僕と先生との物語

中学校

中学1年生【授業と初めての呼び出し】

それから少しずつ本格的に授業が始まっていった。

中学校では教科によって先生が代わる。
いろんな先生がいてた。
でも、吉岡先生みたいに初日から『体罰』を宣言する先生はいなかった。



初めの頃はみんな緊張もしていて、授業もチャイムでの着席を守り、勉強にも静かに前向きに取り組んでいた。
もちろん僕もその中の1人。

ただ、僕は多少いい加減なことをしても罰がないことに安心していった。
どんどんいい加減になった。

吉岡先生からの目がなくなり、完全に僕は羽目を外し始めた。

その場でいろんな先生が注意をしてきた。
でも、注意で終わる。
担任の高橋先生の耳にも入っていない。

これなら何をしても大丈夫。
もし怒られたら適当に「ごめん。」と言えば許される。
そんな感じだった。



この頃にはクラブもバスケ部に決めて、クラブの体験に行っていた。

クラブにもクラスにも友だちができ始めていた。

僕の友だちを市川君にも紹介した。
市川君の友だちも紹介してもらった。
いろんな人と関われて楽しくなっていた。



だから僕は授業中に勉強もせず、ノートも取らずに近くの人と喋り始めた。

もちろん先生は注意してくる。

じゃ、「ごめんなさい。」とその場で謝ればそれ以上なにもなかった。



そんなことが続いたある日、僕は放課後に担任の高橋先生に呼び出された。

ちょっとやりすぎたかなぁと思って、少し後悔した。

初めての呼び出し、怒られるんかな。
何か罰はあるんかな。

いろいろと考えながら、呼び出された職員室に向かい、僕は入口の扉をノックした。



高橋先生に職員室の中に入るように言われた。

言われた通り中に入ると、先生の隣にある椅子に座るよう勧められた。
僕は少しビクビクしながら、座った。

「何で呼ばれたかわかるか？」

「ちゃんと授業受けてないから。」

「最近、いろんな先生からげんきが授業に集中できてないって聞いてるけど、何かあったんか？」

「別に何もない。」

「それならちゃんと受けないとアカンやろ。小学校の吉岡先生からもげんきの事いろいろ聞いてる。」

ここで吉岡先生の名前が出て、ヤバイかなと思ったが僕は黙っていた。

「先生はげんきは中学生になってがんばってくれるやろうって思って信じてたんやけど、無理か？」

僕はどう反応して良いのかわからずに、黙っていた。

すると先生は「小学校の時みたいに悪い事したり、間違ったことしてたら罰を与えられないとわからんか？」と聞いた。

僕は「大丈夫できるから。」と必死になって伝えた。

「もし、できないなら先生もげんきに罰を与える方法を取るで。もう中学生や。それで良いのかしっかりと考えて行動しなさい。」

「わかった。」

「約束やからな。先生は学活とか英語の授業でしかなかなか見る機会ないけど、他の先生にも聞くし、他の先生からもそんな事あれば厳しく接して欲しいってお願いしとくからな。」



これは、できてなければ体罰があるって事。
警告だと思った。

「後、最近いい加減にしてて授業中のノートもちゃんと書いてないやろ。もうすぐ初めての定期テストもある。ノートも課題のワークも提出になるから、ちゃんとやってなかった所を誰かに見せてもらって写しときや。」

「うん。」

僕が答えると、「クラブに行っといで。」と言って解放してくれた。



クラブはバスケ部。
市川君も同じクラブに入ったので、遅れて行くと市川君が声をかけてくれた。

「げんき、遅かったやん。どうしたん？」

「高橋先生から呼び出されてた。」

「えっ？大丈夫？」

「今回は注意されただけ。でも、このままやったらちょっとヤバイ事になるかも。」

僕は市川君に高橋先生との話を伝えた。

「ちょっとやり過ぎたな。」

「吉岡先生から解放されて、浮かれてたわ。明日からとりあえずもうちょいちゃんとするわ。」

「俺も気をつけるわ。げんきがんばって。」



そう言って市川君から励まされた。