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第一章•帝国編
2話◆聖女ディアナンネ降臨?そして発酵…薄幸の美少年。
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ディアーナは、馬車に乗せられていた三人を連れ城に向かう。
国境近くの村から拐われた娘達、オフィーリアに似た少女リリーと、ミーナとビスケは、ビクビクしながらディアーナの後を着いて来る。
怯える若い娘さん達を、あんなむさ苦しい男どもの前に置いてはおけない。
「私たち、どうなるの?」
「売られちゃうの?」
「怖い、お家に帰りたい」
背後から聞こえる、そんな声を聞いていたら、レオンハルト皇帝とやらに益々腹が立ってきた。
「陛下、村の娘達を連れて参りました。」
私達は玉座の間に通された。
私を姫と呼んで、ここに案内した奴…が、陛下と呼んだ男。
暴君レオンハルト皇帝とやらの顔を見る。
私の愛するレオンハルトと同じ、金の髪、翡翠の目……
だけど、コイツ顎割れてるじゃん!
モミアゲ長いし!ダッサ!
そのツラで私の夫と同じ名前だとか、なんたる無礼者!
「おお!何と美しい娘だ!初めて見たぞ!藍色の髪に金の瞳を持つ娘など!」
そうね、師匠いわく、聖女仕様のようですもの。
私以外にはこの世界に居ないらしいわよ?天然モノでは。
「月の聖女ディアナンネのようではないか!」
だから何なんだ!その残念な名前は!
「お前は特別に俺の妻にしてやろう!
皇帝の正妃になるのだ、嬉しかろう!」
皇帝の手がディアーナに延びる。
その手がディアーナの身体に触れようとした瞬間、ディアーナの右足が高く上がり、皇帝の左肩に踵が落とされた。
「うぐっ!!」
皇帝の鎖骨を折る勢いで振り下ろした脚の下で、皇帝が膝をついた。
「気安く触れるな、無礼者!私を誰だと思っている!
私は月の女神ディアーナだ!」
女神ではないんだけどね、ホントは。
何か、一般的にそう呼ばれているのよ。
この国には浸透してないみたいだけど。
それとホントは、お前をうぬ呼びしたり、笑止!
とか言ってみたかった。
私を案内した男が、焦ったように皇帝に駆け寄る。
そして、皇帝にボソボソと耳打ちする。
「へ、陛下!陛下!
あの娘は、自分を月の女神だと言っている、おかしな娘です!
しかも、聖女の名前をディアーナだと間違えています!
ああいう………のは、まともに相手をしては駄目です!」
今、ひそかに頭おかしい的なジェスチャーをしたわよね?
くるくるパー的な。
自分は女神だと思い込んでるのに、名前間違えちゃってる痛い人だと思われてんのか?私。
なんかムカついてきたから皇帝も、この側近らしい男も、二、三発殴っておこうか…。
「そなた、名は…ディアーナと申すのか…」
肩を押さえて床に膝をついた皇帝の目がキラキラしている。
ああ……目覚めさせちゃったかしら……どエム……。
「何と強く美しい…わが、先祖に慈悲を与えて下さった聖女ディアナンネのようだ…」
膝をついたまま私を見上げる皇帝の顎先を、人差し指でクイと更に上向かせて目線を合わせる。
「その先祖とやらの話し、聞きたいわね」
ポッと頬を赤らめ、乙女顔になるアゴ割れ皇帝。
話しを聞く所によると━━
百年以上前にアゴーンの先祖が近隣の国々に侵攻を繰り返していた際に、辺境の村に聖女ディアナンネが降臨。
「これ以上、人々を苦しめるのであれば、私があなた方の国を滅ぼします。
このまま大人しく退くのであれば、今回の事には目をつむりましょう。」
と、慈悲を与えた……か?
「………それ、覚えてるわ……」
百年程前の事。今回同様、ディアーナの滞在していた村に、いきなり兵士が侵攻して来たのだ。
村人のお宅にて、昼食をご馳走になっている途中だったディアーナは激怒。
百人近く居た兵士達をフルボッコにした。
怒りは治まらず、そのまま当時の皇帝の所に殴り込み、城で散々暴れ倒し、
「これ以上、うざったいマネをするなら国ごと消すわよ!
