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79話◆月の女神的には、馬に乗ったあの方が神だと思った。
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ジャンセンとサイモンの二人はラジェアベリアより離れた地である神聖国に既に到着しており、密かに情報収集を始めていた。
二人組みでは目立つのでそれぞれ別行動をし、王城や王族の関係者を探る隠密活動はサイモンが、通りすがりの旅人を装い街中を探る諜報活動をジャンセンが担当した。
実の所は、面倒くさい事は部下サイモンに押し付けて、自分は街をブラブラしたかっただけだ。
だって面倒クサイじゃん?
そんな不精な神様は、神が居る国だとのたまう神聖国の大通りを歩きながら、要所要所にある神々の像とやらを眺めて鼻で笑う。
「あら師匠!もうこの国に着いていたのね!」
神の像とやらの前に立つジャンセンの隣に、ディアーナが並んで立つ。
横に並ぶジャンセンの腕をディアーナが肘でつついた。
「師匠…つか、おとん。
神の居る国ってのが何なのか…この国を興した人物がどんなのか知っていたわね?」
ずっと無言で神の像とやらを眺めていたジャンセンが頷いてほくそ笑む。
「知っていたが、今の俺は人間だからな。
神としては特に何もする気は無い。
戦が始まっても始まらなくてもな。
……だが、俺の作った箱庭を引っ掻き回すような真似をするのが、この世界で生まれた奴でないとなれば話しは別だ。
部外者にはお引き取り願いたい。」
「ねぇ、この国の最高神の像見た?
すんごいショックだったし、大ウケしたし。
今度レオンを連れて来て一緒に見たいわ。最高神。」
ジャンセンは無言で頷きながら笑いを堪えるが、堪えきれない。
プププと噛み締めた唇の隙間から笑いが漏れる。
「私とレオンは暫くは傍観者でいさせて貰うけど、楽しくなって来たら参戦するかもね。
おとんだけ人間のふりして参戦なんてズルいもの!」
ディアーナはジャンセンの前にある神の像を見て溜息をつく。
「これは確かに神だわ……だからこそ、最高神はあの方だと思っていたのに……まさかだったわよ。」
「まぁ、一言で言えば…ここはオタクが作った国だな。
神々の像なんて、フィギュアと大差無いし。」
ジャンセンとディアーナは、台座に闘神と名が彫られた像を見上げる。
凛々しい顔立ちに無駄の無い筋肉の付いたスラリと長い手足。
逞しい胸筋に七つの星を連想させる傷のある若い男神。
「ブフォ!!!」
ディアーナとジャンセンが同時に吹き出した。
もう、アレだ!アレ!!超名作の漫画!!
確かに神だ!神作品だな!神漫画だ!!
「だ、駄目…笑い過ぎて、私はもう死んでいる…!わははは!」
「おとん!!そこ『私』じゃないでしょ!?あはははは!!」
闘神像の前で大爆笑していた二人だが、やがてスゥと熱を下げ冷静になる。
「方々に、あちらの世界の作品のキャラを象った神像フィギュアがありますよ。
新旧問わずに漫画、ゲーム、アニメ等々のね。
…まぁ、今は様子を見ます。笑って済ませられる内は。」
「笑って済ませられる内は…ね。師匠が言うと怖いわね。」
笑って済ませられなくなる時とは、人のふりをやめて神として相対する時。
指一本動かさずに全てを無かった事にしてしまえる。
そんな、貴重な面白敵さんの人生を強制ゲームオーバーさせる終わり方なんて……
「私がつまらないじゃないの。遊ばせてよ。」
ディアーナが口角を上げてニンマリと笑んだ。
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「あああ…ごめんなさいねぇ二人とも…」
わたしは、身体を硬直させたままカチュアとメイに支えられて、若者に親切にされているおばあちゃんの様にヨタヨタと歩く。
ついさっき草原で、いきなり現れたスファイに誘拐され掛けて怖い思い……と言うよりは、キモい思いをした。
いきなり現れた好きでも無い男に甘い台詞を吐かれて、手の平で口を塞がれた上に腰を引き寄せられ、身体が密着した。
もう、キモいわ。
スファイはもう、わたしの知っている総受け完ネコな可愛いミニマムショタボーイではないもの。
母親目線で小さかった彼の成長を喜んだけど、成長しちゃって声まで変わって男になっちゃってんだもん。
なのに中身は、あの頃の様に甘ったれ坊っちゃんって何だ。
その上、わたしを求めるとか。とにかくキモい。
そんなキモいスファイは、スチュワートさんに身体を掴まれたまま連行中。
「貴方に聞きたい事が幾つかある。
普通の宿では不都合なので、今日は、こちらに泊まらせて頂きましょう。」
と、スチュワートさんに案内されたのはご立派なお屋敷で……
ここ、宿ではないよね!お屋敷だもん!
