貸本屋七本三八の譚めぐり

茶柱まちこ

文字の大きさ
62 / 76
二月『焔神楽』

その一

しおりを挟む
 どうか、どうか、お慈悲をください
 わらわはどうなってもかまいませぬ
 どうか、この子だけはお助けください
 この子は可哀想な子です
 この子はなにも悪くないのです
 お願いします
 この子を、助けて


 *****
 
「う……っ」

 頭の中を石がごろごろ転がっているように、唯助は感じた。脳の細胞をピシピシと小突かれているような、そんな感覚だ。 

「唯助、しっかりしろ!」

 世助の呼び声で、飛びかけた意識をなんとか回復させる唯助。

「い、今のは……」

 阿子に首を絞められた途端、唯助はまた新たに覗きかけたのであった。ただ、光景が見えてくる前に世助が引き剥がしたから、得られたのは音による情報だけだった。

「……あんた、は?」

 誰かに慈悲を乞うその声は、まさしく阿子のものであった。口調も特徴的であったから間違いない。

「ほう、わらわの譚も見たのかえ。いや、厳密に言えば『わらわから見た光雪の譚』か」

 阿子は渋い顔で、弱々しく見上げてくる唯助を見つめ返す。睨み返す。

「待て、何が起こっているんだ?」

 一度取り乱しつつも、冷静さを取り戻してきた三八が問うた。
 双子同様に、三八にも何がどうしてこんなことになっているのか、まるで分からないのである。
 それに答えたのは、阿子の後ろにいた秋声であった。

「光雪、貴方の記憶はそこまで失われたのですか。――『糜爛の処女』が何のために生まれたのか。かつての貴方がどうしてそれを紡がなければならなかったのか」
「………覚えて、ない」

 三八の返答を聞いて、秋声は軽くため息をついた。しかし、すぐにそれは改めたようだった。

「無理もないですか。貴方にとっては一番思い出したくない事柄でしょうから」

 そして、秋声は告げる。
 三十年前の記憶を語る。
 未だ困惑している三八の様子を伺いながら。……少し、心配しながら。

「――『糜爛の処女』は、貴方の幼少時代の記憶を封印した禁書です。そして、貴方にそうするよう進言したのは、他でもないこの僕です」


 *****


 またまた回想に入って、三十年前――
 彼は、またしても悲鳴をあげながら目を覚ました。――そう、一度や二度ではない。眠る度に、その度に同じような目覚め方をしているのだった。

「光雪、光雪、落ち着くのじゃ!」

 そして、彼が首に巻いていた赤い紐から阿子が出てきて、錯乱状態の彼を慰めるのも――同様に、一度や二度ではなかった。

「昔の悪い夢を見たのじゃな。よしよし、怖かったのう」

 八田光雪――当時、二十六歳。
 既に十分大人に成長していた彼を、こうして子供のように抱きしめ、背中をさすって慰めなければならなかったのだから、当時の彼がいかに深刻な状態であったかは論ずるまでもない。

「ああ、可哀想に……」

 阿子に縋る光雪の怯えようは、彼を息子同然に思っている彼女にとって見るに堪えないものであった。
 ――八田光雪、尾前秋久の両名が帝国司書隊を抜けてからというもの、光雪の精神はこんな具合で、非常に不安定だった。
 眠る度に見たくない悪夢を見るのだから、彼は眠ることを拒否するようになる。それでも本能的な眠気には抗えず、それに負けて寝てしまえば決まって悪夢を見て起きてしまう。
 そんな状態がもう二週間以上続いていた。

「前に言っていた、幼少時代の記憶ですか?」

 共に脱走し、共同生活を送っていた秋久が、阿子に聞く。
 彼とて光雪と長年付き合ってきた仲ではあるが、帝国司書隊で総隊長として辣腕らつわんを振るっていた光雪がここまで弱々しくなったのは、やはり彼にとっても目に当てられないものだったのだ。

「本当に、可哀想な子。もう十年以上経っているというのに、まだ解放されぬ」

 眠っている時だけではない。
 この時の光雪は、頻繁に嘔吐を繰り返していた。阿子以外の若い女を見ただけで吐き気を催すくらいなのだから、外を出歩くことなど不可能であった。
 食が細くなったせいで体は痩せ、睡眠不足で目の下の隈も黒々と色濃くなり。
 このままでは精神の均衡が崩れるのも時間の問題であろう――誰が見てもそう思うような危うい状態だったのだ。

