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第一章

4―俺の一番最初の『元の世界』

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「服、買って来たよ!ズボンとシャツと…マントとブーツと…」

助けた少年にお使いを頼み、買って来てくれた服をざっと見たが田舎の店だからだろうか、誰かのお下がりの様な古着ばかりだった。
日本に居た頃に見たリサイクルショップの服とは全く違う。
白シャツのハズが所々黄ばんでいるとか。
洗濯もせずに売り出してんのか?
脇の辺りが薄茶色とか、ワキガが伝染りそうで何かヤダ。

この時代のこーゆー寂れた村は物資が豊富じゃないだろうから使い回しも当然かも知れない。
ゲームの中でも普通に装備品売ったり買ったりしていたからな。
使い回しも普通かも知れない。

何処かの誰かさんのワキガが伝染らない事を祈りつつ、俺の虫汁まみれの制服が洗って乾くまで、これで我慢しよう。

宿の中に入り、着替える為に案内された二階の部屋に向かう。
村に入った時から俺を値踏みするような村の住人の視線に晒されていたが、宿の中でも他の宿泊客の視線が俺に集まる。

欧米人に近い顔の作りをしている、この辺りの住人には、東洋系の俺の顔つきは珍しいのかも知れない。
だからと言って、ジロジロ見られて気分が良い訳は無い。


見られている事に気付いた上で、気付かないフリをした。
黙って部屋に入り、虫汁まみれの制服を脱ぐ。
完全に制服に染み込んでしまい汁の色は見えないが、生臭い汁のニオイが吐き気を催す。

「オエッ………」

少年が買って来てくれた服に袖を通すが、これまた何だかカビ臭い。
これホントに売り物か?

「オエッ………」

着替えても着替えなくてもどちらにしろ臭いって何だ。

着替え終わり、ベッドに腰掛けた俺は足元に寝る狼姿のハティに訊ねてみた。

「おい、ハティ。お前さっき俺を笑ったろ?
何が可笑しかった?」

狼姿のハティは前脚の上に乗せた顔を上げると、牙を見せニイと笑った。

「テイトは獣人を人間扱いしていない、この国をヒドイ場所だと思った。
テイトが元々居た場所には獣人が居ないが居たら仲良くしているなんて保証はない。
テイトの価値観はテイトのものでしかない。
この世界や国が胸くそ悪いのではなく、テイトがこの世界を気に入らないだけだ。」

……だから、結局、何が言いたいんだ。ハティは。

「したいようにすればいい。
この世界を、テイトから見て胸くそ悪くない世界にするなり……」

「ああ、俺の気分が悪く無くなる価値観をゴリ押ししろってか?
そんな面倒くさい事したくないんだけど。」

言ってしまえば、この世界を俺の好みに変えろと?
世界征服か?
そんな大掛かりな事をするつもりは無い。
どれほど広い世界なのかも知らずに、そんな事を出来る気もしない。

まぁ、いい。
今は飯を食わせて貰って、この国についての情報を手にしよう。

俺はハティを連れて部屋を出た。
階段を降りた先は一階の食堂となっており、すぐに食事をする事にした。

「汚れた服の洗濯を頼みたい。それから食事を。」

テーブルの上に硬貨を置き、助けた少年の母親に汚れた制服を預けた。

「ハイよ!美味いモン出してあげるよ!なんたって息子の命の恩人だからね!」

少年の母親である宿屋の女将は、客商売向きの愛想の良い女性だ。
獣人の少年を鎖でぶつ姿を見なければ、俺も彼女をここまで警戒しなかったろう。

俺は何なら少し間の抜けた位に警戒心の薄ーい旅人を演じる事にした。
女将が俺を見る目が、俺が村に来たばかりの頃と違う事に気付いた。
俺の何が、彼女にそんな目をさせたのかな。



