前世女子高生の私は今、悪役令嬢を経て月の女神と呼ばれてますけどムカついたヤツはぶん殴る肉体派ですわ!

DAKUNちょめ

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第二章•魔王編

42話◆魔王の事は今も気に掛けてます。そんな少年、成長中。

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セフィーロ国王が崩御し、側室の娘である第一王女が正室の娘である第二王女クローディアを亡き者にしようとしている。


そんなキナ臭い噂が後を絶たないセフィーロ国のクローディア王女を護衛する事にしたライアンは、王女と護衛のコーラン、二人の旅に同行する事にした。


元々が強い騎士だったコーランだが、クローディア王女を護る際に負傷し剣を握れなくなった。



「右腕の腱を断たれたのだ。もう、剣を握る事は出来ん…。

王女を護るには情けなく助けを求め、声をあげるしか出来なかったのだ。」


自嘲気味に語るコーランに、鬱陶しいなぁと感情を隠さないライアンはコーランの右腕を乱暴に掴むと自分の方に引き寄せた。



「辛気臭いなぁ、治しゃいいんだろ?ほら治った。」



ライアンは引き寄せたコーランの右腕を、手の平で思い切り叩いた。

バチン!!と痛々しい音がする。



「いだーっ!!!こ、小僧!何をする!!」



叩かれた腕にはライアンの指の痕が赤く残り、涙目になったコーランは腱を絶たれた右腕でライアンの胸ぐらを掴んだ。



「コーラン!腕が…!腕が動いているわ!治ったのね…!」



クローディア王女が涙ぐみ、口を両手の平で覆う。

コーランはライアンの胸ぐらから手を離し、自身の右手を見て確認するように何度も握ったり開いたりを繰り返した。


「な、なんと…これは…奇跡か…!?本当に治ったのか…」


「だから治したってば。」


胸ぐらを解放されたライアンは両腕を頭の後ろに回し、ぶっきらぼうに答える。

そんなライアンとは温度差が違い、抱き合って涙を流す二人。


「ライアン君、君は癒しの魔法を使えるのか!?」


「…癒しの?うーん…多分…違う…つか…
癒しの魔法って…どんなん?」


コーランの質問に目が死ぬライアン。

呼吸と同じ感覚で魔法を使えるライアンには、自分が何の魔法を使ってるのか、使えるのかを理解していない。


どうやって息をしているの?と聞かれているのと同じような感覚だ。


コーランは可哀想な子を見るような目でライアンを見た。



「君は…素晴らしい才能を持っているのにな……。」



ライアンが創造神の御子と呼んだ金髪の青年…彼の言った通り、本当にライアンはアホなのだと、コーランが理解した。

だからこそ、彼を上手く利用すれば大きな力となる。

逆に敵の手に渡れば脅威となる。



ディアナンネ国の王子である事を抜きにしても、神の世界に通じ、大きな才能を持つライアンがクローディア王女の夫となり、セフィーロ国の女王となったクローディアを支えてくれたら…


コーランはそう望まずにはいられない。

そして、コーランの目から見てもクローディア王女はライアンに好意を寄せている。



「我々は貴族の令嬢と従者と身を偽って、森の奥を目指していたのだ。
森の奥にある湖の近くに女神が現れたと聞いて、加護を与えて貰いたいとな…。
眉唾ものな話ではあるが、命を狙われ続ける我々には、もうそんな奇跡に頼るしかなかった…」


国から離れ、亡くなった国王やクローディアの母である王妃の知己を尋ねたりしたが、何度も待ち伏せされ命の危機に面した。

何とか難を逃れ、もう行く場所も帰る場所もない二人の耳に入った女神が降臨したとの噂。

案内しましょうと声を掛けてきた御者に案内され、森に来た所で突然襲われた。


「女神が現れたとの噂…
それが御者が王女を刺客どもに売る為についた嘘だったとは…」



「嘘?湖の近くに女神?それ、ディアーナ姉ちゃんの事だろ?逢ったじゃん。
そいで創造神の息子で姉ちゃんのダンナのレオンハルト兄ちゃんが俺を寄越したじゃん。
それ、加護を与えてくれたって事なんじゃないの?」