「……記憶が蘇ってしまうのが原因なんですよね」

 だから、秋久は一計を案じた。
 それは、当時から禁書医学を研究していた彼だからこそできたと言えよう。

「それ、本に紡いでしまえばいいのではありませんか?」

 秋久の提案に、阿子はハッと顔を上げる。誰よりも光雪の回復を願う彼女は、何にでも縋り付く。

「なに? この子が助かる手段があるのかえ?」
「上手くいくかは分かりません。それに、あくまで一時しのぎの処置になると思いますが……」

 この時、光雪もまた、秋久を見ていた。彼に助けを求めるように。

「彼を苦しめる記憶を――譚を、一度本に紡いで封じてしまうのです。譚に『結』をつけて、終わったことだと彼が認識できれば、もしかしたら」

 例えば、三十年後の未来で――四月に出会った少年の恋を終わらせたように。五月に出会った幼女の悪夢を終わらせたように。

「ですが、本に紡いだあとは、絶対にその中身を見ないように。貴方の心が、また壊れてしまうかもしれませんから」

 ――そして生まれたのが、『糜爛の処女』。
 何人たりとも読み解くことを許さない、『拒絶』の禁書。
 八田光雪の、悪夢のような譚から生まれた分身――彼の影より生まれた禁書。
 煮詰まった悲しみと絶望の実体験が、本の天才によって――『譚に愛された男』によって生々しく紡ぎ記されてしまったために、禍々しい力を持ってしまった。

 生まれながらの第一級禁書『糜爛の処女』はそんな経緯で生み出された。
 秋久の狙い通り、光雪の記憶は徐々に風化し――秋久の狙いから外れて、いつしか彼の中から消えていたのだった。


 *****


「分かったであろう、光雪」

 阿子は、我が子を諭すように言う。

「『糜爛の処女』は決して読み解いてはならぬ。
その童は、既にその禁忌を犯しているのじゃぞ」

 かつての三八を救うために封じた記憶――影の番人によって守られていた譚――唯助は、その番人の妨害を受けることなく、その中身を夢で覗いてしまったのだ。
 誰にも突破できなかった壁を、無意識のまま乗り越えてしまっている。

「……だから、唯助を殺そうとしたのか」

 唯助も覗こうとして覗いたのではない。彼が覗いた、というよりも、彼にしてみれば勝手に見せられたようなものであろう。
 しかしそれは、彼の意志によるものではないからこそ、より危険なのである。彼の意志では、止められないのだから。

「唯助が、無意識に暴き切ってしまう前に」

 自身の身に起きていること、それを受けてのこの状況――三八にしてみればあまりにも突飛だから、すぐに受け入れられないのも無理からぬ話だが、そこは流石の冷静沈着ぶりというべきか――阿子が行動した理由はとりあえず飲み込んだ。
 あくまでも、阿子は自分を守ろうとしたのだと、三八は理解した。

「退くのじゃ、光雪」
「断る」

 それでも、三八は唯助の前を退こうとはしなかった。三八は頑なに、そこに立ち続けた。
 しかし、三八を息子同然に見ている阿子からしてみれば、それは聞かん坊が意地を張っているようなものである。だから、阿子は母親のように言い聞かせた。

「おぬしを守るためじゃ。おぬしが音音を守るために父を殺したように――わらわはおぬしを守るために、その童を殺さなくてはならぬ」
「なら、私はこの子を守るためにお前と戦う」

 本気であった。
 三八の目は徐々に、母同然の阿子に対する敵意に満たされようとしている。

「見えてしまったのはこの子の意志じゃないだろう」

 唯助が『糜爛の処女』の中身に触れてしまった原因は、単に七本屋にいたからというだけではないだろう。
 確かに、唯助には『糜爛の処女』本体に触れさせたことはないが――しかし三八は、その毒を仕込んだ栞を護身用に渡している。
 六月の紫陽花宿、八月の夏祭り――『糜爛の処女』の栞を二回渡したから、唯助が中身を覗くきっかけが十分にできてしまったのかもしれない。
 ――だとしても、恐ろしい感化性ではあるけれど。

