前世女子高生の私は今、悪役令嬢を経て月の女神と呼ばれてますけどムカついたヤツはぶん殴る肉体派ですわ!

DAKUNちょめ

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第一章•帝国編

4話◆皇太后を犠牲に受肉。 顎の割れてない方のレオンハルト。

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「僕ね、実は聖女ディアナンネ様の御子なんだ…」


「あら…そうなの…。」


ロージアは私が誰も連れずに一人で中庭のベンチに座って、皇帝のテーブルからくすねて来たブドウを頬張っている時に現れやがった。


転移魔法かしら?

どうでもいいが、ハムスターみたいに両頬が膨らんでる時にいきなり来るな!

多分、私が他の少女達と居ないのを見計らって来たのよね?

うぜぇなコイツ。


「……驚かないんだね。」


ロージアはベンチの隣に座り、ブドウを一粒口に含む。

おい、それは私のブドウだ!



「なぜ驚くの?
神の子だとか聖女の生まれ変わりだとか、祭り上げられていたり自称だったり。
どちらにせよ、よく聞く話じゃないの。
わたくしだって月の女神よ?
それとも驚いて欲しかったのは、急に現れた事の方?」


そして、言わないけど…
何でお前が私の御子になるんだよ。


「転移魔法は知ってるんだ?
…月の女神ね…君の素敵な妄想もいいけど…
僕ね、この国の皇帝の弟なんだよ?って、それは聞いてるよね」


返事をするのが面倒くさいので、ブドウを頬張りながら頷く。


「僕は、この国の皇子であり、ディアナンネ様の御意志によって、この世に生まれた聖女の御子なんだよ…
僕の産みの母である皇太后の慈悲を与えられ受肉した…。」


「へー…それは、お疲れ様でした」


興味無さげに呟く。うぜぇ。僕自慢かよ。


私の意志だと?
貴様のような息子を欲した事など一度も無いわ。



先日、アゴーンの胸ぐらを掴んだ後にアゴーンと側近ジジイから話しを聞いた。



皇太后であるアゴーン皇帝の母は五年前、日課の散歩中に行方不明になった。



五十路を越えた彼女は閑静な郊外に建てられた別荘で静かに暮らしており、健康の為だと別荘まわりの林を散策するのが日々の日課だった。

護衛もおり、侍女も居て、街から離れた自然の多い場所で穏やかに毎日を過ごしていた彼女が行方不明になり、護衛や侍女が遺体で見付かった。


皇帝に恨みを持つ者の仕業かと思われたが、行方不明から三日目に彼女は見付かった。


臨月のような腹部を抱えて。


発見から三日目、彼女は子を産んだ。

その命と引き換えに。



生まれた赤子は、金色の髪を持つ美しい子供だった。

皇太后がバラの咲く場所で見付かった事からロージアと名付けられた少年は、たった1ヶ月で今の少年の姿になった。



起こった事だけを語ればそうなのだが、だから何者かと言えば分からない、が答えとなる。


人間ではない。だけど、何者か分からないと。





「ねぇ、ディアーナ。
皇子であり聖女ディアナンネ様の御子…そんな僕の事、気にならない…?」


ロージアは手をのばし、私の髪に触れようとする。

あーうぜぇ…。

身体を引いて避けながら、質問を投げ掛けてみる。


「ロージアのお母様は、どうしているの?皇太后なのよね?」


「もう!ちゃんと聞いてる?
だから、僕に慈悲を与えてー死んじゃったよ!」


皇太后が亡くなっている事を知っていて敢えて聞いてみたのだが、悪怯れる様子もなく当たり前のように無邪気に話すロージアに、私はムカついた。



気が付くと私は、思い切りロージアの頬をはたいていた。



ベンチの下に落ち、地面に尻をついて私を見上げるロージアは、涙目でワナワナと震えている。


「な、何で…?ナニこれ、痛い…」


「何で?あんたがクソガキだからよ。
誰のお陰で生まれて、そこに居て、ブドウ食えてると思ってんだ。皇太后の犠牲を嬉しそうに語るんじゃない!」


地面に尻をついたままのロージアを置いたまま、私は中庭から城に戻った。


「………ブドウ…置いて来た……」



中庭に取りに戻ってロージアの顔を見たら、今度は平手では済まない。絶対右ストレートかましてしまう。


だからブドウは諦めよう…。


しかし、アイツ…何者?


本物の神である師匠…おとんや、神の御子である夫のレオンハルトと違う…。

永く旅をしてきて、魔獣や魔物も多く見て来たが…。

瘴気から生まれた魔物……とも、何か違う…。



あー分からないのもウゼェ!

ムカつくなロージア!









