前世女子高生の私は今、悪役令嬢を経て月の女神と呼ばれてますけどムカついたヤツはぶん殴る肉体派ですわ!

DAKUNちょめ

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第一章•帝国編

13話◆本音は、どんな姿でも愛し合いたい。先代レオンハルト皇帝の妻に。

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ロージアのもとから離れたディアーナとオフィーリアは、村から離れた湖の畔に来ていた。


空に在る月と、大きな水面に映る月と2つの月明かりが目映い。


「…落ち着いた?レオン」


ディアーナは湖に足を浸して爪先で水を蹴って遊びながら、隣に居るオフィーリアの顔を覗きこむ。


「ダメ、心臓が破裂しそう。怒りに身を任せて暴れたい。」


「レオンが本気で暴れたら、国どころか世界が終わるからやめなさいね。」



ディアーナは苦笑しながらオフィーリアに寄り掛かる。


「…嫉妬…してくれたのかしら?だとしたら、嬉しいわ…」


「嫉妬しないワケが無いだろ!?
本当は…指一本、髪の毛一本だって触れて欲しくないし、誰にもディアーナを見せたくない!
俺の…俺だけの…!…………悪い、何でもない…」


独占欲を見せる事が、ディアーナにとって負担になるのじゃないかと、レオンは口に出し掛けた言葉を引っ込めてしまった。


「何を遠慮しているのよ。今さら…馬鹿ね……。
私がレオンだけのものだって言いきる事を、なぜ謝るの?
レオンだって私だけのモノなんでしょう?」


ディアーナは腕をオフィーリアの方にのばし……止まる。


━━━キスしたい!キスされたい!今、私、レオンの唇に飢えてます!でもな!
でもなぁ!オフィーリアだけはなぁ! ━━━



「ディア?」


かつて聖女と呼ばれた、そんな設定のゲームヒロイン。

そして、悪役令嬢だった私の婚約者を奪った設定の少女。



オフィーリアは可愛らしい美少女だ。



個人的に言わせて貰えば、かなり好きなタイプだが…。

でも…女の子とキスぅ?


「ディーア?どぉしたの~?」


顔を覗き込んで来たオフィーリアと目が合い、のばしかけて止まった手に手の平が合わされ、指を絡められる。


あ、コイツ分かってやがる!私が困ってんの!


