前世女子高生の私は今、悪役令嬢を経て月の女神と呼ばれてますけどムカついたヤツはぶん殴る肉体派ですわ!

DAKUNちょめ

文字の大きさ
17 / 52
第一章•帝国編

16話◆初めての口づけ。花嫁と…。

しおりを挟む
バクスガハーツ帝国にある大教会、礼拝堂に続く長い廊下を教皇は司祭を従えて歩いていた。


「今、私の中にはリリーが居る…。
ふふ、まだ食べはしませんよ…愛を語らい、それからです。」


「教皇様、ひとつお尋ねしたいのですが…聖女ディアナンネを造る事に意味はあるんですか?
ロージア様が皇帝になられたら、それだけでも人間の心を掌握出来そうな気がするのですが。」


新しい司祭が疑問を口にすると、教皇は笑って答える。


「偶像崇拝とでもいいますか……元々この国の人間はディアナンネとかいう居もしない聖女を崇めていたんですよ。
それが人の姿を持って現れて、目の前に居る。
しかもディアナンネの御子である皇帝の妻として。
…強い信仰心を盲信にまで変えれば、ロージア様はそれを生命力として吸い上げる事が出来るんですよ。」


「はぁ…?」


「人間どもが、あのディアーナとかいう娘を命を捧げるほどに崇めれば、ロージア様はそいつらの命を吸い上げて、自身の力に変えられる。
ロージア様はね、この国の人間の命を全て吸い上げるつもりなんですよ。
だからあの娘は、手っ取り早く命を集める為の偶像ですね。」


「何となく分かりましたが…そもそも、聖女ディアナンネなんて本当に居たのですかね…この国の人間は居たと信じているみたいですが…。」


「ふふ、私は200年、この国で生きて来ましたがディアナンネの元は、聖女なんて立派なもんじゃありませんでしたよ。
…私が見たのは、ただの強い人間の少女です。
名前は、そう…ディアーナ………」


教皇の足が止まる。


魔物として生まれたばかりの自分がまだ小さな黒いチリのような物だった時、たまたま目にした光景を僅かに思い出した。


あの時、暴れ回って兵士を倒していった少女は、確かディアーナという名前だった。


だが、強くはあったが魔力もない人間の少女だったはず。


「……気のせいですね、そもそも人間が200年近く生きているはずがない。」


教皇は頭を左右に緩く振って再び歩き始めた。










ロージアはベッドに横たわるディアーナの側にずっと居た。

もう、一時も離れたく無いと寄り添うように隣に居続ける。


だが、ディアーナを手に入れた安堵感は早くもディアーナの全てを手に入れたワケではないという不安に変わる。


「君の金色の瞳が見たい…その目に僕を映して欲しい…君の口から、僕を愛していると言って欲しい…。」


深い眠りに落ちたディアーナの頬を撫で、ふと気付く。


意識の無い今のディアーナなら、少しは魔法が効くのではないかと。


ロージアはディアーナの頬を撫で魔力を込め命じる。


「ねぇ…目を…開けて…?でも起きちゃ駄目だよ…。」


ディアーナはゆっくりと目を開く。

金色の瞳が現れるが、それは虚ろで何も見てはいなかった。


「……やっぱり、まだ僕のディアーナじゃない……」


悲しく、苦しい気持ちのままでディアーナを抱き締める。


「この国は終わるよ…人間は居なくなる。
僕の言う事だけ聞く魔物達の国になるんだ…。
君は、その国の王妃になるんだよ…。
欲しいものは何でもあげる…気に入らない物は何でも消してあげる…。」


ディアーナは返事をしない。


「明日、僕は国民の前で皇帝に即位した事を言うよ…
その時、ディアーナは聖女ディアナンネの生まれ変わりで、僕の妻だと発表する。
…ディアーナは皆の前でこう宣言するんだ…
『わたくしは聖女ディアナンネ、夫のロージアと共にこの国を見守ります』と。」


言霊を吹き込むように、ディアーナの唇に自分の唇を合わせる。

唇を合わせるだけのはずが、込み上げる衝動が押さえきれず、ロージアはディアーナに深い口付けをする。


何の抵抗もされずに終えた初めての口付けにロージアの顔が歪む。


「こんなんじゃない…こんな口付けがしたいんじゃない…」


しかも………何で……?