━━俺は今、捕らわれています。


はい、どういう事でしょう?


過去に、オフィーリアの姿でディアーナを助ける為にわざと捕らわれた事はあります。


ですが神の御子である俺を、気絶していたとは言え容易に捕らえる事など……普通の人間には出来ないハズなのです。

しかも、こんなハナタレ小僧どもに……。━━



「こいつ、何者だぁ!」

「見た事ない、アヤシイ奴だ!」

「お前、誰なんだよ!」


さびれた超ド田舎の小さな教会のような場所で、後ろ手に縛られたレオンハルトは目の前に居る10歳ほどの三人の少年達に詰め寄られ、考えのまとまらない頭で答える。


「誰?俺?…俺は…レオンハルト……。」


名を答えた途端、少年達の顔が青ざめた。


「ギャー!レオンハルトだ!」

「皇帝だ!」

「暴君だ!バクスガハーツ帝国の暴君だ!」



青ざめた少年達がギャーギャー騒ぎ出す。


━━皇帝?暴君?何より国の名前!━━



「ばっ…バスガス爆発帝国だと!?」



何だ、その三回続けて言えたらスゲェみたいな名前!


いかん、少年達がパニクっている。
下手したらお漏らしされそうな勢いだ…。
ハナタレ小僧が、ションベンタレ小僧になるのは非常にマズイ。


俺もつられてパニクってはいかん…。落ち着け俺。


なぜ、こんな事になっているのか…。

ちょっと、色々と思い出してみようか…。



そういえば、俺は草原でディアーナとイチャイチャしていたな。



もう、俺の妻は最高で…見た目はパーフェクト、香り良し、肌触り良し、抱き心地良し、声も最高で…いや、違う。


そんな事を思い出してる場合じゃない。


お漏らしされる前に思い出せ俺!


草原でイチャイチャしていた……ディアーナを抱き締めた…
ら、キレた。


「ああ…時々起こる発作が…香月発作が…出たな…。
俺が、か弱いなんて言ったせいで…。」


普段なら、か弱いなんて言った位で妻はキレたりはしない。


せいぜい、「やだわ、か弱いだなんて」と可愛く照れながら、俺をグーパンで殴る程度だ。
可愛らしいもんだ。


それが香月パーセントが高めになると、弱いという言葉に過剰に反応するようになる。


そして、ディアーナはそこそこ強い。

そこに香月が入ると、より一層遠慮が無くなる。



……俺は、愛妻の頭突きや足技で気絶させられたようだ…。



いや、でもな……気絶していたとは言え、たかが人間に捕らえられる程、弱くないハズなんだが…。


教会の奥の扉が開く。
神父らしき男が近付いて来る。


「皆さん、あまり近寄ってはいけませんよ?
変な病気を伝染されたら大変ですからね。」


教会の奥から出て来た男は黒い髪に黒い瞳の美しい青年…。

て、ゆーかもー神父の服を身に付けたジャンセンだった。


「おやっ……!」


親父と呼ぶ前に恐ろしい威圧を受ける。

睨み合う二人が、眼で会話を始める。


『呼んでみなさい、どうなるか分かっているんでしょうね?』


『あぁ?どうなるんだよ、クソ親父。』


『お前の金髪むしり取って、二度と生えなくしてやりますよ…
ディアーナの前に出れなくしてやるわ。』





「…………神父様…俺はただの旅人です……
もう、許してくれませんか?色々と。」



レオンハルトは、目で語り敗れた。



「そうですか何者でもない、ただのただの旅人だったのですね。
この村に侵攻して来た国の皇帝と同じ名前なもんですから…。」


ジャンセンは、さりげに情報をレオンハルトに語りつつ、レオンハルトの縄を解いていく。


━━……それにしても俺への態度にトゲ有りすぎだろ。━━



「神父様!騙されちゃ駄目だよ!こいつ、絶対アヤシイよ!」


「そうだよ、ミーナとビスケ姉ちゃんを拐った奴らの親玉だ!」


少年達が縄を解く神父に食ってかかる。


「……私が……大丈夫だと判断したのです。
何か文句でも?」


ジャンセン神父は、ニコニコと微笑んでいる。

微笑んでいるが、少年らに向け威圧を放つ。

少年達は涙目でカタカタ震えだした。



「うおお…子どもにも容赦ねぇ…」


さすが親父だ。自分の感情とペース、最優先。


「神父様…お漏らしされる前に許してやって下さい…。
片付けるの、俺になりそうなんで…。」



レオンハルトは覚悟した。

親父の娯楽に付き合わされてしまう事を。



そもそも親父は何で、こんなへんぴな村で神父なんかやってんだよ。

いつからだ?

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