━━いい獲物見つけましたみたいなさ。







宿から少し離れた裏手の方に、小さな小屋がある。

黒髪のメイド姿のスコルは、その小屋の前に降り立つと、ノックもせずに鍵の掛かった小屋の中に入って行った。

「おいオマエ。生きてるか?」

「…………誰?」

小屋の中には首輪の鎖を壁に繋がれた獣人の少年が居た。
折檻を受けた後とは言え、あまりにグッタリと脱力している少年の顔を、膝に手を当て身を屈めたスコルが覗き込む。

「テイトが、お前の事が気になるから見て来いとボクに言った。
だから見に来た。
お前、もう奴隷じゃないな。」

「うん…。歩くのが遅くなったから要らないって……
次を買うって…だから…その前に……。」

スコルは少年に顔を近付け、少年の両頬に手を当てると金色の眼で少年の目を覗き込んだ。
スコルの整った美しい顔が少年の顔の間近に来る。
生まれた瞬間から奴隷として生きる人生しか歩めなかった少年は、このように吐息が掛かる程の距離で他人に触れられる経験が無い。
初めての経験に動悸が激しくなり、少年は戸惑いがちに頬を染めた。

「その前に何だ。」

「き、君、こんな所に居るのが誰かに見られたら………
グホッ!!君も…!!ガハッ!」


獣人の少年の口の中から、黒羽の大量の蜂が飛び出して来た。
小屋の中は話し声も聞こえなくなるほどのつんざく様な蜂の羽音と
共に、視界も悪くなる量の蜂に埋め尽くされる。


ワンワンと耳を掠める蜂の群れに、スコルが呟いた。


「うるさい。」


スコルが一言発すると同時に、小屋の中の蜂がボタボタと全て床に落ちた。
大量の蜂に一瞬失われた視界が開けると床は蜂の死骸で真っ黒になっており、獣人の少年の前に居た黒髪の少女は居なくなっていた。
少女に代わって、その場に居たのは金の眼を持つ巨大で真っ黒な狼が一頭。
黒狼は獣人の少年の方に巨大な鼻先を向け、フンフンと少年の匂いを嗅ぐ。


「小僧。蜂が寄生する為の生き餌にされた様だな。
臓腑の中から甘ったるいニオイがする。」


「……君は……獣人?……そんな……魔族は魔の力を奪われてから、魔法はおろか、変身だって出来なくなったハズなのに……」


小屋の屋根まで頭が付きそうな巨大な黒狼になったスコルを見上げた少年が、涙をこぼした。


「いいな……僕も本当の自分の姿になりたい……
そうしたら、何処か遠くに行って…こんな村から逃げて奴隷なんてやめて………


こんな村の連中、食い殺してやるのに……。」


幼子のように泣きじゃくる少年が吐露した本心に、スコルが楽しそうに金の目を細めた。








「アンタが来てくれて、ちょうど良かったよ。
前のは黒羽蜂の蜂蜜を採るため使ってしまったからね。
新しいのを買わなきゃと思っていたんだ。
買わずに済んで得したよ。奴隷も安くないからね。」


帝斗は食事の途中でテーブルに突っ伏した状態で眠りに落ちていた。
右腕はダラリとテーブルの下に下がり、その真下の床にフォークが落ちている。
ハティも帝斗の足元で床に倒れるように眠ってしまっていた。