「覚えていなかったとはいえ、私は彼に『糜爛の処女』の毒と接触させてしまったのだ。私にも非はある。それに、力ずくで解決しようとするその過保護ぶりはいけ好かん」

 三八はきっぱりと言い切った。正面から睨みすえて、あからさまに喧嘩腰の態度である。
 しかし、阿子の親心もまた堅いのだから、睨まれた程度では引かない。

「承服できぬ! おぬし、またあの地獄に戻りたいのかえ?」

 時間にしてみれば、たった二週間ほどの出来事ではあったけれど――阿子にとっては強烈な痛みを植え付けられた出来事でもある。
 身も心もぼろぼろに壊れかけた息子を見てきた阿子だからこその、親心であった。

「わらわはもうあんな光景は見とうないのじゃ!  子供が苦しむ姿を見せつけられる母の心境がどれだけつらいか知っておるのかえ!」
「知るか、そんなもの!!」

 炎の涙を浮かべながら訴える阿子よりもさらに大きな声で三八が言い返す。
 同じ建物で柄田や音音が寝ているというのに、そんなことなど頭からすっぽり抜けているようだった。

「退け、光雪!」
「断る!」
「やらねばおぬしがまた傷つくのじゃぞ!」
「それでも私の可愛い子だ! 手を出すな!」
「いいから退くのじゃ!」
「絶対に退かん!」

 先を行こうとする母と、それを阻む息子。荒くなっていく声と声。両者ぎりりと睨み合う、臨戦態勢であった。
 秋声は病人のいる建物でおっぱじめられてはたまらないと止めに入った。

「落ち着いてください、二人とも! こんなところで親子喧嘩は――」
「「やかましい!」」

 仲裁に入ろうとして、同時に怒鳴られた。何を言っても焼け石に水、むしろ火に油だ。
 阿子の体の一部、炎の塊が渦を巻き、火球となって周囲に浮かぶ。それを口火にして、壮絶な親子喧嘩の幕は切って落とされた。

「退かぬというなら――退ける!」

 阿子が前方に手を振ると、火球たちは三八に襲いかかった。

「『糜爛の処女』!」

 それを『糜爛の処女』の影で防ごうとする三八。しかし。

「ぐっ!?」

 火球は防がれることなく、全弾がそのまま三八に直撃した。 本来ならば、影の壁を作って防ぐはずであったのに、『糜爛の処女』は発動しなかったのだ。
 ――『焔神楽』のみならず、『糜爛の処女』までも、彼の命令に逆らったのである。

「どういうことだ?」

 頭に血は昇っていても、加減はされていたのが幸いであった――三八は炎の熱感を味わっただけで、火傷はしなかった。
 火球に吹き飛ばされた三八は、狼狽えた。そんな三八に、阿子は答える。

「当たり前じゃ。『糜爛の処女』の毒はおぬしの記憶の封印を守る番人――封印を解こうとする童を守るために命令したところで、動くわけがなかろう」

 ここに来て、三八は使用する禁書を二つとも封じられた。
『焔神楽』も『糜爛の処女』も――彼の記憶の封印を解こうとする者を阻む。それが禁書本体の持ち主で、記憶の持ち主でもある七本三八に背くことであろうとも。

「禁書を使えなければ、おぬしは無力。――おぬしが一番よく分かっておるじゃろう」

 本の天才、『毒の王』と呼ばれた彼も、結局、道具となる禁書がなければただの人間と変わらない――阿子は、それを三八に突きつけたのだった。

「――いいや、違うね」

 けれど、三八は屈しなかった。
 絶対的不利なこの状況で、戦うことをやめなかった。

「禁書が使えないと言うのなら――」

 三八は吹き飛ばされた近くの、囲炉裏に刺してあった火箸を手に取って、その一本を阿子に投げつけた。

「禁書以外の武器で戦うまで!」

 もう片方も、三八は投げつける。
 格闘戦が苦手な彼でも、武器を投擲するくらいはできる。銃の扱いにも長けた彼による投擲の命中精度は、銃ほどではないにしても高い。
 しかし、それでも。