初めての愛するディアーナとの口付けが……



まずい茶の味がするって……。











「何だ、このガラスの屑は……」


レオンハルト先代皇帝の手の平にジャンセンが乗せたガラス屑が、手の平からザラザラとこぼれ落ちた。
こぼれ落ちた小さな粒は床の上で跳ねてレオンハルト皇帝の足元で躍る。


いつまでも動きが止まらないまま跳ねて躍るガラスの粒から、半透明の少女達がたくさん現れた。


「!!君たちは……」


レオンハルト先代皇帝には見覚えがある少女達。


ロージアに囚われていた大教会の地下で、レオンハルト皇帝に纏わりついていたディアナンネのなりそこないにされた少女達。

それ以上に多くの少女達が居るのは、一部だけ使われた者も多く居たのだろう。


『私達が、あなたを守ります』
『あなたを守る事で、私達が救われるのです』
『創造神様が私達の魂を救って下さるために、あなたを守るようにと命じられました』



少女達が小さな光の粒子に変わり、レオンハルト先代皇帝の身体に吸い込まれるように消えて行く神秘的で美しい光景を、その場に居た兵士達が涙を流して見ていた。



「俺は…俺は…!君達を救えなかった!
守れなかった!こんな…俺を守らせるなど……すまん……」



レオンハルト先代皇帝が涙の粒を幾つも床に落として行く。

レオンハルト皇帝の涙が、最後に残ったガラスの粒に乗った。

涙に濡れた粒が皇帝の回りを跳ねてから皇帝の中に吸い込まれた。



「陛下!明日、正午にロージアが皇帝即位と、ディアーナ様を王妃にすると公表すると…!創造神様が!」



テーブルで黙りこんでいたジャンセンが、いきなりペラペラと話し出したので、その場に居た全員の視線が涙目のままジャンセンに集中する。


「…………は?」


「陛下!やっと話すのを許可されました!私です!
ヒューバートにございます!」



「ヒューバートお!?」



ジャンセンにしか見えないその姿で、泣きながらレオンハルト皇帝にすがるように抱き付くヒューバートに複雑な気持ちのレオンハルト先代皇帝は思わず目を逸らす。



何か怖い。とゆーか、拒否反応が…。抱きつかないでくれ…

俺は抱かれていない…抱かれてなどいない…。



「創造神様が、私に言伝てを…
陛下には向かって欲しい場所があると…帝国ではなく…。」



「帝国ではなく!?それではリリーを救いに行けぬではないか!」



ジャンセン姿のヒューバートはホロリと涙をこぼし、何度も頷く。



「創造神様のおっしゃる通り、確かにバカップルですな…ははは。」



またジャンセン(中身はヒューバートだが)にバカップルと言われた。
レオンハルト先代皇帝はイラっとするが、ジャンセンの姿が怖いので言い返せない。


「どんなに中身がクソでも一応、神だからな…
言われた事は聞いておくか……。」



「陛下……創造神様は、私を通して陛下のお言葉を聞いてらっしゃいます……。」



「おまっ……!!何で、そんな恐ろしい事を最初に教えないんだ!!!」



レオンハルト先代皇帝が青ざめた。













翌日

ディアーナは花嫁衣装を身に纏い、ロージアの前に居た。


美しい花嫁姿のディアーナだが、その目は虚ろで何も語らない。


「ねぇディアーナ……君の…意識を戻したら…きっと君は…僕から離れてくんだよね…?」


兄のレオンハルト先代皇帝と、リリーが居なくなればディアーナが自分の物になるかも知れないなんて、なぜ思ったのだろう…。


ロージアは苦しんでいた。


「いっそ、ずっと意識を失ったままで…?
でも僕の好きなディアーナは…こんな…
人形みたいなディアーナじゃないよ…」


ディアーナの足元に崩れるロージアは、膝まずいたままディアーナの花嫁衣装の長い裾を持ち上げ口付ける。


「この衣装も、いつものディアーナに着て欲しかったんだ…
僕を選んで、僕を見て、アイアンクローしてもいいから、僕を好きだと言って欲しかった……」


ディアーナは何も語らない。微動だにせず、まばたきもしない。


「どうしたら…良かったのかなぁ…ディアーナ…」


涙が花嫁衣装の裾を濡らしてゆく。





扉がノックされ、教皇が入って来る。



「これは!なんと美しい花嫁でしょう!
ロージア様に相応しい美しい王妃ですな!」



「………本当に…美しいかな……」



こんな生気の無いディアーナが…。



ロージアはディアーナを伴い、バルコニーに向かう。



こんな国、早く無くなればいい……。



僕も、ディアーナと一緒に消えてもいいや………。



そんな考えを脳裏によぎらせながら。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...