大人しく退きなさいよ!このど阿呆どもが!」
………と、言った……
年数を経て美化が進み、名乗った名前も間違えられてるし…そいでもって、言葉遣いに聖女らしさがグレードアップしてますわね…。
「つか、アホか!結局同じ事してるじゃないの!
マジでぶっ潰すぞ!」
「ち、違う!いや、違うんです!
我が国は、聖女ディアナンネ様を崇拝しております!
ディアナンネ教の信者を増やし、更なる布教の為に領土を増やしております!」
ディアーナはアゴーンの胸ぐらを掴む。
「ほう…で、人々を拐って奴隷商人に売るとか?
そもそも名前を間違えとるわ!」
ディアーナはアゴーンの肩を踏みつけ、土下座させるように頭を地面に擦り付けさせる。
ディアーナは理不尽な怒りが収まらない。
「しかも、何でお前の名前がレオンハルトなのよ。」
「そ、それは…聖女ディアナンネ様の怒りを…鎮めた勇者様の名前で…代々、皇帝になる者には、その名前が…」
地面に顔を擦り付けたままアゴーンが言った。
ああ、そう言えば百年程前、散々城で暴れ倒した後、レオンが私を羽交い締めにして止めたわ…
「ディアーナ!やっちゃなんねぇ!それ以上はやっちゃなんねぇだ!」
「………ディアナンネだと…?…レオン…原因お前か……
どいつもコイツも…レオンハルトって奴はクソか…?」
腹が立ち過ぎて、怒りのやり場が分からなくなったディアーナは、足の下で土下座状態のアゴーンから足をどかした。
「私と、この三人の娘さん達をもてなしなさい。
言っとくけど私の目の届かない所で、この娘さん達に何かしようとする輩が現れたら…」
ディアーナは指先で虫をにじり潰すジェスチャーをする。
「国ごとプチだから!」
皇帝をビビらせたディアーナと、連れて来た達は、客人として扱われる事になった。
元は令嬢であるディアーナの立ち居振る舞いは、その気になれば美しい。
ドレスを身に着けた少女三人を従え城内を歩くディアーナの姿は女でありながら威風堂々としており、まるで女王陛下のようである。
城内はともかく、敷地内とはいえ城から出て歩くと、ディアーナの事を知らない輩が野次を飛ばして来たりする。
「おい、ねーちゃんら、皇帝に可愛がってもらってんのかぁ?ハッハー………
あああっ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
そんな奴はソッコー締め上げる。
とりあえず、膝をつかせてから背中を踏んで……顔を地面に……
まぁ、だいたい泣いてごめんなさいって言われるから許してあげるけど…。
気が付くと、皇帝アゴーンが物陰から私を見ているのよね。
頬を赤らめて。きもっ。
「ディアーナ様は…お城の中を回って、何をなさっているのです…?」
ビスケがおずおずと、尋ねてくる。
「私たち、早く村に帰りたいです…」
ミーナも呟く。
「今、帰ってもまた同じように拐われるかも知れないわ…
今度は、ディアーナ様のように助けてくれる方が現れないかも知れない…
もっと、ひどい事になるかも知れないのよ?」
オフィーリア似のリリーが二人を、諭すように言う。
まるで出来のいいオフィーリアだ。
「…ごめんなさいね、私も何を探しているのか自分でも分からないのよ…」
本当に分からない。
だが、何か…私の心をくすぐる何かあるはず!
城を離れ、敷地内を歩いていると、離れのような建物に辿り着いた。
中に入ろうと扉に手を掛ける。
「ここは!皇帝の許し無く立ち入りは出来ません!」
この城に初めて来た日に私を皇帝の所に案内した側近が、私を止めた。
「皇帝…がどうかして?」
私はニコリと笑う。
「わたくしに皇帝が許しを?この、わたくしに?…
ふふっ…そんなもの知らんわ!」
強引に扉を開け、ズカズカと中に入る。
何がある、この離れ。幽閉したい誰か居るの?
定番って言えば定番ね!
無理矢理退位させられた前皇帝とか!
さあ!誰!?
離れの中庭、小さな温室。
そこには薄幸の美少年……が居た。
銀に近い、色素の薄いゆるふわな金髪の線の細い…
いかにも病弱ですと、見た目だけで分かる美しい少年…。
「………部屋を間違えました。」
ディアーナは、そっと後ずさる。めんどくさい。
「ま、待って…行かないで…、その姿、聖女ディアナンネ様にそっくり…あっ…」
ほら、めんどくさいの来た!
