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ログアウト
しおりを挟む黒竜を撃破したフェイルノートと俺は、今はダンジョンの入り口付近に居る。
もちろん、徒歩で入り口付近にまで出て来た訳ではない。チート少女のテレポートを使ってひとっ飛びである。
もうそのままログアウトしたかったのだが、フェイルノートが入り口まで行くぞとしつこかった。
「で?なんかあんのか?ああん?」
ついついキレ気味で声を掛けてしまうが、それも仕方ないだろう。だってさっきから理不尽な事ばっかりだもん。
「もしかして怒っておるのか…?──案外器が小さいのう」
「うっぜっ!」
俺は思わず本音を漏らすが、フェイルノートはどこ吹く風で今し方攻略したばかりの高難易度(笑)ダンジョンを見つめている。
そしてしばらく見つめたかと思うと、徐に自らの掌をダンジョンに翳した。
──彼女式の攻略後の儀式だろうか?……等と言った楽観的な考えは直ぐに覆される事となった。
「圧縮」
彼女がそう呟くと、巨大なダンジョンがみるみる小さくなって行く…!
最早何度目かすら解らない、理解不能な出来事に俺は思わずフェイルノートに声を掛けた。
「何をやってんだよっ!」
この問い掛けに対してフェイルノートは──
「このダンジョンは宝の宝庫じゃからのう。ここに置いて置くのは勿体ない。踏破記念に持って行くぞ!」
「持っていく…?」
建物を……しかも巨大なダンジョンを持って行くとか言う、パワーワードを吐くフェイルノート。
そして圧縮作業とやらを開始してから数十秒……あれだけ巨大だったダンジョンは、フェイルノートの掌サイズにまで圧縮されてしまった。
「…うむっ!これでこのダンジョン内の宝は主人殿が独り占めなのじゃ……ほれっ」
そう言って彼女は在ろう事か、ダンジョンを投げ渡して来た。
「──ふぉぉおぁっ!!!だ、ダンジョン投げんなっ!なんか危ないだろっ!?」
俺は建物が投げられた事で慌てふためき、落ちない様に必死に野球ボール程の大きさに圧縮されたダンジョンを受け取った。
「これ、どうすんの?」
「どうするとは…?中には宝以外にも財宝がたんまりじゃぞ?」
俺は彼女の言葉に少し考えた後、笑顔でこう言った。
「──うん!そうだね!ありがとう!」
「むっふっふ…!素直になったのう、主人よ」
「ああ!素直が一番だからな!」
俺はここである決断を下した。勿論、ヤケになってこの状況を受け入れた訳では無い。
「取り敢えず、ご飯が出来る時間だから、そろそろログアウトするね!」
「…おう?まだ始めたばかりだと言うのに……仕方ないのう…」
彼女は名残惜しそうにしているが、それでも渋々と言った感じで従ってくれる。
そして俺は回線切断の準備に入った。
「では行くか!主人よ!」
「それじゃ!達者でな!フェイルノート!」
なんか若干おかしな事を言ってた気もしたが……まぁこれが最後だし別に気にしないでいいか!
俺は彼女見送られながらログアウトした。
──現実世界に戻った俺は深い溜息を吐いた。
「ふぅ~…結構楽しみにしていたのに…」
俺はPCからディスクを一枚取り出した。
そう、このディスクは二度とプレイしないと誓った『ワールド・オブ・オンライン』のディスクだ。
別にゲームはこれだけじゃないので、わざわざやりたくも無いゲームをする事は無いだろう。
俺は『ワールド・オブ・オンライン』のディスクを机の奥底へと隠した。
そこで、部屋の外から声が掛けられる。
「おにぃちゃん~ご飯出来たよ~早く降りて来てね~」
「おう!今行く!」
そして俺は椅子から立ち上がり、食卓へと向かうのだった。
「──妾は食事を必要とはせん。気にせずに行くが良い」
「うん、じゃあ行って来るわ」
俺は声を掛けて来た人物に手を振り返事を返した。
そして部屋を出ようとした所で、その人物の異常性に気が付き、激しい動作で振り返った。
「…?どうしたのじゃ?」
そこにはゲームキャラである筈の、フェイルノートがベッドに腰掛けて俺を見上げて居る姿があった。
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