王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第5章

影を使えばお姫様も簡単に攫えます

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『じゃあ今から30分、僕からヒュー様を守り切ったらヒュー様がアイダオ国へ行かなくていいように国王へ進言します。でも僕がヒュー様を貴方から奪うことができたら大人しくヒュー様を解放してお留守番してください』


『ふん!なぜ吾輩がお主の提案を受け入れなければならん』



『勝つ自信もないのに自分も一緒に行けばヒュー様は傷一つつかないなんて言ってるのです?っは!』



『なにぃ?龍神の愛子であろうと吾輩を愚弄したこと後悔させてくれるわ!!』





僕の提案を拒否しようとしたレッドドラゴンを盛大に煽ってやれば、案の定乗って来てきてくれた。

レッドドラゴンは基本的に単純だからね。













「はい、僕の勝ち。」


『くそ!!』



30分も経たない内に僕はヒュー様を誘拐することに成功しました。拍手。

炎の壁も消えて、レッドドラゴンは悔しそうに尾を地面にバシンバシンと叩きつけていて、砂煙が舞うのを水魔法適合者の騎士達が必死に水で固めて舞うのを防いでいる。



「ふん!」


僕の影の中からヒュー様を出すため影に手を突っ込んで、手を掴まれた感覚の後上に引くのだけど自分より重い人や物って取り出す時にちょっと力入れないと駄目なんだよね。

影から出てきたヒュー様は何故か遠い目をしていて、僕の頭をパフパフしたかと思えばはぁーっとふっかい溜息を吐き出した。






「レッドドラゴン、敵地に行くんだ。多少の怪我は必ずするが死ぬような怪我をして国に帰ってくることは絶対にない。俺はそこまで弱くないという自負がある。お前が俺を守ってくれようとするように、俺にも同じように守りたいものがあるんだ。心配をしてくれるのは嬉しいが…どうか信じて待っていてくれないか」


僕から離れたヒュー様がレッドドラゴンの前に立ち、そう言う。

レッドドラゴンはじっとヒュー様を見て話を聞いていたが、納得した感じはない。



けれど先程のようにヒュー様を囲って暴れる様子もなく、彼は彼でヒュー様の気持ちを受け入れてやりたいがやはり心配が過ぎてしまうのだろう。




「貴方がヒュー様に着いて行ってしまうと更なる戦争の火種になるかもしれない。そうなればヒュー様は今より更に危険な戦地へと出向くことになるし、なんなら戦争の火種を作った人物として処刑されてしまう可能性だってあります。ホルス様はいつも僕を心配しながらも基本的には見守ってくれてます。どうしても一緒に行きたいのなら絶対ドラゴンの姿にならないと誓い人型で一緒に行けばいいですよ」



『ぐぬぬぬぬ!』




「おい、ルナイス」






ドラゴンは連れて行けないけど、人の姿であれば何も言われないわけだから人型が取れるというのなら一緒に行けばいいと思う。

それで足手まといになるのなら我儘を通した彼の自己責任なのだから放っておけばいいし。




ホルス様も心配が過ぎる時は偶に人型でこっそり僕の後を着いて来てる時あるんだよね。
気が付いてないふりをしているけれど、尊い過ぎて悶えそうになる。





「できないなら邪魔だから大人しくお留守番してろ」


『クソガキがぁぁああ!!』


僕の言葉に切れたレッドドラゴンが僕に向かって巨大な火の球を口から吐きだしてきた。


僕のすぐ近くに大切なヒュー様がいるというのに…やっぱり彼はまだまだ未熟なドラゴンさんだな。






ドォォオン!!!


ギュィィイイイイイイイ!!!



『貴様…我等の盟約を破ったな』


火の球を闇奈落で消滅させるつもりだったのだけれど、何時の間にか近くに現れたホルス様によって巨大な火の球は僕達に到達する前にホルス様の尾で跳ね返され、レッドドラゴンに当たった。

火に強いレッドドラゴンでもあの火の球は痛いようで、ドスドスと地団太を踏み暴れ抑えきれない砂煙が視界を悪くする。




そんなレッドドラゴンの首を容赦なくガブっと噛んだホルス様はそのまま空へと向かって飛び、首を引っ張られる痛みにレッドドラゴンはキュイキュイと幼子のような鳴き声を上げている。




『ルナイス。こやつは我等とのアーナンダ国の民を傷つけないという盟約を破った。連れていくが構わんな』


「んー…ヒュー様、あのドラゴンと二度と会えなくてもいいですか?」



僕はあのレッドドラゴンがホルス様との約束を破ったのだし、殺すわけじゃないのだからどうでもいいのだけど…あのドラゴンと一番相性の良かったヒュー様はそうではないのだろうっと声を掛けると、驚いた表情を見せた後にそれは困ると言った。





「俺にとっては戦友のような存在なんだ!今回のみ、許してやることはできないか!」


『…盟約を破った罰は受けさせねばならん…しかし、罰の内容は定められてはおらんからな…ではそこの小僧が戦地にいる間、我等でこやつの躾をしよう。それが盟約を破った愚かな馬鹿への罰だ。異論ないな』



「うん。それでいいと思いまーす!」



上空を飛ぶホルス様に向かって地上から叫ぶ僕達。

ヒュー様にホルス様の言葉は伝わっていないけれど、ホルス様の提案だとちゃんと罰も与えられるし、ヒュー様はこれで気兼ねなく戦地へ赴き帰って来れる。



レッドドラゴンを咥えて飛び去って行くホルス様に手を振って見送り、ヒュー様に先程ホルス様が決めた罰についてお話しする。






「…先程からホルス様はとおっしゃっているが…ホルス様の他にも?」


「ん?たぶんレッドドラゴンのボスさんじゃないかな?」



「ボス?」



「え?うん…あの、小さいけど素晴らしい筋肉をもったレッドドラゴンさんがボスさんだと思うよ。よく他の子達を叱ってるし」




群れにボスが居るのって当たり前でしょ?と首を傾げるとヒュー様は疲れた顔で息を吐き出し、僕の頭を片手でガシっと掴んだ。





「帰ってきたらその辺り、きちんと話してもらうぞ」


「へい」






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