「人以外の人型は全て魔族。ゆえに魔族に慈悲は無用。
誰もが知ってる魔族の定義。
この道理を知らないなんて奴は、他所から来た魔族でしかないんだよ。」


宿の女将は鎖のついた鉄製の首輪を持って来た。
テーブルに突っ伏して眠っている帝斗の首に開いた鉄の輪を掛け、カチャンと合わせて締めると強く鎖を引っ張った。


「さぁ!来な!!」


ガチャン


帝斗の首に嵌められた鉄製の首輪が、輪のまま床に音を立てて落ちた。


「!?な、何が起きたんだい!?確かに首に嵌めて……!」


宿の女将は落ちた首輪を拾い、締めた輪が開いたのではと確認する。輪は完全に締まった輪の状態で女将の手にあった。


「悪いな。俺は自分がこれは物理攻撃だと認識した事を『無かった事』に出来るんだ。
どーゆー理屈か俺にも分からんが。」


帝斗はテーブル端に背を預け、椅子に座ったまま女将の方を見た。


「そうか。助けたアンタのガキの説明を、俺がほうほうと聞いていたから俺がこの世界の人間じゃないと知った。
これは俺が間抜けだったな。教えてくれてありがとう。」


「な…なんだいアンタは!!」


帝斗の足元では狼姿のハティが身を起こし、混乱中の女将を笑うようにクァとあくびをする。


「この村は、召喚儀式の神殿とそう離れて無い。
今までにも何人か異世界から来て勇者になれなかった奴が神殿から追い払われているだろう。
追手から上手く逃げおおせた落第勇者を奴隷にした事もあるんだろ?」


「異世界から来た奴らなんて、魔族も同然さ!!奴隷にして何が悪い!!」


女将が手にした首輪の鎖を束ねて手に持ち、帝斗に打ち付けようと振りかぶった。


「いや。別にまったく悪く無い。
俺が気に喰わないだけだな。それと………」


目の前の居た女将が、吹っ飛ぶ様に横に飛んで俺の目の前から消えた。
俺は女将の方に視線を向けずに言葉の続きを呟く。


「俺よりもその境遇を気に喰わない奴がいた。そんだけだな。」


俺の座る椅子の横の方から、骨が噛み砕かれる音と女の断末魔の悲鳴が聞こえる。
やがてビチャビチャと床に濡れた物が落ちる音と咀嚼音が聞こえた。

俺は視線を移す事も無く、椅子に座ったままテーブルに置かれた水を飲む。
ほんのりと、蜂蜜の甘い香りが漂う。


「テイト、それ睡眠薬か何か入ってる。」

足元の銀狼、ハティが言った。

「知ってる。だが、この程度じゃ効かないからな。」

咀嚼音が途切れヒタヒタと歩く音がすると、その音のヌシが俺の目の前に来た。
一見すると虎の様な姿の巨大な野獣は、口から血を滴らせながら椅子に座る俺を見下ろしていた。
その眼光は白濁しており、ほぼ正気を失い掛けているようだ。

「少年、奪われた力を取り戻し自我を解放して満足か?
いや…もう、思考する力も残ってないか……。」

足元に、黒い小さな粒がたくさん落ちている。
野獣の身体を突き破って中から羽化した蜂が大量に死んでいた。
小さな少年の身体のままであれば、この蜂達は薄い皮肉を破って元気に飛び回っていたのかも知れない。
ぶ厚い獣の肉を食い破って外気に触れた瞬間、息絶えた様だ。


「テイト、もう村には誰も残ってない。アレが全部喰った様だ。」

「全部か……小さな子どもも全部か。
スコル、お前は喰ってないだろうな。」

不意に俺の前に現れた、黒髪の美少女姿のスコルに訊ねてみた。

「ボクはアイツに魔力を分けてやっただけ。食べてはいない。
スコルはテイトが食べたい。」

「そんな報告はいらん。……そうか、小さな子どもも……」

獣人の少年の境遇は、俺の居た世界の倫理観に当て嵌めれば残酷なんだろう。だからといって報復が許されるわけではない。
罪もない小さな子どもが犠牲になった事も残酷な話しになるのだろうが、少年がそこに慈悲を見せるわけもなく。

