前世女子高生の私は今、悪役令嬢を経て月の女神と呼ばれてますけどムカついたヤツはぶん殴る肉体派ですわ!

DAKUNちょめ

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第二章•魔王編

43話◆魔王を生みたくない少年、黒いのはとりあえず倒しとく。

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フレイア王女はライアンの提案に乗った。


もう愛する人と共に命を絶つしかないとまで思い詰めていた王女達には彼が何者であろうと関係無かった。


いきなり私室に現れた本来ならば曲者と呼ぶべき少年の言葉は、それほどまでに魔法のように魅力的だった。


「宰相の息子は…本当に酷い男なんです…
女性に平気で手をあげたり…
あんな男の妻になってしまったら王女は…」


優しそうと言えば聞こえはよいが、気の弱そうな若い近衛兵が涙ぐみながら語る。


「どんな奴かとか、俺には余り関係無いんだよね。
中身腐ってても外面だけは目茶苦茶いい人っているからさ。

で、王女には一回死んで貰うけどいい?」



「「えっ!!」」



ライアンの言葉に王女と近衛兵の青年が驚きの声をあげ、震えて抱き合う。


「し、死ななきゃ…駄目なの?死にたくないわ…」


不安げに尋ねてくる王女にライアンは、あんたら今二人で死のうとしていたじゃんか…と言いたいのを我慢する。


「みんなの目の前で死んで欲しいんだよね。
この世から居なくなれば、後は自由の身でしょ?
だから、みんなの前で刺すから。」


「「刺すから!?」」


王女と青年、再び二人で同時に声をあげる。


「明日、王女は玉座に座って自身が新しい国王になると宣言するって聞いた。
貴族もたくさん集まるんだろ?
俺、その中に居なくなって欲しい奴が何人かいるからさ、王女と一緒に殺していくし。」



「こ、ころ…!?ころ…」



「大丈夫だって!殺すから、一回死んでもらうけど、死なないし!」



意味が分からず混乱した王女は、くらりと目眩がして青年に寄り掛かる。



「………説明すんの、めんどくせぇんだよ…
もう、黙って一回死んで。」



ライアンはふて腐れたように呟くと、その場で王女の部屋にあった便せん一枚を手に取った。

便せんはライアンの手の平で白い蝶に姿を変え、ヒラヒラ飛んで王女の肩に止まった。



「そいつは、俺の手紙。
ディアナンネに行った後にディアナンネの国王に読んでもらって。
…まずは、明日だな。」



半信半疑の王女達だったが、少年を信じるしかないと命運を任せる事にした。




そして運命の日、剣を手に玉座に突然現れたライアンは多くの人の見ている前で、王女の心臓を刺し貫いた。



剣を抜かれた王女の胸から赤い血飛沫が飛ぶ。

血に塗れた王女が倒れた後、あまりにも急な出来事に茫然とする者達の中をライアンが風の様に通り過ぎた刹那、王女と同じように宰相を始め宰相の息子、貴族の何人かがライアンに心臓を貫かれ事切れていた。



王女の母が娘の死に悲鳴をあげ、それまで茫然としていた者達が我に返ると時が止まったかのように静かだった玉座の間が騒々しくなる。


王女の遺体だけが、その場から運び出されたが、神の名を出しクローディアを国王に推すと言ったライアンの発言等により、沸いた貴族達の誰もが第一王女の事を忘れてしまっていた。





