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第37話 魂継の儀《こんけいのぎ》① 土光薙家会合

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 僕は寮にいた。 生き返ってから1ヶ月、死んでいるときの話を後から聞いた。 ただ無疫と戦った時、なぜ死んでるのに体が動いたのかはわからないが、確かにうっすらとは意識があった。


(僕が死んだ時、確かに昔あったあの時のことを思い出した......それに真神 人無、父さんの家系、真神家......まさか......)


 そう考えているとふいにドアが開いた。


「お前修行から帰ってたのかよ」


「ああ、霊力は回復したし、体も大丈夫だからね、それより逃げた囚人達は」


「まあ、何人かは捕まえたがまだいなくなってる奴もいるらしいな......今日は雅がいないな、いつもならベッタリくっついてるだろ、勝手に寮にまで入り込んで」


「うん、帰ってきてから雅は実家に帰ってるよ」


「実家......犬境家か」


「うん、もうすぐ新しい土光薙家の当主を決める話があるからね」


 僕が言うと、灰は眉を潜めて、


「で、お前はどうするんだ。 土光薙家から出るのか?」


 灰の問いに、少し間を置いて僕は、


「当主続投を目指すよ......どうしてもやりたいことがあるから」


「そうだ! それでいい! お前が土光薙家を変えるんだ! いや、そういや貴人はどうした、他の式神も青龍しかいないぞ」


「皆、よみさんの所にいるらしいよ、それより、僕も土光薙の家に帰るんだけど、付いてきてくれるかな」


「ああ、言われなくても付いてくぜ」


 そう灰は即答してくれた。
 


 
 それから僕達は土光薙家に向かった。 本家の家に招かれると、座敷には、本家、土光薙家の者と分家、六家の者達が正座している。 その中には雅も無表情で座っていた。 僕は奥の上座に座らされた。


「これより、土光薙家、当主の再選定の儀を行う」


 そう土光薙家の長老、墓守《はかもり》が話し始めた。


「前当主、土光薙 継器《つちみつち けいき》殿の死去に伴い急遽きゅうきょ、新たな仮の当主を神無殿にお願いした。 そして今、新たに当主を決めることとあいなった。 それでは候補を伝える」


「土光薙家から、花堕かだ殿、大蜘だいち殿、圧也あつや殿、塑有我そうが殿、真域まいき殿、塵《じん》殿、法城ほうき殿、かい殿、そして犬境家から、雅殿、羊石家からるい殿、牛砂家から、沙京さきょう殿、竜場家から、しろつち殿、戊《つちのえ》家、じょう殿、己《つちのと》家、岩塗いわと殿の15名......」


「待ってください、僕も参加します」


 僕がそう言うと、場がざわついた。


「神無殿が......」


 墓守が眉を潜めたが、


「僕は、磨術祭に優勝しました。 権利はあると思いますが」


 場から、......確かに......強さは申し分ないか......しかし術式を使えぬ......とひそひそ声が聞こえる。
 

 その時、


「私は神無殿には、参加の資格があると思います」


 沙京先輩がそう言った。


「何故か?」


「神無殿は、瑞獣、麒麟を身に宿しております。 家としてこれ程の戦力はありますか」


「......確かに、そう聞いておるが、賛成は他にもいようか」


「私も参加させるべきかと、酒呑童子や、鵺、咒縛監獄の件と目覚ましい活躍をみせていますしね」
 

 壘先輩も沙京先輩に賛同してくれた。


「私は反対です」


 雅が強い口調で言った。 何故かとの墓守の問いに、


「神無殿はあくまでも仮の当主、術も使えない上、一度家から出た身当主の資格があるとは思えません」


 そう表情を変えずに言った。


「おいおい、雅どうしちまったんだ......」


 灰は横で小さな声で聞く、


「わからないけど......」


 僕が困惑していると、


「俺は別にかまわん、むしろ変な遺恨を残すよりは参加させた方がよかろう」


 大きな体の大蜘がそう言う。


「大蜘殿がそうおっしゃるが、他の方はどうか」


 そう墓守が聞くと、


「かまわない」


「かまいませぬ」


「いいぜ」


「いいでしょう」


「いいよ」 


「かまわぬ」


「塑有我殿に、塵殿、真域殿、壊殿、圧也殿、花堕殿、法城殿も賛成と......過半数の賛成があるため参加を認める、候補者はこれで16名となった」


 墓守がそう言うと、場がざわついた。


「魂継の儀《こんけいのぎ》で決めればいいんじゃない」


 塵の提案に更に場がざわつく、


「魂継の儀だと!?」


「あれをやるのか......」


「50年となかったのに......」


「それに死人もでるかもわからぬ......」


 と皆が口々に言う。


「魂継の儀、それは無人島でのひとチーム五人でのトーナメントということですかな......しかしあれはあらゆる術、武器使用も可能な危険な武道会じゃが......」


 墓守の問いに、塵は、


「強い術士が当主には必要なんでしょう。 ならば戦うのが一番わかりやすい、どう皆」


「ああ、一番強い者達を率いれる者が上につくのが、一番術士が納得するだろうしな」


 大蜘がそう言うと、


「私は賛同できかねます! 武祭など......家の者達が倒れては土光薙の力が失われます! それでもよろしいか!」


 雅が反対を表明すると、周りの者達も、
 

「確かに......これ以上、家の力を落とすことは危険だな」 


「うむ......ただでさえ術士が少なくなっているのに......」


 そう皆賛同した。


「お前はどう思う、神無」


 壊に聞かれて、


「話し合いで当主を決めるのは不可能でしょう」


 そう僕は言った。


「後の不満や対立を無くすのは戦うのが一番だろう」


 冷たい目をした塑有我がそう言うと、真域や壊、他の者も同調する。


「ふむ......あいわかった。 賛同者多数ということですな。 それでは1ヶ月後、土光薙家の敷地である。魂源島《こんげんとう》にて、候補者全員参加の儀式、魂継の儀を行うということとあいなった。 皆も異論はないな」


 そうして、1ヶ月後、魂源島で魂継の儀が行われることとなった。

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