ほら、駆け寄ろうとしてよろけている!
少女三人が助けに駆け寄る!
あああっめんどくさい!確信犯だよ!
こーいう奴は、自身の見た目を熟知した上で、女の子はほっとけないでしょ?って行動を取るんだよ!
「ディアーナ様、ひどいです!いきなり尋ねて来て、いきなり帰るだなんて!」
少年を支えてミーナが言う。
「ごめんなさい…僕が、いきなり駆け寄ろうとしたから…
驚かれたのですよね…」
いや、駆け寄られる前に帰りたかったけど。
「僕、いつも一人なんだ…話し相手になって…くれませんか…」
王子様、と呼ぶには少し弱々しいけど…田舎暮らしの少女達には初めて見る美しい少年。
金髪に青い目の美少年。
そんな少年とお近づきになれて、少女達ははしゃいでいる。
「……いいわ、わたくしの名はディアーナ…。
この三人はリリー、ミーナ、ビスケよ。」
「僕の名前はロージアです。」
ロージア…あなた、この部屋に来た時から私しか見てないわね。
私に何か望むのね…。
うぜぇ…。
温室の外にある丸テーブルに椅子を用意し、五人で腰掛ける。
ミーナとビスケは、初めて知り合った美少年に有頂天で、村から拐われた事やこの城に連れて来られた経緯など楽しげに説明していた。
リリーは、少し警戒して話の輪には入っていない。
「じゃ、ディアーナさんは自分を月の女神だと思っている、強い女性なんだね?」
勝手に私の話をしている。
その言い回し、ただの痛い勘違いメスゴリラだと思ってないか?
「ディアーナさんは、どこから来たの?
この国の人ではないよね?」
私の事ばかり聞きやがる。うぜぇ。
「出身はラジェアベリアよ…」
国を出たのはもう、数百年前になるけど。
「聞いた事ない国の名前だね…」
今の国の名前は変わったかも知れない。
でも、スティーヴンとウィリアの子孫は今も、あの国に居る。
彼らに何か不幸が起こる時は、分かるから。
「遠い遠い、国ですわ。」
そう、距離も…時間も…。
国境近くの村から拐われた娘達、オフィーリアに似た少女リリーと、ミーナとビスケは、ビクビクしながらディアーナの後を着いて来る。
怯える若い娘さん達を、あんなむさ苦しい男どもの前に置いてはおけない。
「私たち、どうなるの?」
「売られちゃうの?」
「怖い、お家に帰りたい」
背後から聞こえる、そんな声を聞いていたら、レオンハルト皇帝とやらに益々腹が立ってきた。
「陛下、村の娘達を連れて参りました。」
私達は玉座の間に通された。
私を姫と呼んで、ここに案内した奴…が、陛下と呼んだ男。
暴君レオンハルト皇帝とやらの顔を見る。
私の愛するレオンハルトと同じ、金の髪、翡翠の目……
だけど、コイツ顎割れてるじゃん!
モミアゲ長いし!ダッサ!
そのツラで私の夫と同じ名前だとか、なんたる無礼者!
「おお!何と美しい娘だ!初めて見たぞ!藍色の髪に金の瞳を持つ娘など!」
そうね、師匠いわく、聖女仕様のようですもの。
私以外にはこの世界に居ないらしいわよ?天然モノでは。
「月の聖女ディアナンネのようではないか!」
だから何なんだ!その残念な名前は!
「お前は特別に俺の妻にしてやろう!
皇帝の正妃になるのだ、嬉しかろう!」
皇帝の手がディアーナに延びる。
その手がディアーナの身体に触れようとした瞬間、ディアーナの右足が高く上がり、皇帝の左肩に踵が落とされた。
「うぐっ!!」
皇帝の鎖骨を折る勢いで振り下ろした脚の下で、皇帝が膝をついた。
「気安く触れるな、無礼者!私を誰だと思っている!
私は月の女神ディアーナだ!」
女神ではないんだけどね、ホントは。
何か、一般的にそう呼ばれているのよ。
この国には浸透してないみたいだけど。
それとホントは、お前をうぬ呼びしたり、笑止!