「意地悪ね!レオンはっ……」



言いかけた言葉を遮るように、ディアーナの唇にオフィーリアの唇が触れる。



柔らかい唇が触れるだけの短いキスを終えると、オフィーリアはレオンハルトに姿を戻し、ディアーナを強く抱き締めた。



「ディアーナが、どんな姿であっても…俺がどんな姿であっても…いつも愛していた。
それこそ、男同士であっても女同士であっても。」


私の数多くある前世の記憶は…私には、あまり無い。

今の私の前の香月の記憶だけは、ある程度鮮明にあるのだが…。


「俺にとっては、どんな姿でもディアーナにかわりはなかった…
でも、記憶を無くしていたディアーナにとっては、そうではない。」


記憶を無くしている間の自分にとって、レオンハルトは全くの他人だ。

愛を囁かれた所で、ただの変な人でしかない。


実際、今の私も侯爵令嬢としてレオンハルトに逢った時は、ただの変態イケメンだと思っていた。


今は愛する変態になったのだが。



「だから…俺にとっては………」


「馬鹿ね!どんな姿をしていたって、今の私にとってはレオンはレオンよ!
た、ただ……キスぅ…とか、は…難しぃ…」


何を言わせてんだ、と頬を膨らませて睨む。


「……ディアーナが騎士団長のオッサンで、俺が少年兵だった時は、さすがに抱く気にはならなかったからな…お互い様かも。」


意地悪そうに微笑むレオンハルトの額に攻撃の意味を込めて軽く頭突きをする。


優しいこの人は、こうやって私を甘やかして逃げ道を作ってくれる。


「ひどっ!結局、レオンも見た目優先しちゃってるじゃないのー…どんな私だったのよ」


互いの額を付き合わせたまま言葉を紡いで語り合う。


「いい人だったよ…強くて…豪快で……
優し過ぎて、部下を見捨てられなかった…。」


レオンハルトは、その騎士団長をやっていた私の死も見ているのだと、改めて知る。


「じゃあ、私がお父様にガサツだと言われるのは、その騎士団長の記憶のせいね…
ふふ…私の中に生きてるんでしょう?その人も…」


「いや、騎士団長がガサツだったのは魂の根源のディアーナのせいだと俺は思っている。」



額を付き合わせたまま笑う。



触れ合えている、言葉を交わせている、それだけで何て幸せなんだろうと二人はそれぞれで感じている。


「レオン…その…………」


ディアーナは、自身を欲深いなと感じつつレオンハルトの目を見詰める。


「なぁに?ディアーナ。」


「……浄化……」


もっともっとレオンハルトと触れ合いたいと、欲は深まるが、いざ言葉にしようとすると恥ずかし過ぎて口に出せない。



「どうしたの?ディアーナ…。」


レオンハルトも、自身を欲深い男だと自覚している。

ディアーナの潤んだ金の瞳と僅かに上気した顔つきに、彼女の求める物が何かを知った上で、その答えを本人の口から言わせたい。


「……浄化…して欲しい…の…でも…翌朝、足腰立つ位で…」


レオンハルトは、真っ赤になりながら頑張っておねだりをした可愛い妻を抱き寄せ、こめかみに口付ける。



「喜んで…俺のディアーナ…でも、加減するのは無理。
転移先は、即ベッドでいい?」



ああ…レオン…………分かっていたわ…つか、



だろうね!!加減して、は無理なお願いだったね!