ヒールナー伯爵邸に引けを取らない位に立派だよ!!
誰のお屋敷!?
スチュワートさんは鉄の門扉を開け中に入り、スファイを連れたままスタスタとアプローチを歩いて中に入って行く。
誰も出て来ないので空き家?かと思っていたら、玄関に到着した所で扉が開き、中から老人が出て来た。
「スチュワート様、お帰りなさいませ。」
「今夜一晩、世話になる。
急な来訪だ、我々には構わなくて良い。」
もしかしたら……スチュワートさんの実家?
確かに、スチュワートさんって、それなりに良い所の坊っちゃんだとカチュアに聞いたけど。
わたしの疑問の眼差しに気が付いたスチュワートさんが、苦笑して首を横に振る。
「私の実家が所有する別荘のひとつです。
拠点として色々使い道があるので、今も維持させております。」
わたしには良く分からないんだけど…ここはラジェアベリア国ではないから、海外別荘って感じなの?
さっきの年老いた男性以外にも、使用人らしき人が何人か居る。
この人達を雇ってるの?スチュワートさんの実家、お金持ちだな……
「邸が傷まないように管理を頼み、かわりに住む場所を無料で貸しております。
今日のように、急な来訪でも場所を提供出来る様にと条件付きで。」
ほう、管理を任され家賃ただでお屋敷に住めるのなら、悪くはないかも……シェアハウスみたいに何人かで居るみたいだし。
縛ったスファイを連れて邸に入ったスチュワートさんは、老人に指示をして、わたしとカチュア、メイの三人を寝室に案内するよう言った。
そしてスチュワートさん自身はスファイを連れて別室に向かう。
事情聴取の為!?
「あ、あの!スチュワートさん!
……あまり、手荒な事は…しないであげて?
……彼は……悪い人じゃないの……ただ……」
スファイはメイに顔面を殴られた為に垂れた鼻血が拭く事も出来ぬまま固まっており、血だらけの生気の無い顔でスチュワートさんに連行される姿が余りにも不憫で思わず声を掛けてしまった。
そんなわたしを、スチュワートさんやカチュアやメイが、なんて優しい人だろうと言う表情で見ていた。が、
「ただ………スファイは……すんげぇアホなの。」
続くわたしの言葉を聞いて、スチュワートさんやカチュアやメイが「確かにねー」って顔でわたしを見た。
「隠す事無く、知っている事を全て話してくれたら、私は何も致しません。」
ニコリと笑ってスチュワートさんとスファイが邸の奥へと去って行った。
わたし達、女子三人はそれぞれ個室に案内された。
カチュアが「奥様をお一人にするのは…!」と言ったが、スチュワート様の指示ですから、と老人に押し切られた。
湯が張ってあるので浴室へどうぞと言われ、三人で浴室に向かう。
サイモンらしき帽子の剣士に抱かれた次の日に三人で風呂に入ってから、湯浴みをする時は三人で入る様になった。
「カチュア…お母様の事、心配?」
バスタブに浸かりながら、身体を洗っているカチュアに尋ねる。
カチュアは答えを探す様に少し無言になり、重く口を開いた。
「もう、賊だと思っているので…心配と言うよりは…何故?と思う事が多くて…。」
「カチュアのお母さん、凄く強かたらしいね。
でもカチュアの知ってるお母さんって普通の人だったんでしょ?
操られてるんじゃないの?奥様を拐おうとした連中みたいに。」
メイの言葉に、微妙な頷き方をするカチュア。
カチュアも同じ考えを持ってはいるものの、釈然としない何かを感じている様子で。
わたし達にはまだ、分からない事だらけだ。
何者だか分からないけど、わたしを拐いたいグリーンヤンキーとスファイが仲間かどうかも分からない。
「スファイ…痛い目にあってないかしら…スチュワートさんて、殴ったりするのかしら…」
温厚なおじ様だけど、剣の腕は一流。
元が戦場の狼なんて呼ばれていた位だから、人を斬り殺すのはするのだろうけど…殴るイメージわかないなぁ。
「片目はメイが殴ったから!!あれ以上はもう殴らないと思います!」
鼻息荒く、おパイを揺らしながら拳を握って言うメイ。確かにな。顔面真っ赤で悲惨だったもんな。
寝室に戻ると、部屋に軽く取れる食事が用意してあり、ありがたく戴いてベッドに入った。
あんな事があった後だから、わたしを一人にする事なんてないと思ったのだけど…
お風呂に入るまで変な緊張でバキバキに硬直していた身体も湯に浸かり落ち着いたし…スチュワートさん、転移魔法を阻害出来る方法を知ってるみたいだし…
一人にしても大丈夫だと判断してくれたのかしら。
わたしが草原で一人になりたいと言ったから…気をつかってくれたのかなぁ………
ベッドに入って何度も寝返りを打つ。
今になって、草原で大号泣した恥ずかしさが甦る。
だっ、だって!ほんとに寂しいし!!
