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第三章
18.心優しくも強大な古代の神獣
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大きな影が、クリーム色のドレスを着た少女を見下ろす。
それは、クンクンと気を失っている彼女を調べるように嗅ぐと、ぐぐぐ、と少女と同じ人間のそれに姿を変えた。
衣装は、腰元のラインがはっきりと分かるようにドレスにも似ていたが古めかしく、腰より下はストンとしている。袖元などゆったりとした拵えは、神官のものにも似ていた。
浮世離れした空気を醸し出し、それは少女をじっと見つめた後、彼女を浮き上がらせた。
うつらうつら、舟をこぐ。
メイベルは眠気に揺られながら、風がそよぐ心地良さに身を委ねていた。
それは、ダンジョンに捨て置かれ実家からも勘当されてからの、初めての安らぎである。
「んんん……」
もぞもぞと身じろぎをして、うすらぼんやり目を開ける。
それから、窓の端に大きな影を認めると、メイベルはぐぐーっと伸びをして椅子から立ち上がった。
「おはようございます、魔王陛下」
質素な木の家から出て、目の前に降り立った大きな影に挨拶をする。
「おはよう。言われた種を取ってきた。住まいに不都合はないか」
男は無表情に近い表情でメイベルを見下ろした。
メイベルは首を振る。
「とんでもございません。ありがたく頂戴いたします」
メイベルが魔王と呼んだ男は、正体を燃え上がる赤をまとう黒竜で、人の姿になると黒髪赤目の見目麗しい青年になった。
その美貌ときたら、元婚約者をふくめ見飽きるほどの美男美女と会ってきたメイベルだが、国中を探してもほかに居ないと思うほどである。
しかし少しばかり、どこかで見たことがあるような気もしている。
「命をお救いくださるだけでなく、こうして衣食住を提供していただき誠に感謝しております」
初めて会ったとき、メイベルは魔力切れで倒れたあと、この竜に拾われていた。
青年の姿となった竜の髪は短く切り揃えられ、その表情はよく見えたが、表情自体はあまり動く竜ではなかった。
険しいわけでもなかったが憂いを帯びた眼差しだった。とくにメイベルを見るときは、それがはっきりしている。
目を覚ましたメイベルは、状況を飲み込むと、とうぜん、その黒竜に神君竜王であるかと、瞳を輝かせて訊ねた。
すると、彼は少なからず良い感情とは逆の様子で目を細めて、「ああ、そう呼ばれていたな……」と答えた。そして。
「僕のことは魔王とでも呼べ」
と言うので以後、魔王陛下と呼んでいる次第である。
「陛下、魔王陛下ね……」
竜がつぶやく。
「我が故国に残る、いにしえの呼び名にございます。わたくしは故郷を追われた身にありますが、その理由の一つに、わたくしに魔王の疑いがかかっていたようで、この状況で本物にお会いし、しかも助けていただいたとあれば。わたくしは不遜ながら親しみと、最大限の敬意を以って、そうお呼びしたいのです」
滔々と語られたかったわけではない魔王は、面倒臭さが勝ってか即答した。
「好きにしろ」
勝利。と言わんばかりに、メイベルはにっこり笑う。
「はい」
それは、クンクンと気を失っている彼女を調べるように嗅ぐと、ぐぐぐ、と少女と同じ人間のそれに姿を変えた。
衣装は、腰元のラインがはっきりと分かるようにドレスにも似ていたが古めかしく、腰より下はストンとしている。袖元などゆったりとした拵えは、神官のものにも似ていた。
浮世離れした空気を醸し出し、それは少女をじっと見つめた後、彼女を浮き上がらせた。
うつらうつら、舟をこぐ。
メイベルは眠気に揺られながら、風がそよぐ心地良さに身を委ねていた。
それは、ダンジョンに捨て置かれ実家からも勘当されてからの、初めての安らぎである。
「んんん……」
もぞもぞと身じろぎをして、うすらぼんやり目を開ける。
それから、窓の端に大きな影を認めると、メイベルはぐぐーっと伸びをして椅子から立ち上がった。
「おはようございます、魔王陛下」
質素な木の家から出て、目の前に降り立った大きな影に挨拶をする。
「おはよう。言われた種を取ってきた。住まいに不都合はないか」
男は無表情に近い表情でメイベルを見下ろした。
メイベルは首を振る。
「とんでもございません。ありがたく頂戴いたします」
メイベルが魔王と呼んだ男は、正体を燃え上がる赤をまとう黒竜で、人の姿になると黒髪赤目の見目麗しい青年になった。
その美貌ときたら、元婚約者をふくめ見飽きるほどの美男美女と会ってきたメイベルだが、国中を探してもほかに居ないと思うほどである。
しかし少しばかり、どこかで見たことがあるような気もしている。
「命をお救いくださるだけでなく、こうして衣食住を提供していただき誠に感謝しております」
初めて会ったとき、メイベルは魔力切れで倒れたあと、この竜に拾われていた。
青年の姿となった竜の髪は短く切り揃えられ、その表情はよく見えたが、表情自体はあまり動く竜ではなかった。
険しいわけでもなかったが憂いを帯びた眼差しだった。とくにメイベルを見るときは、それがはっきりしている。
目を覚ましたメイベルは、状況を飲み込むと、とうぜん、その黒竜に神君竜王であるかと、瞳を輝かせて訊ねた。
すると、彼は少なからず良い感情とは逆の様子で目を細めて、「ああ、そう呼ばれていたな……」と答えた。そして。
「僕のことは魔王とでも呼べ」
と言うので以後、魔王陛下と呼んでいる次第である。
「陛下、魔王陛下ね……」
竜がつぶやく。
「我が故国に残る、いにしえの呼び名にございます。わたくしは故郷を追われた身にありますが、その理由の一つに、わたくしに魔王の疑いがかかっていたようで、この状況で本物にお会いし、しかも助けていただいたとあれば。わたくしは不遜ながら親しみと、最大限の敬意を以って、そうお呼びしたいのです」
滔々と語られたかったわけではない魔王は、面倒臭さが勝ってか即答した。
「好きにしろ」
勝利。と言わんばかりに、メイベルはにっこり笑う。
「はい」
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