「……それがどうした?」

 阿子は怯まなかった。怯む必要もなかった。
 彼女は、禁書なのだから。

「禁書に人間の武器が通用するものか。そんな自然の理も忘れてしまっているのかえ?」

 阿子の肩には火箸が刺さっているが、そんなものは痛くも痒くもない。人間の作った道具による物理攻撃などまったく意味をなさない。禁書の毒に通用するのは、同じ禁書の毒だけなのだ。
 それでも、三八は抵抗を続ける。

「なら、これはどうだ」

 三八は次に、囲炉裏の傍においてあった鉄鍋を持った。
 また物理攻撃か、と阿子は鼻で笑うが、それは単なる物理攻撃ではなかった。

!!」

 その言霊と共に投げつけられた鉄鍋は、しっかりと阿子の体に衝撃を与えた。

「うッ、ぐぅっ!?」

 回転をつけて投げられたそれは、三八の言霊により、禁書に通じる威力を纏ったのだ。
『譚を強制的にねじ曲げる力』――すなわち、『譚に対する強制的な干渉力』は、譚から生まれた禁書にも通じる!
 彼の言葉通り、阿子の体は言霊によって吹っ飛ばされ、後方にいた秋声をも追い越して、小屋の外へ放り出された。

「ちょ、光雪……っ」
「こ、のぉっ! 聞き分けの悪い小僧め!!」

 体勢を立て直した阿子がもう一度火球を放つ。先ほどよりも弾数を増した火球は一斉に三八に降りかかる。しかし、直撃しようが熱かろうが、三八はもう関係ないようだった。
 禁書という武器を封じられているのだから、通常時のような余裕は彼にないのだろうが――それだけに、攻撃の手は緩まなかった。
 阿子は火球を大砲のように放ちまくり、三八は茶碗なり雪玉なり石なり手当たり次第に物を投げまくる。
 過激な親子喧嘩の間に挟まれた秋声はたまったものではなかった。

「ぐ……ッ、この小童こわっぱがぁッ!!」
「うるさい、出ていけ、唐変木とうせんぼく!!」

 三八が追撃を加えようと、外に積んであった薪を片手に駆け出した時だった。
 三八は突然、脚に衝撃を食らって体勢を崩された。
 ……というか、自ら崩れるより他なかった。

「い゛ッ!?」

 短い悲鳴をあげて、三八はその場に転がる。転がって、転がり回る。
 そんな三八と入れ替わるように、いつの間にか、彼の足元に滑り込んでいた世助が立ち上がった。

「いい加減にしやがれ、馬鹿親子!!」

 ドスの効いた世助の声が、三八を怒鳴りつける。対して、三八は涙を滲ませていた。世助に怒鳴られたからではなく、突如自分を襲った強烈な脛の痛みに悶えていたからだ。

「いっっ………たぁぁぁ……っ!!」

 世助は先ほど、阿子に向かっていく三八の脚を引っ掛けたのだが、それと同時に彼の脛に強烈な蹴りを叩き込んでいたのだ。
 加減はしたけれど、自重と走る勢いで威力は増していたし、世助は生粋の格闘家。格闘技を苦手とする三八とは比べ物にならない脛の硬さであるから、当然、この場合は三八の方が衝撃への耐性は低い。
 棍棒のような脚で泣き所を打たれた三八は堪らず、その場にうずくまってしまったのである。

「光雪!? 貴様なにをす――る゛ッ!?」

 ついでに世助は阿子の腹にも一撃を見舞った。その身一つで禁書の毒に干渉してみせる世助である――放たれた拳は炎の体を持つ阿子にも容赦なくめり込んだ。

「うわぁ……世助つえぇ……」

 ようやく呼吸を整えた唯助は、久方ぶりに兄が見せた手荒い仲裁に震えた。一応加減はしているであろうけれど、それでも両者ともいい大人だ。夏目家の弟たちがするような可愛い喧嘩の仲裁とはわけが違う。

「おっさん、唯助連れて外出ろ! その煮えた頭冷やしてこい!」

 先に痛みが引いてきた三八に、世助は言いつけた。まさか、十八の少年に五十路の自分がこうも堂々と指図されるとは思わなかったのだろう。

「へっ?」

 と返した三八の顔には、間抜けの文字が浮かんでいるようだった。

「さっさと行く!!」

 三八はぽかんとしていたが、世助の怒号と、ガン!! と踏み鳴らされた足の音に、慌てて唯助を連れてその場を走り去った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。