とか言ってみたかった。
私を案内した男が、焦ったように皇帝に駆け寄る。
そして、皇帝にボソボソと耳打ちする。
「へ、陛下!陛下!
あの娘は、自分を月の女神だと言っている、おかしな娘です!
しかも、聖女の名前をディアーナだと間違えています!
ああいう………のは、まともに相手をしては駄目です!」
今、ひそかに頭おかしい的なジェスチャーをしたわよね?
くるくるパー的な。
自分は女神だと思い込んでるのに、名前間違えちゃってる痛い人だと思われてんのか?私。
なんかムカついてきたから皇帝も、この側近らしい男も、二、三発殴っておこうか…。
「そなた、名は…ディアーナと申すのか…」
肩を押さえて床に膝をついた皇帝の目がキラキラしている。
ああ……目覚めさせちゃったかしら……どエム……。
「何と強く美しい…わが、先祖に慈悲を与えて下さった聖女ディアナンネのようだ…」
膝をついたまま私を見上げる皇帝の顎先を、人差し指でクイと更に上向かせて目線を合わせる。
「その先祖とやらの話し、聞きたいわね」
ポッと頬を赤らめ、乙女顔になるアゴ割れ皇帝。
話しを聞く所によると━━
百年以上前にアゴーンの先祖が近隣の国々に侵攻を繰り返していた際に、辺境の村に聖女ディアナンネが降臨。
「これ以上、人々を苦しめるのであれば、私があなた方の国を滅ぼします。
このまま大人しく退くのであれば、今回の事には目をつむりましょう。」
と、慈悲を与えた……か?
「………それ、覚えてるわ……」
百年程前の事。今回同様、ディアーナの滞在していた村に、いきなり兵士が侵攻して来たのだ。
村人のお宅にて、昼食をご馳走になっている途中だったディアーナは激怒。
百人近く居た兵士達をフルボッコにした。
怒りは治まらず、そのまま当時の皇帝の所に殴り込み、城で散々暴れ倒し、
「これ以上、うざったいマネをするなら国ごと消すわよ!
大人しく退きなさいよ!このど阿呆どもが!」
………と、言った……
年数を経て美化が進み、名乗った名前も間違えられてるし…そいでもって、言葉遣いに聖女らしさがグレードアップしてますわね…。
「つか、アホか!結局同じ事してるじゃないの!
マジでぶっ潰すぞ!」
「ち、違う!いや、違うんです!
我が国は、聖女ディアナンネ様を崇拝しております!
ディアナンネ教の信者を増やし、更なる布教の為に領土を増やしております!」
ディアーナはアゴーンの胸ぐらを掴む。
「ほう…で、人々を拐って奴隷商人に売るとか?
そもそも名前を間違えとるわ!」
ディアーナはアゴーンの肩を踏みつけ、土下座させるように頭を地面に擦り付けさせる。
ディアーナは理不尽な怒りが収まらない。
「しかも、何でお前の名前がレオンハルトなのよ。」
「そ、それは…聖女ディアナンネ様の怒りを…鎮めた勇者様の名前で…代々、皇帝になる者には、その名前が…」
地面に顔を擦り付けたままアゴーンが言った。
ああ、そう言えば百年程前、散々城で暴れ倒した後、レオンが私を羽交い締めにして止めたわ…
「ディアーナ!やっちゃなんねぇ!それ以上はやっちゃなんねぇだ!」
「………ディアナンネだと…?…レオン…原因お前か……
どいつもコイツも…レオンハルトって奴はクソか…?」
腹が立ち過ぎて、怒りのやり場が分からなくなったディアーナは、足の下で土下座状態のアゴーンから足をどかした。
「私と、この三人の娘さん達をもてなしなさい。
言っとくけど私の目の届かない所で、この娘さん達に何かしようとする輩が現れたら…」
ディアーナは指先で虫をにじり潰すジェスチャーをする。
「国ごとプチだから!」
皇帝をビビらせたディアーナと、連れて来た達は、客人として扱われる事になった。
元は令嬢であるディアーナの立ち居振る舞いは、その気になれば美しい。
ドレスを身に着けた少女三人を従え城内を歩くディアーナの姿は女でありながら威風堂々としており、まるで女王陛下のようである。
城内はともかく、敷地内とはいえ城から出て歩くと、ディアーナの事を知らない輩が野次を飛ばして来たりする。
「おい、ねーちゃんら、皇帝に可愛がってもらってんのかぁ?ハッハー………
あああっ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
そんな奴はソッコー締め上げる。
とりあえず、膝をつかせてから背中を踏んで……顔を地面に……
まぁ、だいたい泣いてごめんなさいって言われるから許してあげるけど…。
気が付くと、皇帝アゴーンが物陰から私を見ているのよね。
頬を赤らめて。きもっ。
「ディアーナ様は…お城の中を回って、何をなさっているのです…?」
ビスケがおずおずと、尋ねてくる。
「私たち、早く村に帰りたいです…」
ミーナも呟く。
「今、帰ってもまた同じように拐われるかも知れないわ…
今度は、ディアーナ様のように助けてくれる方が現れないかも知れない…
もっと、ひどい事になるかも知れないのよ?」
オフィーリア似のリリーが二人を、諭すように言う。
まるで出来のいいオフィーリアだ。
「…ごめんなさいね、私も何を探しているのか自分でも分からないのよ…」
本当に分からない。
だが、何か…私の心をくすぐる何かあるはず!