「まぁ、生かされた所で他の魔物の餌になるのがオチだからな。
俺の頭にある倫理観や価値観なんて、この世界には通じないみたいだし。」

この世界では、これが普通なんだろう。

そもそも息子の命の恩人を奴隷にしようとか。
命の恩人より、魔族である事。魔族ならば奴隷にして良い。
そっちに考えが行くんだものな。

「まぁ俺にとっても良い人ではなかったから情がわかなかったし。やりやすいから良しとするか。
だがな少年、俺はお前にはほんの少しだけ情がわいてる。」

俺は親指を立て人差し指を伸ばし、銃の形を作った手で野獣を撃つマネをした。

「だから虫なんかに脳を食い破られてミジメに息絶える前に、俺がお前を逝かせてやるよ。」

銃の形を作った手に、実物の銃が現れる。
この世界では存在しない異形の武器。

「S&W M29。弾は44マグナム。
これならお前の巨体でも、それなりにダメージを与えてくれるだろう。多分。」

俺は銃を握った右手首の上に、拳を握った左手首を乗せ野獣の顔を狙い、銃を撃った。
ガパァと大きく開いた口に向け撃った弾は野獣の口の内側を削ぎ、喉を貫通した様だが、野獣はその程度では倒れなかった。

俺はそのまま弾を撃ち続ける。
野獣の肉片が削がれて飛び、床にビチャビチャと落ちて行く。

全弾撃ち尽くした時には、野獣は俺の右腕の肩から先を飲み込む様にバックリと口に咥えこんでいた。

「少年。最期の力を振り絞って俺の腕を食い千切るつもりか?
残念だが…少年の攻撃力では俺の物理無効化を覆す事は出来ないみたいだ。それと………
実は銃の弾も無限なんだ。」

野獣の口の中に右腕を咥えこまれたまま俺は銃を発砲した。
野獣の喉から頭にかけ大きな穴が開き、野獣は口を開いて俺の腕を解放した。


「グゥウ……」


野獣は断末魔の雄叫びをあげる事も無く小さく唸り、ズシンと宿を揺らす程の振動を与え床に倒れた。
虎にも熊にも見える巨大な野獣は全身から血を流し、そのまま息絶えていた。


「……やっぱ胸クソ悪い場所だ。ここは。
こんな世界に生まれた少年には同情するが…いきなりこんな世界に飛ばされた俺も誰かに同情されたいよな。
何しろ奴隷にされる所だったんだ。」


野獣の死体を背に、俺はハティを従えて宿屋の外に出た。
宿屋に来るまで、野獣が暴れた後の凄惨な光景が村のそこかしこに見られる。
血や肉片が地面に落ちており、人の形を成すものが見当たらない。
たった数時間で、この村は壊滅してしまった様だ。

「こんだけ大騒ぎしといて…女将、何で気付かなかったんだかな。新しい奴隷の俺に夢中?」


「テイト。蜂の巣持って来た。あのコの心臓の横にあった。」


スコルが自慢げにバスケットボール大の血みどろの蜂の巣を見せに来た。
野獣の死体からほじくり返して来たと。


「何でそんなもの持って来ちゃうの。スコルさん。」


「これ、人の身体に寄生させて作る蜂蜜。そう簡単には作れない。
かなり高価なモノ。テイトは旅をするのに金が要る。」


確かにそうだけど……だから、売っ払うつもりで気の毒な少年の死体をほじくって持って来たと。
何だか気の毒な少年が、更に気の毒に思えて来た。
彼の人生が余りにも良いトコ無し過ぎて。
運命の神ってのは残酷だよな。