ああ、明日の朝の私は、生ける屍状態です。







「陛下!た、大変です!ぎょ、玉座に…!」


眠れぬ夜を過ごしたロージアは王城の自室、かつてはレオンハルト皇帝の部屋であった、広い部屋の窓際に立っていた。


目の回りを赤く泣き腫らした顔でゆっくりとドアの方に目をやり、飛び込んで来た者を睨む。


「何なの…朝っぱらから…玉座に何があったと……」


飛び込んで来た者は先日怒りに任せて肉片に変えた司祭とは別の司祭、新しく教皇の従者になった者だ。


その司祭が、あからさまに機嫌のよろしくないロージア新皇帝に対して言い澱む。


「そ…それが…先代皇帝が…」



「兄上が…?」


ロージアはピクリと眉を寄せて怪訝そうな顔をすると、皇帝のマントを羽織り玉座に向かった。


「罪人が、どんな顔をして玉座に居るの!
さっさと捕らえて殺せよ!そんなの!」


「そ、それが…!」


司祭が説明をしきれない内にロージア達は数人の近衛兵を従え玉座の間に到着する。

大きな扉を開き、正面にある玉座に皆の視線が集まる。


玉座には、眩い金色の髪に翡翠の瞳の美しい男が腰掛けており、男の手は玉座の肘掛けに腰掛けている聖女ディアナンネを彷彿させる美しい女性の腰を抱いていた。


「ディアーナ!!!」


反射的にディアーナに駆け寄ろうとしたロージアを、司祭や近衛兵が身体を押さえて止めた。



「陛下!近付いてはなりません!」

「馬鹿っ!離せ!離せよ!ディアーナがっ…!」


司祭や近衛兵を振りほどこうとするロージアを無視して、皇帝の座に座るアゴの割れていないレオンハルトが口を開く。


「弟よ、すまなかった。
今までの俺は、何とひどい皇帝だったのだろうか。
だから俺は、ディアナンネの御子である弟のお前に皇帝の座を譲って退位するつもりだ。」


「はぁ?お前、誰だよ。兄上ではないじゃないか。
何処の馬の骨かも分からないお前が…なんで…なんで!
なんで、僕のディアーナの腰を抱いてるのさ!!」


レオンハルト皇帝を名乗る、見知らぬ男の手がディアーナの腰を抱いているのを目にしたロージアが怒気を上げ、黒い霧がロージアの足元から出掛かる。



「あらあら皆さまの見ている前で、そんなオイタはしちゃ駄目でしょう?悪い噂が立ちますわよ?」



ロージアの足元から立ち上ぼりかけた黒い霧が、突如現れた光の粒子にパシン!と散らされ一瞬で消えた。

ロージアが驚きの顔を見せる。



「お兄様である、先代レオンハルト皇帝の手を煩わせては駄目でしょう?」


ディアーナは微笑し、首を傾げる。


ロージアと共に玉座の間に来た司祭や近衛兵は何が起こったのか理解していない。


そんな彼等には、ロージアの見知らぬ金色の髪に翡翠の瞳のこの男が先代レオンハルト皇帝に見えているのだと気付いた。


「幻覚魔法…?いや、兄上には魔法なんて使えなかった…」


呟いたロージアのこめかみを冷や汗が伝う。

断頭台から先代皇帝を拐った男とは別の大きな存在感。



━━お前達は何者なんだ━━



「ロージア様…わたくし、レオンハルト様の妻となりますの。
ですからロージア様は、わたくしの義弟となりますわね。」


ディアーナの突然の告白に顔面蒼白になったロージアは首を左右に振る。


「何を言ってるの!だ…駄目だよ…!
駄目だよディアーナ、ディアーナは騙されている!
そいつは兄上ではないよ!
兄上を拐ったヤツの仲間かも知れない!人間じゃな……!」


ディアーナは肘掛けから下りると玉座の隣に立ち、レオンハルトの首に腕を回して抱き付いて頬に口付ける。

それからゆっくりとロージアの方に目を向け、口元に笑みを浮かべた。


「それは、レオンハルト皇帝をいわれの無い処刑から救った人の仲間だという意味?」


「…!そ、それは……」


思わず言葉を詰まらせたロージアを助けるようにレオンハルトが口添える。


「ディアーナ、可愛い弟をいじめないでやってくれ、弟はこの国を俺から守ろうとした英雄なのだ。
…だから俺は弟に皇帝の座を譲って隠居し、君を妻にして余生を楽しむつもりだ。」



「ディアーナを妻に!?そんなこと許さない!
その男を捕らえよ!!兄上の名を騙る賊からディアーナ嬢を守れ!」



ロージア皇帝から命令されたものの、近衛兵の目には先代レオンハルト皇帝にしか見えない男を捕らえる事に抵抗があるのか即座に動けない。



「ロージア様、わたくし義理の姉として貴方がバクスガハーツ帝国を立派に治めるのを期待しておりますわよ?
レオンハルト様、行きましょう?」


レオンハルトは頷き、ディアーナを抱き上げる。


「ディアーナ!駄目だ!そんなヤツと行っちゃ駄目だ!」


「うるさいぞ、クソガキ。
弟は黙って兄貴の治めていた国の残りカスでもしゃぶってろ。」


ロージアの言葉を遮ったレオンハルトは抱き上げたディアーナにキスをする。

見せつけるような口付けを済ませた後にレオンハルトは笑い、そのまま姿を消した。


「クソガキ…!?その言葉…昨夜聞いた…!!リリー…?!
お前、リリーか!!
許さない…絶対許さない!僕の残りカスのクセに!」


怒りに震えるロージア皇帝を遠巻きに見ていた近衛兵達は、後から部屋に来た教皇に促されるように部屋から出て行かされた。


「ロージア皇帝陛下…ディアーナ嬢は、あの賊に洗脳されているやも知れません。
…ディアナンネ様と同じお姿を持つ、美しい方です。
あの方には、ロージア様のような美しく強い方が側で支えてあげねば……
その為に、ロージア様もディアーナ嬢を洗脳するべきだと…。
あくまで、救う為の…です。」


「そうだね……賊の洗脳が解けたら、元のディアーナに戻せばいいのだから……僕が彼女を洗脳するのは…救いだよね。」



教皇の言葉に答えながらも、

ロージアの目には何も映って無かった。

愛するディアーナが見知らぬ男と口付けをする姿を見た。

その男の正体がリリーかも知れない。



怒りと嫉妬は沸点を越え過ぎて、今、凪いでいる。



ただ静かに凪いだ水面の下では、今にも爆発しそうな程の憎しみと破壊衝動が燻っていた。



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