コーランとクローディア王女が顔を見合せる。

あの御者は噂を利用したが、本当に女神は降臨していたのか…。

あの目の下にクマを作っていた少女が女神だったのか…?と



「では、我々はこの先どこへ向かえば…尋ねた知己の方々は我々とは関わりたくないと…もう尋ねる場所が無いのだ…。」



「セフィーロに戻ればいいじゃん。
そんで女王になればいいじゃん。
そしたら俺もディアーナ姉ちゃん達の所に帰れる」


「さっさと帰らないでよ!」


「帰るよ!さっさと!」



クローディア王女がライアンに食い気味に言う。



「ライアン君、これからは私が前線に立って戦おう。
君のお陰で剣が握れる…君は常に王女の側に居て王女を守ってくれ。」



コーランの提案に目を輝かせる王女と、まったく表情が変わらないライアン。

どちらかと言えばボヘーっとした顔付き。



「なら、セフィーロに向かうんだね?」



「そういう事になるな…だが、セフィーロには王女の味方が少ない…危険も伴う…捕らえられてしまうかも知れない…。」



「大丈夫だって、勿論死なせはしないし、傷一つ付けさせないよ。それ位出来ないと……な。」




ライアンはクローディア王女とコーランと共にセフィーロ国に向かった。



道中、多くの刺客が王女の命を狙って来たが、すべてコーランに倒されてしまった。

コーランが強い騎士だったのは本当の事だったようだ。



コーランは旅の最中にライアンに多少の言葉遣いや、最低限の礼儀作法を教えたりする。

半信半疑であったが人間離れしたライアンが神の御子だと言う青年、レオンハルトが去り際に

「ライアンに一般常識を教えてやってくれ」

と言っていたので、神の御子であるなら彼の言葉には従った方が良いだろうとコーランは考えた。





「あ、スティーヴンさん!お久しぶりです!」


宿を取る為に立ち寄った小さな町の入り口付近で、スティーヴンが手を振っていた。

コーランとクローディア王女は見知らぬ男が現れ警戒したが、ライアンの様子に警戒を解いた。

神の一族に関する者ならば、その心証を悪くしたくはない。



「ライアン君、久しぶり。
あれから…一年近くになるのかな?
以前逢った時より何だか立派になったね。」



スティーヴンに誉められ、照れ臭そうに笑うライアンはボソッと小さな声でスティーヴンに尋ねる。



「ありがとうございます。
その…ロージア…様は、お元気ですか…?」



思わぬ質問とライアンの尋ね方に、スティーヴンは驚きの表情をし、すぐに微笑んだ。



「ええ、お元気だと思います。
今はレオンハルト様とディアーナ様、お二人と共に旅をしていらっしゃいますよ。
…でも、私が今日あなたに会いに来たのは、あなたが向かうセフィーロについてです。
……さすがにもう、いきなり第一王女を斬り捨てようなんて思ってませんよね?」



「ええ、まぁ…さすがに今は…。俺が犯罪者になるワケには…」



そういやぁ最初はそう思っていたなと、ライアンはばつの悪い顔をして苦笑する。



「私からは答えを与えられませんが、よく…見て下さいね?
国を、人を、よく見て下さい。」



スティーヴンは自身を神の世界の従者だとコーラン達に告げ、その場から消えた。



その日から数ヵ月のちにセフィーロに到着したライアン達は王城から離れた場所に宿を取り、ライアンは宿の部屋に敵意のある者だけを排除する結界を張ると、王女とコーランを宿に残して一人城に忍び込み諜報活動を行った。



そしてセフィーロ国にとっての運命の日。



多くの者の見ている中、ライアンによって第一王女が斬り倒された。
第一王女の母である先代国王の側妃が娘の死に絶叫する中で、第一王女を国王にと支持していた宰相、城に居た貴族などの何人かがその場でライアンの剣を受け絶命した。



「クローディア王女が正式な王位継承者だ!俺が支持する!
神の御子レオンハルトと月の女神ディアーナの名のもとに!」


神の名を口にしたライアンの人間離れした強さと美しい見た目から、ライアンまでもが神の一族と思われたのかライアンの言葉に異を唱える者は居なかった。

セフィーロ国内で力と発言力を持っていた宰相に怯えて逆らえなかった者達の中には、クローディアを女王にと望む者が多く、正式な王位継承者であり神の一族の後押しがあるクローディア王女は皆から国王にと推挙され、クローディアはセフィーロ国の女王となる事が決まった。







「お姉様…!」

「クローディア!」

王城の中、クローディアの私室にて姉妹が抱き合う。



「ありがとうクローディア…!
私これでやっと…自由の身になれたのね!」



第一王女のフレイアは、側室であった母と、母の支持者だった宰相によって女王に祀り上げられそうだった。

彼女には相思相愛の想い人がおり、その人と添い遂げたいと何度も言ったのだが聞き入れて貰えず

女王になった暁には宰相の息子を夫にするよう段取りが組まれていた。





ライアンが城に忍び込んだあの日、第一王女と若い近衛兵が心中を図ろうとしていた。



「あなたが第一王女のフレイア様?
…何だ、全然黒いモヤが無いじゃん!
俺にとっては殺す価値が無いな!」



ライアンは二人に提案する。



「国と身分を捨てる覚悟があるなら、二人を新天地に招待するよ?どうする?
君の母上の事は諦めて貰うけど…。」



ライアンは王女の部屋に来る前に、城内の人間を全て見て回り、斬る人間を決めていた。



宰相と、その息子、宰相の息が掛かった者から数人。



人間、多かれ少なかれ負の感情はあるし、黒いモヤが全く無い事は珍しいと最近気付いた。

それも、同じ人物を見ても日によって変わる。



少しずつ観察し、ライアンは自分なりに答えを突き詰めていく。

ライアンが黒いモヤと呼んでいる瘴気は、悲しみや怒りや苛立ちも含め簡単に生まれるが、すぐ霧散する。


ただ、ライアンいわく性根が腐っている人間は、常に口から瘴気を吐き出している。

そして宰相と息子、王女の母と貴族の数人がそんな状態だった。



「国王を殺したのも宰相っぽいな…口から出すモヤの中にチラチラ目ン玉見えるわ。
あれは、その内に魔物を生みそう。
息子も似たり寄ったりだな。
最後に第一王女がどんな奴かを確認して宿に戻るか。」



そして王女の部屋を訪れたライアンは、一年前まで「会ったら即殺っちまお!」と思っていた王女と初めて逢った。

初対面の王女は瘴気を出すどころか、今にも好いた男と死出の旅に出そうな程に心を傷めた普通の少女だった。


そしてライアンは、そんな王女に提案する。


「新天地はディアナンネ、聖女と変態女神が守る国だよ。」



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