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第七十六話

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 最初、この世界は不毛の地だった。 その地に空から巨大な人の意思に感応する石が落ちてきたという。 

「それが魔石だ」

(隕石か......)

「それらは砕けこの世界に散らばる。 そしてこの地に魔力が放たれた。 その魔石をグランティ族が見つけ、それを用い栄華を極める。 他のものたちは豊かなグランティ族に虐げられ憎しみと邪な願望を抱いた。 いやグランティ族も同じだっただろうな......」

(マティスさんの話か)

「そして戦争が始まる。 魔石で強大な魔力を持ったグランティ族は他のものたちを圧倒していったが、そののち滅びへ向かった。 なぜだとおもう?」

「グランティ族の人口か」

「そう...... 彼らは閉鎖的で他者を受け入れない偏狭さがあった。 結果人口が減り衰退...... いくら力があろうとその力を使う者がいなければ意味はない」

「そして追いやられたのか」

「いいや、彼らとてなにもしなかったわけではない。 一族を保つために魔石を使った。 不死、不老、再生、寄生、霊体さまざまな魔力がうまれた。 ただ人の魔力は限度がある...... もとより魔力とは魔石がこの世界に放ったものだからな」

「だから、神剣を作った......」

「......そうだ、剣に意識をもたせ、所有者となるものに魔力を与えるそれが神剣。 そして彼らは作ったのだ、巨大な魔石から八本の剣をな」

「それが八極剣」

「......ああ、だが剣をもって他のものたちを倒して復権をはたした。 しかし八極剣ほどではないが、他の民も神剣を作りだし始めた」

(それが八極剣以外の神剣か......)

「そして再び力を得たグランティ族だったが、その剣の魅力に溺れ内乱が起こった。 誰もが欲望にまけ剣や魔石の所有を望んだのだ。 そして八極剣は一人のものとなる」

「そんなことをすれば......」

「ああそのとおり...... 一人でそんな力を扱えるわけがない。 そして一本また一本と外のものたちに奪われついには追いやられていく」

「それでグランティ族はあんな場所に......」

「ああ、そしてこの地と剣、魔石を巡り戦争が始まった。 神剣戦争だ。 そなたアドレティアのクリエスラであろう...... しっているか」

「......我が祖国が生まれたという戦争だ」

 クリエスラはドレンバルトに答えた。

「......そう、グランティ族を追いやったものたちはこの地と神剣を巡って争い。 その勝者がアドレティアの初代の王だった。 だが、すぐに滅んだ...... 黒き太陽の力でな」

「黒き太陽か...... 黒き太陽とはなんだ?」

「さあな...... あれは戦争などが起こると現れる災厄」

(こいつもしらないのか......)

「今までの話と神とどう繋がるの? 神などいないのよね。 八極剣を元の魔石にでも戻すつもり」

 エルティッタがいうと、ドレンバルトは笑う。

「くくっ...... そうだな。 八極剣も他の神剣も魔石より産み出された。 しかし意思に感応するだけの魔石がなぜ都合よく魔力を有するのかわかるか......」

 そういうと静かに笑みをうかべた。

「まさか......」

 全員が息をのんだ。

「......そうだ人間だ。 魔力の高い者を魔石と融合させ、剣を作り出した」

「それで神剣は意思と魔力をもつのか...... じゃあお前は何をしようとしている。 神剣にでもなるつもりか」

「......いいや、逆だ。 神剣は魔石に人間を取り込ませて作るが、私が魔石を取り込んで魔石の魔力を用いるのだ」

 そういうとおもむろに立ち上がり、司祭の服をひらいた。

「それは魔石!?」

 その胸には赤く光る魔石が二つあった。

「ああ、圧縮してこの大きさにした。 この上で更に八極剣を取り込めば、神のごとき力が手にはいる。 いや神そのものとなるのだ」

 そういうと老人の姿をしていたドレンバルトは、七本の剣をつかむ。 すると剣は光にかわり、ドレンバルトの中に消えた。 そして剣を取り込むにつれ、ドレンバルトの体はどんどん若返っていく。

「くっ! 八極剣が!」

「一本足りないがかまうまい。 あれはおかしな反応をしている...... 見つけられないからな...... 七本とこの二つの高純度の魔石で私は......」

 その瞬間、ドレンバルトの体から、二本の短剣が胸から飛び出した。 セファイラがドレンバルトを後ろからさしたのだった。

「がっ...... なんだと、セファイラ...... 貴様」

「もう十分ですよドレンバルトさま」

 そうドレンバルトに冷たい目を向けている。

「なんのつもりだ......」

「あなたには魔石の器になってもらいます。 そのためにこうやってしたがってきたのだから」

「ふざけ......」

 そういう前にその首は別の剣でその首を跳ねた。 首が地面を転がる。

「セファイラ...... なぜだ」

「まだ気づきませんか...... そんな体で生きてることに不思議におもわないんですか?」

「なに......」

(確かに首を跳ねられて、とっくに死んでいるはず...... それに血もでなかった......)

「あなたはもう死んでました。 その体は私がガイルクーダで動かし、この追憶剣バストゥーアで死んだときの記憶をけしたんですよ」

 そう首を跳ねた剣をふる。

「......なんだと...... 私が死んでいただと......」

「ええ、正確には私が殺しておいたんだすけどね」

「セファイラ! なせそんなことをする!」

 おれが叫ぶと、セファイラはうすく笑う。

「......ひとつは元法王としての名声、彼は失脚しましたが、信奉するものも多いし、資金や人脈もあった。 二つ目は索知剣を使えた。 三つ目は魔石融合の素体として魔力が高かった、ただそれだけです」

 そう事も無げに答えた。

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