王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

文字の大きさ
352 / 425
第5章

チルに脳天気な人と思われていたっぽい事件

しおりを挟む

アイダオ国へ潜入していた者達から必要な情報を全て集められたアーナンダ国は先日王国騎士団をアイダオ国へ進軍させた。



ヒュー様もヒル侯爵様も王国騎士団隊長、副長として戦地へ行かれている間チルを僕達の家で預かることになり、侯爵夫人ローゼン様はご実家へロザリア様を連れて一時的に戻られている。

万が一に備えての避難である。


そしてヒル家にはヒル家の騎士達とアーバスノイヤー家の警備隊数名が家を守っている。
警備隊の中には今回コルダも混ざっていて、復帰後、本職に戻る前の慣らし運転として参加している。






「ルナイス様…父上と兄上は大丈夫でしょうか」

「大丈夫だよ。ヒル侯爵様のことはあんまり詳しくないけれど、ヒュー様はにぃ様の次に強いし、剣だけで言えばにぃ様よりも凄いお人だもの」


談話室でお茶とお菓子を口にしながら久しぶりのチルとの会話を楽しむ僕。

だけど、チルは最初こそ僕との久しぶりの再会を喜んでくれていたがすぐにしょんぼりした顔になって、戦地に居る父と兄の身が心配という気持ちでいっぱいになってしまったらしい。




お二人が強いことは近くで見て来たチルが一番分かっているだろうが、やはり今回は他国へ行っての戦いで、物理的に距離が遠すぎる上に、念の為とは言え家を離れなければならない事態に不安が隠せないのだろう。

本当は侯爵夫人達と共に行ければチルの不安も少しは和らいだのかもしれないが、次期侯爵を失うわけにはいかないから夫人達とは離れてノヴァの結界が張られたこの家が一番安全と判断されたのだ。







以前刺客に僕に張っている結界を壊されてからノヴァの結界の力が強くなったので、どれ程の手練れの矢が放たれようとも一瞬で破壊されることはない。

余程あの時のことが堪えたらしいノヴァがその後ラプラス様の所に行って時間停止空間で修行を重ねたので、結界に張り巡らせれている魔力の練度はえげつないことになっている。






面白がったパンが一度ノヴァの結界に突っ込んででっかいたんこぶ作ってたくらいにはえげつない。








「…ルナイス様は護られるばかりで辛くありませんか?」

ぐっと奥歯を噛み締めて、何かを決意した顔をしたチルがそんな質問を僕に投げかけてきた。

ぶっと茶を噴き出しそうになったのをぐっと堪えて、僕は瞬時に頭を働かせる。



チルは僕がアーバスノイヤー家のお仕事をしていることを知らないし、僕が魔導具をちまちま弄ったりドラゴンと戯れている姿しか見ていない。

きっと侯爵様も夫人もヒュー様も僕の仕事とかやってることについて詳しくお話はされていないと思う。



だからチルからすると僕は好きなことをしてのほほんと生きていて、周りの人達に護られている超能天気なご令息に見えているのだということに先程の質問で気が付いた。





これはヒュー様に聞かれたら絶対揶揄われる案件だ。



しかしチルにアーバスノイヤー家のお仕事のことを言うわけにはいかない。

僕の周りの親しい人は大方知っているけれどチルはまだ幼く、そういう部分にはなるべく触れさせたくないのが年上心なのだ。






しかしこのままチルに能天気馬鹿に思われているのはいただけない…






きっと先程の質問をした理由はチルはいつも有事の際に1番安全な所へ行き、家族と引き離されてしまうことが悲しいからだろう。

ヒル家の人間にしてはチルは体の線が細く、お世辞にも騎士向きとは言えない。

その代わりと言ってはなんだが…チルはヒル家では珍しく体よりも頭を働かせることに長けている。



ヒュー様なんかはそんなチルのことをヒル家の奇跡と言っているのだけど、チルはこの事を知らないのだろう。

だから代々屈強な騎士を輩出してきた家の子供でありながら護られる立場にいる自分を異質に感じているのだろう。




僕も小さい時は自分がとーさまやにぃ様と違ってよわよわなの実は凄く気にしてたもん。

だけど、後々僕は他者を何の躊躇もなく排除できる質の人間であり、騎士とは違った戦い方ができるということを知り今に至る。



「チル…大切な人を護る方法は剣を握る事だけじゃないんだよ」


「え?違うのですか?」


「例えば、ヒュー様が社交の場で嫌味を言われていたとしよう。その時は言葉がヒュー様を護る武器になる。例えば領地が災害にあった時、そういう時には知識が家族や領民を護る武器になる。分かるかな?」



「なるほど…僕兄上や父上のように剣を握って戦うことだけが大切な人達を護れる手段であると思ってました!そうじゃないのですね。今僕が学んでいることも誰かを護る武器になりえるのですね!」



目をキラキラさせて新しい世界が見えた!と言わんばかりに興奮しているチルにそうそうと頷きながらも、僕が12歳の時ってこんなちゃんとしてたっけ…と何だか切ない気持ちになっている僕。


何やら悟りを開いたらしいチルは僕は僕だけの武器を鍛えます!と宣言し、部屋に篭ってすごく勉強を頑張り始めてしまった。



これ…まぁ…勉強するのは悪いことじゃないしね…いいでしょう。







____________

今年もあと少しですね
ご愛読くださっている皆様には本当に感謝しかありません。
読んでくださる方がいるからここまで物語を紡ぐことができました。

今年中には無理でしたが、来年にはこの物語を完結させたいと思います!

年末年始は更新が不定期となるかと思いますが…今後ともよろしくお願いします!





しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

マリオネットが、糸を断つ時。

せんぷう
BL
 異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。  オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。  第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。  そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。 『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』  金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。 『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!  許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』  そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。  王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。 『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』 『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』 『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』  しかし、オレは彼に拾われた。  どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。  気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!  しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?  スラム出身、第十一王子の守護魔導師。  これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。 ※BL作品 恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。 .

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 2025.4.28 ムーンライトノベルに投稿しました。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった

近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。 それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。 初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 本編、両親にごあいさつ編、完結しました! おまけのお話を、時々更新しています。 本編以外はぜんぶ、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

優しい庭師の見る夢は

エウラ
BL
植物好きの青年が不治の病を得て若くして亡くなり、気付けば異世界に転生していた。 かつて管理者が住んでいた森の奥の小さなロッジで15歳くらいの体で目覚めた樹希(いつき)は、前世の知識と森の精霊達の協力で森の木々や花の世話をしながら一人暮らしを満喫していくのだが・・・。 ※主人公総受けではありません。 精霊達は単なる家族・友人・保護者的な位置づけです。お互いがそういう認識です。 基本的にほのぼのした話になると思います。 息抜きです。不定期更新。 ※タグには入れてませんが、女性もいます。 魔法や魔法薬で同性同士でも子供が出来るというふんわり設定。 ※10万字いっても終わらないので、一応、長編に切り替えます。 お付き合い下さいませ。

処理中です...