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最終章
46.偶然と凋落と計略と
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ハーフエルフのグレイスは、目の前に広がる式典前の慌ただしい様子をつぶさに見ていた。
第一王子の婚約者に商談をふっかけた非礼を咎められるどころか、コルート家に関する持ち前の情報のお陰で王子の関心を得られ、末には婚約者からカースド・メラースの呪いを解いてもらえた。
盗賊との関わりも、盗賊となった騎士団は古くはグレイスが所属し、また所属理由も貴族の養母が正式に騎士として所属していた縁から、という記録のお陰で、疑惑を解いてもらった結果、グレイスは密かな望みを叶えることとなった。
栄光ある王族付きの騎士となったのである。
孤児となったグレイスを、わざわざ拾ってくれた養母。
しかし当時は女騎士への風当たりは強く、騎士団がグレイスをデミ・ヒューマンと誤認していたのもあって、ろくな思い出がなかった。
そのせいで養母への敬意と、かの人が凛々しく勤める騎士団への憧れを、グレイスはずっと燻ぶらせていたのだ。
グレイスにひょうきんな印象を抱いていたメイベルは、正式な騎士となって様変わりしたグレイスに目をシロクロとさせていたが、話を聞くと納得していた。
ハーフエルフとして生まれながらに有していた、失われた魔法の力があったのも大きいだろう。
真実の言葉を告げる魔法。信頼関係を構築するには力強い。
「本当に、かまわないのか? ユージェニー様は、メイベル様の護衛なら受け入れてくださるだろう」
王子の従者にしてオズワルド王子とユージェニー王女の従弟にあたるバーナードの問いに、ハーフエルフのグレイスはうなずく。
「母の無念は晴らせた。呪いを解いてもらった上、俺の夢も叶った。これもすべてメイベル様と、オズワルド様のお陰だ。ついていかない理由がないな」
グレイスの父親も盗賊だった。グレイスと同じ呪いで死んでいる。
本来なら分かるはずもない父親のことだが、森エルフの異能を受け継いで生まれていたグレイスには、知りたくなくても知ってしまう事実である。
運悪く人間の世界に迷い込みレイプの末に死んだ母親から生まれたグレイスは、盗賊団ともども森エルフの少女の呪いを受けて、一人だけ生き延びていた。
すでに全滅しかかっていた盗賊団にトドメを刺したのが、グレイスの養母が所属する騎士団で、グレイスはその時に拾われている。
だから、思い入れのある騎士団が盗賊に身をおとす姿は、心底、不快でたまらなかった。
それを騎士団より上の立場にある者が粛清してくれたのは、グレイスにとって僅かばかりの慰みである。
その上に、命を救われ、ひそかな願望も叶えられた。
恩以外の他に、なにがあるだろう。
「そうか。何度も確認して悪かったな」
バーナードは目を伏して、謝意を示した。
「構わないぜ。特にこんなゴタゴタの後だものよ」
「ユージェニー様が即位されれば、一応の目処はつく。が、今日はまだ宣言式だからな。あともうひと踏ん張りだな」
「そうだなぁ。それでいくと、お前も大変だったなぁ、ハワード」
「……まったく」
グレイスに話を振られたハワードは、顔は無表情ながら、げんなりとした空気を発した。
「弟の浅慮にはほとほと呆れる。我がフローゼン家の恥だ」
「神官候補だったのを、神官にしてもらったのだったか?」
と、グレイス。
ハワードは忌々しそうに頷いた。
神官候補ヘンリー・フローゼンは、もともとコネで大神官の小間使いをしていた。ミドルネームがトーマスなのだが、大神官トーマス・ハージーが由来である。
そのような縁で、ハワードの弟ヘンリーは、大神官の忠実な僕と化していた。
「その身の上でメイベル様をあのように貶めるなど……メイベル様とオズワルド様の御慈悲がなければ、フローゼン家は取り潰しに遭っていた」
「いやいや、二重スパイが実を結んだんだろうさ。ご苦労さん」
ハワードは頭を振る。
「まさか。二重スパイなんてそんな大層なものではない……。向こうが勝手に勘違いをしてベラベラと……語る落ちるとはこのことだ……」
第一王子の婚約者に商談をふっかけた非礼を咎められるどころか、コルート家に関する持ち前の情報のお陰で王子の関心を得られ、末には婚約者からカースド・メラースの呪いを解いてもらえた。
盗賊との関わりも、盗賊となった騎士団は古くはグレイスが所属し、また所属理由も貴族の養母が正式に騎士として所属していた縁から、という記録のお陰で、疑惑を解いてもらった結果、グレイスは密かな望みを叶えることとなった。
栄光ある王族付きの騎士となったのである。
孤児となったグレイスを、わざわざ拾ってくれた養母。
しかし当時は女騎士への風当たりは強く、騎士団がグレイスをデミ・ヒューマンと誤認していたのもあって、ろくな思い出がなかった。
そのせいで養母への敬意と、かの人が凛々しく勤める騎士団への憧れを、グレイスはずっと燻ぶらせていたのだ。
グレイスにひょうきんな印象を抱いていたメイベルは、正式な騎士となって様変わりしたグレイスに目をシロクロとさせていたが、話を聞くと納得していた。
ハーフエルフとして生まれながらに有していた、失われた魔法の力があったのも大きいだろう。
真実の言葉を告げる魔法。信頼関係を構築するには力強い。
「本当に、かまわないのか? ユージェニー様は、メイベル様の護衛なら受け入れてくださるだろう」
王子の従者にしてオズワルド王子とユージェニー王女の従弟にあたるバーナードの問いに、ハーフエルフのグレイスはうなずく。
「母の無念は晴らせた。呪いを解いてもらった上、俺の夢も叶った。これもすべてメイベル様と、オズワルド様のお陰だ。ついていかない理由がないな」
グレイスの父親も盗賊だった。グレイスと同じ呪いで死んでいる。
本来なら分かるはずもない父親のことだが、森エルフの異能を受け継いで生まれていたグレイスには、知りたくなくても知ってしまう事実である。
運悪く人間の世界に迷い込みレイプの末に死んだ母親から生まれたグレイスは、盗賊団ともども森エルフの少女の呪いを受けて、一人だけ生き延びていた。
すでに全滅しかかっていた盗賊団にトドメを刺したのが、グレイスの養母が所属する騎士団で、グレイスはその時に拾われている。
だから、思い入れのある騎士団が盗賊に身をおとす姿は、心底、不快でたまらなかった。
それを騎士団より上の立場にある者が粛清してくれたのは、グレイスにとって僅かばかりの慰みである。
その上に、命を救われ、ひそかな願望も叶えられた。
恩以外の他に、なにがあるだろう。
「そうか。何度も確認して悪かったな」
バーナードは目を伏して、謝意を示した。
「構わないぜ。特にこんなゴタゴタの後だものよ」
「ユージェニー様が即位されれば、一応の目処はつく。が、今日はまだ宣言式だからな。あともうひと踏ん張りだな」
「そうだなぁ。それでいくと、お前も大変だったなぁ、ハワード」
「……まったく」
グレイスに話を振られたハワードは、顔は無表情ながら、げんなりとした空気を発した。
「弟の浅慮にはほとほと呆れる。我がフローゼン家の恥だ」
「神官候補だったのを、神官にしてもらったのだったか?」
と、グレイス。
ハワードは忌々しそうに頷いた。
神官候補ヘンリー・フローゼンは、もともとコネで大神官の小間使いをしていた。ミドルネームがトーマスなのだが、大神官トーマス・ハージーが由来である。
そのような縁で、ハワードの弟ヘンリーは、大神官の忠実な僕と化していた。
「その身の上でメイベル様をあのように貶めるなど……メイベル様とオズワルド様の御慈悲がなければ、フローゼン家は取り潰しに遭っていた」
「いやいや、二重スパイが実を結んだんだろうさ。ご苦労さん」
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