僕と先生との物語

げんき

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中学校

中学3年生【お酒⑦】

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その後、泣き崩れる僕を置いて先生は出て行った。

でも、すぐに帰ってきた。
手にはいつも通り薬と氷と濡れタオル。



「よくがんばった。辛かったやろ。うつ伏せで寝転んで。」と言って優しく僕に声をかけた。

僕は言われた通りうつ伏せで寝た。

先生はすぐに薬を塗ってくれた。



「痛い。そこ触らんといて。」

「今までで1番お尻青くなって、切れて血も出てる。ちゃんと薬塗ろう。」

「そんなんになるまで叩くから。」

「まだ余裕あるな。反省してるか?」と言いお尻をそのまま平手で叩かれた。

僕は油断していた事もあり、痛くて転がり回った。

「大袈裟やな。」と言いながらも、「早く冷やさないとどんどん腫れてくるから、早く冷やすで。寝転んで。」と言って冷やしてくれた。



冷やしている間、先生はいろいろ話してくれた。

「げんきの事、ホンマに心配やわ。先生がげんきと関われるのは後もう1年もないねんで。中学校卒業したら全部自分でしないとアカン。これからもいろいろと迷惑かけたり、間違ったりすると思う。本当はそんな事がない方がいい。でも、人やからみんな多かれ少なかれミスはする。そんな時どうするかが大事やねん。げんきなら大丈夫。先生はホンマに信じてるで。」

「先生一個だけ聞いていい?」

「何や?」

「何で僕の事『信じてる。』って言うん?今までも、今回も結局みんなに迷惑かけて、先生の事も裏切ってるやん。それやのに今も『信じてる。』って言ってくれたやん?何で?」

「正直先生も人やからな。こんなに毎回裏切られたら、ショックやった。でも、先生は本気でげんきならいつかわかってくれて変われるって思ってる。人やから間違う事もある。他の人に迷惑をかける事もある。そんな事は生きていたら多かれ少なかれ誰にでもあんねん。その頻度は人よりも多いかもしれん。でも、誰にでも優しくできて、お母さんの事も大切に想ってる。そんなげんきやから、先生はげんきなら変われるって本気で信じてる。」

「ありがとう。」

「改まって何やねん。」

「ずっと上辺だけで先生言ってると思ってた。毎回問題起こして怒られて、その度に『げんきなら大丈夫。信じてる。』って言われもそんな訳ないと思ってた。でも、今聞いてみて、先生がホンマに信じて言ってくれてるってわかって嬉しかった。

「そんな事思ってたんか?素直じゃないな。」

「だって…。毎回あれだけ怒られてるのに、そんな事言われても信憑性ないやん。」

「確かにそう感じてても不思議じゃないかもしれんな。でも、これだけはわかって欲しい。先生は本気でげんきならいつか変われるって思ってる。だから、自分にもっと自信持って、自分の事信じてやっていこう。大丈夫やから。」



先生はたくさん僕に言葉を伝えてくれた。

僕は本気で先生がそう思い言ってくれているとわかり、素直に嬉しかったし、やってみようと思った。



それからも僕はお尻を冷やし続けた。
高橋先生は職員室に、戻って東先生と金山先生に報告してくると言って出て行った。



次に戻ってきた時には東先生も金山先生も一緒だった。

うつ伏せで寝てお尻を冷やす僕を見て、東先生は聞いてきた。

「げんきいっぱい怒られて反省したか?」

「うん。」

「どうや。お尻見してみ。」

「金山先生もいてて、恥ずかしいから嫌や。やめて。」

そう答えたのに、東先生はお尻にかけてあるタオルと氷を取った。

「これはえげつないな。高橋先生、容赦ないな。」

「もう、ホンマに見やんといて。お願いやから。恥ずかしい。」

「これも罰のうちや。金山先生にも迷惑かけてるんやで。じっくりあんな事したらどうなるんか見てもらい。」

「金山先生にも迷惑かけてるのもわかってるし、反省もしてるから。ちゃんと謝るからもう許して。」

そう言うと再びタオルをかけてくれた。




「そろそろひやさんでも大丈夫やろ。ズボン履き。」と高橋先生は言った。

金山先生は一度部屋から出て行った。



ズボンを履くと擦れてめっちゃ痛かった。

その様子を高橋先生と東先生は見ていた。

「これは相当痛がってるな。当分何するのも困るやろうな。」と東先生が言った。

「その痛みを忘れた頃に問題起こすからね。定期的に何もなくてもお尻叩いて思い出させてあげた方がいいですかね?」と高橋先生は言った。

僕は「高橋先生『信じてる。』って言ってくれたのに。この状況見てそれを言えるってホンマ鬼やな。」と言った。

「信じてるよ。ただ、これで変われないなら痛みで覚えてもらうしかないかもしれんな。」と高橋先生は言った。



僕がズボンを履き終わると金山先生も入ってきた。
そして東先生は出て行った。

僕はその後、金山先生に謝った。

それからは金山先生と高橋先生と3人で今回の事、これからの事をたくさん話をした。

僕と一緒お酒を飲んだ坂本君と阪崎君にも高橋先生は、あの木の棒で罰を与えたと聞いた。

そして、1週間は別室で課題をして過ごすように言われた。

僕は遅刻しないようにちゃんと学校に行き、毎日真剣に課題をした。



そして、1週間後。

僕は他の2人と一緒に教室でまた授業を受ける事になった。

金山先生と高橋先生に連れられて久しぶりに教室に入った。

僕は改めてみんなに謝った。

市川君が「おかえり。」と迎え入れてくれた。



こうして、僕のお酒事件は幕を閉じた。



いつも以上に痛い思いもした。後悔もした。

でも、何よりも高橋先生が落ち込んだ事に驚いたし申し訳なかったって思った。
そんな時に助けてくれた市川君と東先生の存在にも支えられた。
結果的には高橋先生の想いも知れた。

今回の事はやっぱり自分が悪かったし、怒られて当然やと思う。
ただ、その中でたくさんの人の想いを知れて良かった。

これからの僕にとってこの事件は大きく変わるきっかけとなった。








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