン引きな僕。
お願い。
引いてますって顔、伝わるようにしてるんだから気づいて。
なんて、少しばかりふざけた気持ちはすぐに吹き飛ぶ。
ついでに僕の体も吹き飛んでいる。
「ぐはっ!」
果てないと思っていた夢の世界で、見えない何かに体が打ち付けられた。
夢の中だというのに中々の衝撃で呼吸が苦しくなる。
こんな凄まじい衝撃を受けたというのに目覚めないと言うことは…夢の中でいくら衝撃を受けても夢からは出られないってことか。
後は現実での衝撃か、同時にってことになる。
否…もしかしたら夢魔からの攻撃は無効ってことも…
「も~ちょっとなんだよぉ…もうちょっとで俺の計画が上手く行くんだよぉ~お…邪魔されちゃあ~困るんだよぉ!!」
中々体制を立て直せない僕の前に瞬時に移動してきた夢魔が僕の前髪を掴み、僕の顔を上に向けさせる。
ミチミチと毛根が悲鳴を上げているし、何本かブチブチと抜けた音がした。
「お前には俺の力になってもらうぜぇ?とびきりの悪夢を見せてやる!」
ニヤリと笑った夢魔はそう言うといつの間にか出来ていた真っ黒な沼の中へ僕を投げ入れた。
トポン
水溜まりが波打つ音で意識が浮上する。
『どうして?どうして私が死ななければいけないの?お前は生きているのに…私はもっと旦那様と息子と一緒に居たかったのに…どうしてお前が生きて、私が死なないといけないの?』
恨みの籠った女性の声に目を開ければ、目の前には綺麗な女の人。
『お前何て産まなければよかった。』
しかし次の瞬間には二つの違う顔が重なった歪んだ顔となり、その人物が僕の首を絞めつける。
息苦しさに抵抗しようにも、小さな赤子の体の僕ではどうしようもなくてそのまま意識を失った。
トポン
また聞こえてきた音で目を覚ます。
『お前がいなければ彼女は生きていれたのに…どうしてお前はのうのうと生きて、彼女が死ななければいけなかったのだ。』
目の前には相変わらず綺麗なお顔をしたとーさまが居て、今まで聞いたことがないような低く嫌悪を含んだ声で僕をベットから持ち上げ、僕の体を窓の外へ放り投げた。
どうしようもできない僕はそのまま地面へ打ち付けられた。
トポン
『お前何か生まれなければかーさまは生きていたのに!!返せ!返せ!!』
小さい頃のにぃさまが泣き叫びながら僕のお腹をボコボコ叩く。
トポン
『こんないつ爆発するか分からない魔力を持つ人間は早いうちに始末しておいた方がいいかと。』
無表情なノヴァがそう言って放った魔法が僕の体を包んで、酷い激痛の後真っ白になった。
トポン
『魔力晶だ!魔力晶にしろ!人を傷つけることしかできないお前の唯一の有効活用方法だ!』
『お前の言葉は人を傷つける。』
お爺様の五月蠅い声と、低い男の人の声が重なって聞こえてきて、僕の体が指先からさらさらと砂のように落ちていく。
地に落ちた砂は一つに固まり、キラキラと輝く魔力晶となった。
トポン
『お前が生きていても不幸に思う人がいるだけで、お前が死んでも泣く人なんていないのに…どうしてお前はみっともなく生き続けているの?』
もう一人の僕が暗闇で膝を抱えて蹲りながらそんな言葉を僕に投げかけてくる。
何か言い返そうと思うのに口がパクパクと開閉するだけで、何も言い返せない。
それは彼に投げかけられた言葉が僕の心の片隅にあった思いだったから。
でもその思いは前世の僕の記憶の中にある感情で…前世の僕は生きている自分を見られるのが恥ずかしくて惨めに思っていた。
生きようと食事を口に運ぶ自分の姿を思い浮かべると吐き気と共に大きな嫌悪感を抱き、消えてなくなってしまいたいと思っていた。
でも
でもそれは前世の僕の思い。
ルナイス・アーバスノイヤーである今の僕は、疑いようもないほどにとーさまだけでなく沢山の人から大切にされていることを分かっている。
お話はできなかったけど…かーさまだって僕を大切に思ってくれていることを知っている。
そして僕はこれまで見せられてきた僕を詰る奴らが僕の大切な人達ではないこともはっきりと分かっている。
「…大切な人たちともっと一緒に居たいから生きてる。そう思わせてくれる人達を…何より僕を命を賭してこの世に産みおとしてくれたかーさまを冒涜するお前は…死んでしまえ。」
そう呟いて、目の前の自分とそっくりな姿をしているものを創造したアイアンメイデンに閉じ込めれば断末魔が響き渡った。
1,049
あなたにおすすめの小説
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
優しい庭師の見る夢は
エウラ
BL
植物好きの青年が不治の病を得て若くして亡くなり、気付けば異世界に転生していた。
かつて管理者が住んでいた森の奥の小さなロッジで15歳くらいの体で目覚めた樹希(いつき)は、前世の知識と森の精霊達の協力で森の木々や花の世話をしながら一人暮らしを満喫していくのだが・・・。
※主人公総受けではありません。
精霊達は単なる家族・友人・保護者的な位置づけです。お互いがそういう認識です。
基本的にほのぼのした話になると思います。
息抜きです。不定期更新。
※タグには入れてませんが、女性もいます。
魔法や魔法薬で同性同士でも子供が出来るというふんわり設定。
※10万字いっても終わらないので、一応、長編に切り替えます。
お付き合い下さいませ。
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」
ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。
竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。
そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。
それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。
その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた!
『ママ! 早く僕を産んでよ!』
「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」
お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない!
それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――!
これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。
設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。
王太子殿下のやりなおし
3333(トリささみ)
BL
ざまぁモノでよくある『婚約破棄をして落ちぶれる王太子』が断罪前に改心し、第三の道を歩むお話です。
とある時代のとある異世界。
そこに王太子と、その婚約者の公爵令嬢と、男爵令嬢がいた。
公爵令嬢は周囲から尊敬され愛される素晴らしい女性だが、王太子はたいそう愚かな男だった。
王太子は学園で男爵令嬢と知り合い、ふたりはどんどん関係を深めていき、やがては愛し合う仲になった。
そんなあるとき、男爵令嬢が自身が受けている公爵令嬢のイジメを、王太子に打ち明けた。
王太子は驚いて激怒し、学園の卒業パーティーで公爵令嬢を断罪し婚約破棄することを、男爵令嬢に約束する。
王太子は喜び、舞い上がっていた。
これで公爵令嬢との縁を断ち切って、彼女と結ばれる!
僕はやっと幸せを手に入れられるんだ!
「いいやその幸せ、間違いなく破綻するぞ。」
あの男が現れるまでは。
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。
【完結】双子の兄が主人公で、困る
* ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……!
本編、両親にごあいさつ編、完結しました!
おまけのお話を、時々更新しています。
本編以外はぜんぶ、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる