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だめじゃない -孵化-⑨
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「有人が強くなるのって複雑だな」
「なんで?」
「俺が守れなくなる」
言葉のとおり複雑そうな表情をする直行に笑ってしまうと、笑うな、と頭を小突かれた。だって可笑しい。
「直行に守られてるばかりじゃだめだよ」
「いや。守られてばかりでいて欲しい」
「甘えちゃう」
「甘えろ」
頑なな恋人に口もとが緩んでしまう。どこか拗ねた様子が可愛くて鼓動が速まった。
有人の腰に腕をまわした直行は何度もキスをくれる。耳朶を甘噛みされたらくすぐったくて身体を小さく捩った。
「俺、直行とちゃんと並びたい」
「並ぶ?」
「ずっと手を引いてもらってたから、もっと強くなってきちんと肩を並べたいんだ」
「有人……」
言うことばかり立派で実情がついて行っていないようにも感じるけれど、いつかは現実にしたい。手を引かれているばかりでいたくない――そんなふうに思えた自分にも驚いてしまうけれど、それも直行のおかげだ。
「有人はたくさん頑張ってるな」
「そう? まだ足りないよ」
「そんなことない。すごく頑張って変わっていってる」
有人を眩しそうに見つめる瞳が優しい。どんな有人でも直行は受け止め、抱きしめてくれる。
「だったらいいな」
直行の首もとに顔をうずめ、優しいにおいを胸いっぱいに吸い込む。
自分はだめではない――今は心からそう思える。その変化を与えてくれた直行に、たくさんの感謝と愛を捧げたい。
おわり
「なんで?」
「俺が守れなくなる」
言葉のとおり複雑そうな表情をする直行に笑ってしまうと、笑うな、と頭を小突かれた。だって可笑しい。
「直行に守られてるばかりじゃだめだよ」
「いや。守られてばかりでいて欲しい」
「甘えちゃう」
「甘えろ」
頑なな恋人に口もとが緩んでしまう。どこか拗ねた様子が可愛くて鼓動が速まった。
有人の腰に腕をまわした直行は何度もキスをくれる。耳朶を甘噛みされたらくすぐったくて身体を小さく捩った。
「俺、直行とちゃんと並びたい」
「並ぶ?」
「ずっと手を引いてもらってたから、もっと強くなってきちんと肩を並べたいんだ」
「有人……」
言うことばかり立派で実情がついて行っていないようにも感じるけれど、いつかは現実にしたい。手を引かれているばかりでいたくない――そんなふうに思えた自分にも驚いてしまうけれど、それも直行のおかげだ。
「有人はたくさん頑張ってるな」
「そう? まだ足りないよ」
「そんなことない。すごく頑張って変わっていってる」
有人を眩しそうに見つめる瞳が優しい。どんな有人でも直行は受け止め、抱きしめてくれる。
「だったらいいな」
直行の首もとに顔をうずめ、優しいにおいを胸いっぱいに吸い込む。
自分はだめではない――今は心からそう思える。その変化を与えてくれた直行に、たくさんの感謝と愛を捧げたい。
おわり
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