「…確かに刺されたのに…生きているなんて不思議だわ…。」


フレイアは自身の胸を撫でる。

フレイアの着ているドレスの胸には穴が開き、大輪の薔薇のように血で赤く染まっている。



「刺した後剣を抜く時に同時に切断された部分を元に戻していったからね。」



クローディアの私室に居たコーランはライアンの話を聞きながら考える。


ライアンは回復魔法というものを良く分かっていない。

ただ、コーランの傷を治した事と今回の貫いた王女の心臓が無事である事を考えると…



「ライアン君、「君は元に戻す」魔法を使えるのではないか?回復と言うよりは…これは何だろう…以前の状態に戻す…
時間を操るのか?」



「え?知らない。
毎回使う魔法の種類がナニ魔法とか考えた事無いし。」



ライアンのあっけらかんとした返事に、コーランががっくり項垂れる。



「じゃ、フレイア王女……でないんだね、フレイアさんと彼氏さんをディアナンネに送るよ?」



「送るって…ディアナンネは遠い国だと聞きましたわ…どうやって…?
馬車にしろ馬にしろ、わたくしが今、城から出る所を誰かに見られたら…」



フレイアは心配そうに呟いて、恋人である近衛兵の青年に身を寄せる。



「こうやって。」



ライアンはフレイア王女と近衛兵の青年、そしてなぜかクローディアとコーランも巻き添えにしてディアナンネの王城、玉座の間にいきなり転移した。








「…この…この…この!!アホ息子!!!
いきなりわいて出て来るな!!!」



ディアナンネの王城、玉座の間は今、収穫したブドウが山の様に積まれていた。

そのブドウの山の上に、ライアン含め五人は唐突に現れた。



潰されたブドウの、甘い良い香りが部屋中に充満する。



「いや、父上…何でブドウをこんな所に置いてるんだよ。
…あ、そんな事より、俺、もう行くから!
そこの二人だけ置いてくから、この国で保護してやって。」



「待てぇい!いきなり現れて、なんの説明も無しにどこの誰かも知らぬ男女を保護しろだと!?ふざけるな!」



「それ、俺が殺したセフィーロの王女様!死んだ事になってるからよろしく!」



「よろしくじゃないだろ!阿呆が!セフィーロだと!?
今、跡目争いで騒がしい国じゃないか!
何で王女殺してんだぁ!馬鹿あ!」



コーランは互いに捲し立てるように言い争うライアンと、父上と呼ばれるディアナンネ国王の顔をじっと見る。



セフィーロからは遠く離れた軍事大国バクスガハーツ帝国は、戦争を続け血を流し過ぎた為に魔界に堕ち、国は魔王により滅亡させられたと聞いた。


国は滅亡したが皇帝は国から脱出し、新しい国を興したと聞いてはいた。



戦場を駆ける姿は鬼神のようだと言われ、暴君と呼ばれた皇帝レオンハルト……だろうか?これが……

ブドウまみれで甘ったるい香りに包まれているが。



コーランは一歩前に踏み出て、片膝をついて頭を下げる。



「ディアナンネ国王陛下…私はセフィーロ国の一兵士です…。」



コーランはレオンハルト国王に、ライアンとの出会いからこんにちに至るまでを順を追って説明していった。

その話の中で、金髪の青年と藍色の髪の少女の存在が語られると、レオンハルト国王は両手で顔を覆い、諦めたかのように何度も頷いた。



「ハイハイハイ、もういい、分かった。
奴らの親分が出る前にゴネるのやめる。
保護でも何でもしてやるわ。」



コーランは「親分とは?」と聞きたい衝動にかられたが、何だか聞いたら恐ろしい事が起こりそうな気がして我慢をした。



「ディアナンネ国王陛下…ライアン君…いや、殿下は…」



「ライアンは殿下ではない。ただのライアンで結構。
そやつはもう王太子でも王子でもない。
我が国の第一王子は、生まれたばかりのジュリアスだからな。
それより収穫と仕分けとで忙しいんだ、早くライアンを連れて帰ってくれ。」



レオンハルト国王は手の甲を何度も外側に向け振りながら、シッシッと追い払う言葉を発する。



「それじゃ、父上!母上にもよろしく!
フレイアさんと彼氏頼んだよ!」



「さっさと行け!」



ライアンは笑いながらクローディアとコーランを連れ、姿を消した。


玉座の間に残されたフレイア王女と近衛兵の青年は、どうして良いか分からず固まっている。


「おお、すまん!二人にはちゃんと家と仕事を与えよう。
国王の私でさえ農夫をする国だ、君たちにも国の為に働いて貰う。
だが、この国に居れば食うには困らないし、自由な国だ。
…そうだな…まずは私と食事をしながら、君らの国の事を教えてくれないか?この先の為に。」



レオンハルト国王は、王女達に微笑んだ。


優しい笑顔に隠された鋭い眼差しは、セフィーロという国を推し測る情報を得ようとしていた。



━━おそらく、一緒に来た少女がセフィーロの次の国王となるのだろう…あの少女のライアンを見る瞳…まさに恋をする少女の目だった。

もし、ライアンがセフィーロ国王の夫となるならば、遠くの国ではあるが良い国交を結ぶ手段になる。━━



そう考えたレオンハルト国王の肩に、白い蝶がフワリと止まる。



「ん?これは…手紙か?」



肩に止まった蝶に手が触れた瞬間、蝶は一枚の便せんに姿を変えた。
中を見たレオンハルト国王の顔が、あからさまにイラッとした表情になった。



「……………ああ!そうかい!!」



レオンハルト国王はライアンの手紙をグシャグシャと丸めて床に思い切り叩き付けた。



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