城を離れ、敷地内を歩いていると、離れのような建物に辿り着いた。
中に入ろうと扉に手を掛ける。
「ここは!皇帝の許し無く立ち入りは出来ません!」
この城に初めて来た日に私を皇帝の所に案内した側近が、私を止めた。
「皇帝…がどうかして?」
私はニコリと笑う。
「わたくしに皇帝が許しを?この、わたくしに?…
ふふっ…そんなもの知らんわ!」
強引に扉を開け、ズカズカと中に入る。
何がある、この離れ。幽閉したい誰か居るの?
定番って言えば定番ね!
無理矢理退位させられた前皇帝とか!
さあ!誰!?
離れの中庭、小さな温室。
そこには薄幸の美少年……が居た。
銀に近い、色素の薄いゆるふわな金髪の線の細い…
いかにも病弱ですと、見た目だけで分かる美しい少年…。
「………部屋を間違えました。」
ディアーナは、そっと後ずさる。めんどくさい。
「ま、待って…行かないで…、その姿、聖女ディアナンネ様にそっくり…あっ…」
ほら、めんどくさいの来た!
ほら、駆け寄ろうとしてよろけている!
少女三人が助けに駆け寄る!
あああっめんどくさい!確信犯だよ!
こーいう奴は、自身の見た目を熟知した上で、女の子はほっとけないでしょ?って行動を取るんだよ!
「ディアーナ様、ひどいです!いきなり尋ねて来て、いきなり帰るだなんて!」
少年を支えてミーナが言う。
「ごめんなさい…僕が、いきなり駆け寄ろうとしたから…
驚かれたのですよね…」
いや、駆け寄られる前に帰りたかったけど。
「僕、いつも一人なんだ…話し相手になって…くれませんか…」
王子様、と呼ぶには少し弱々しいけど…田舎暮らしの少女達には初めて見る美しい少年。
金髪に青い目の美少年。
そんな少年とお近づきになれて、少女達ははしゃいでいる。
「……いいわ、わたくしの名はディアーナ…。
この三人はリリー、ミーナ、ビスケよ。」
「僕の名前はロージアです。」
ロージア…あなた、この部屋に来た時から私しか見てないわね。
私に何か望むのね…。
うぜぇ…。
温室の外にある丸テーブルに椅子を用意し、五人で腰掛ける。
ミーナとビスケは、初めて知り合った美少年に有頂天で、村から拐われた事やこの城に連れて来られた経緯など楽しげに説明していた。
リリーは、少し警戒して話の輪には入っていない。
「じゃ、ディアーナさんは自分を月の女神だと思っている、強い女性なんだね?」
勝手に私の話をしている。
その言い回し、ただの痛い勘違いメスゴリラだと思ってないか?
「ディアーナさんは、どこから来たの?
この国の人ではないよね?」
私の事ばかり聞きやがる。うぜぇ。
「出身はラジェアベリアよ…」
国を出たのはもう、数百年前になるけど。
「聞いた事ない国の名前だね…」
今の国の名前は変わったかも知れない。
でも、スティーヴンとウィリアの子孫は今も、あの国に居る。
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