「人の人生を憂いている暇なんか無いよな。
俺だって、どんだけ振り回されてんだって話しだからな。」


俺だって今まで何度も死を覚悟した。
その都度、強く『元の世界に戻りたい』そう願い、運良く生き残って来たんだ。
こんにちの俺は、俺が抗う事を諦めなかったから在る。


ただの高校生だった俺は……
いや、俺達は……

ある日いきなり、運命の神とやらに捕まったのだ。







あの日━━

放課後の教室には、俺を含めて26人のクラスメートが居た。

校舎内にはほぼ人が残っておらず、今思えば教師も居ない教室に俺達はなぜ集まっていたのだろう。

担任が来るのを待ち、教室で好き勝手に時間を潰していた俺達の身に、いきなりそれは起きてしまった。


━━━━ヴォォン━━━━キィィン━━━━


耳をつんざく嫌な音がした。
その後に教室の床が渦を巻く様に揺れるような気味の悪い感触が足の裏に伝わる。

教室に居るみんなが耳を塞ぎ、机に突っ伏したり、友人同士で身を寄せ合っていた。
足の裏に伝わる気持ち悪さからか、机の上に乗っている者も居た。

「帝斗!大丈夫!?」

「葵!お前こそ大丈夫なのか?」

俺は音と揺れが収まったと同時に、クラスメートでもあり幼なじみの葵の元に駆け寄った。

「私は大丈夫。それより帝斗、窓の外見て。」

葵に促され、教室の窓の方に目を向けた。
先程まで窓の外は夕暮れの朱色の空だった。
それが渦を巻いた様な空模様を描いた緑色の空になっていた。

こんな毒々しい緑色の空なんて……その時、初めて見た。

空を見上げて言葉を失っている俺に続くように、教室の皆が同じように空を見上げて言葉を失ったが、女子が一人悲鳴を上げた。

「キャァァ!!な、なに!何なの!ここドコよ!!」

どこって…学校だろ?そう思いながら窓に近付いた俺は、外を見た瞬間血の気が引いた。
俺に続き、他のクラスメートも窓の外に目をやって言葉を失う者、気を失いかける者、半狂乱になる者、様々な反応を見せた。


俺達の学校の校舎は━━


緑色の空に浮いた状態で静止しており、地面などどこにも無かった。

「オイ!ふざけんな!何のドッキリだ!?これは!」

頭での処理が追い付かない苛立ちからか、クラスメートの一人が窓ガラスを割る勢いで叩いた。

「バカヤロー!窓の外がどんなんか分からないんだぞ!
毒ガスが充満していたらどーすんだよ!」

「毒ガス!?」

「ヤダ!私たち死ぬの!?」

口から出た単語から連想するように、悪い方へ思考が働く。
正直な所、俺もこの訳のわからない状況が何なのかが思い付かない。

「みんな落ち着いて!毒ガスなんて無いから!
みんな聞いて。……私たちはね、多分……
異世界に連れて来られたの。」

一番冷静な態度を取っていた葵が、一番可笑しな事を言い出した。


━━は?異世界?━━


クラスの皆がしぃんと静まり返り、葵を見た。
良くも悪くもクラスメート一同、皆が冷静になれた瞬間だった。


「葵、お前がゲームとかラノベとか好きな事は知ってるが……
それは余りにも荒唐無稽過ぎるだろ。」

「帝斗は、いつもジジ臭い話し方するよね。」

そりゃ、今は関係ないだろ……癖なんだから。

「じゃあみんな、目の前に画面が開くのを想像しながら言ってみなよ。
『ステータス』って。」

葵の提案は、パニックに陥り掛けたクラスの皆を『え、そんな恥ずかしい事、言うの?』と互いの顔をうかがう位には落ち着かせた。
不安が薄まり、恥ずかしさの方が先に来たようだ。

そうだよな。誰も居ない所で一人で言うならともかく……
人前、しかも顔見知りの前でそれはキツイ。
やってしまった過去のある、最近厨二病世界から帰ったばかりの友人が顔を赤くしてぷるぷるしている。

「ま、俺は葵がそこまで言うなら信じるさ。ステータス。」

葵が微笑んだ。
ショートカットのボーイッシュな、見るからに『元気な少女』の葵だが、時々大人の女のような妖艶とも言える雰囲気を醸し出す。

俺の大事な………彼女が言う事ならば信じよう。


「帝斗、ありがとう。…………ぃ。」


礼を言った葵が、その後に何かを呟いた。
俺にはその言葉が聞き取れなかった。
聞き返すより先に、俺は目の前の空間に『ステータス画面』が浮かぶという有り得ない光景に驚き、彼女の言葉を聞く事を忘れてしまっていた。

俺はそれを、今とてつもなく後悔している。

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