サイモンに逢いたいと思ってんだもの!!
不満を大声に出してスッキリしたいじゃない!?
現れたのはサイモンでなくてスファイだったけど!!
こんちくしょう!!
「寂しい思いをさせてすまない……だが、俺はいつも君の側に居るから。」
ベッドに横たわるわたしの背後から不意に聞こえた台詞に、草原でのスファイ出現の瞬間が鮮明に思い出される。
背筋に冷たい汗が流れ、再び身体が強張る。
スチュワートさんの別荘にまで現れるなんて!不法侵入もいーとこだ!
わたしを怯えてばかりの令嬢だと思うなよ!!
「今度はどこの俺だ!!サイモン以外は、いらない俺だから消えろ!!」
武器としては心許ないが、枕を掴んで振り向き様に背後の輩に叩き付ける。
枕は背後に居た男の頭の上でボフッとこもった音を立て弾け、白い羽毛が雪の様に部屋に舞った。
雪とゆーかもう、ケサランパサランか?
舞い散る羽毛の吹雪の向こう側に居たのは、頭にモッサリ羽毛を乗せたサイモンだった。
「さ…サイモン…サイモン!…サイモン………どわー!!!顔、羽根だらけで白っ…あの…枕をぶつけて、ごめんなさい…」
ツッコミ所と、謝らなきゃいかん事が多過ぎて、少々混乱気味のわたしは、一人大騒ぎしながらも目の前のサイモンに素直に喜べず、警戒心さえ持って距離を取る。
いきなり現れたんだもの!さっきのスファイみたいに!
いきなり現れる魔法があるんだから、サイモンに化ける魔法だってあるかも知れない。
わたしが「サイモンだわ!」と抱き付いた瞬間、捕まったり!
「……なぜ、ここに?サイモンはジャンセンさんとアホ国に行ってるハズ……あなた、サイモンのニセも……!!」
「なぜここに?ここはもう、神聖国に近い場所だし、はは…いや、スチュワートの所有する別荘だから俺も休憩に使う事がある。
それと…君にこれを……これがないと不便かと……」
舞い散る羽毛の雪の中、愛しい人が微笑みながらわたしに向け手を差し伸べる。
「……ほんとに…サイモン?サイモン…!サイ……」
差し伸べられた手を掴もうと彼に近付く。
目が潤む。わたしだけが知る、サイモンの優しい笑顔…
逢いたかった…!逢いたかったわ!!
わたしが掴もうとした、差し伸べられた彼の手には、わたしの紐パンティがぶら下がっていた。
二人組みでは目立つのでそれぞれ別行動をし、王城や王族の関係者を探る隠密活動はサイモンが、通りすがりの旅人を装い街中を探る諜報活動をジャンセンが担当した。
実の所は、面倒くさい事は部下サイモンに押し付けて、自分は街をブラブラしたかっただけだ。
だって面倒クサイじゃん?
そんな不精な神様は、神が居る国だとのたまう神聖国の大通りを歩きながら、要所要所にある神々の像とやらを眺めて鼻で笑う。
「あら師匠!もうこの国に着いていたのね!」
神の像とやらの前に立つジャンセンの隣に、ディアーナが並んで立つ。
横に並ぶジャンセンの腕をディアーナが肘でつついた。
「師匠…つか、おとん。
神の居る国ってのが何なのか…この国を興した人物がどんなのか知っていたわね?」
ずっと無言で神の像とやらを眺めていたジャンセンが頷いてほくそ笑む。
「知っていたが、今の俺は人間だからな。
神としては特に何もする気は無い。
戦が始まっても始まらなくてもな。
……だが、俺の作った箱庭を引っ掻き回すような真似をするのが、この世界で生まれた奴でないとなれば話しは別だ。
部外者にはお引き取り願いたい。」
「ねぇ、この国の最高神の像見た?
すんごいショックだったし、大ウケしたし。
今度レオンを連れて来て一緒に見たいわ。最高神。」
ジャンセンは無言で頷きながら笑いを堪えるが、堪えきれない。
プププと噛み締めた唇の隙間から笑いが漏れる。
「私とレオンは暫くは傍観者でいさせて貰うけど、楽しくなって来たら参戦するかもね。
おとんだけ人間のふりして参戦なんてズルいもの!」
ディアーナはジャンセンの前にある神の像を見て溜息をつく。
「これは確かに神だわ……だからこそ、最高神はあの方だと思っていたのに……まさかだったわよ。」
「まぁ、一言で言えば…ここはオタクが作った国だな。
神々の像なんて、フィギュアと大差無いし。」
ジャンセンとディアーナは、台座に闘神と名が彫られた像を見上げる。
凛々しい顔立ちに無駄の無い筋肉の付いたスラリと長い手足。
逞しい胸筋に七つの星を連想させる傷のある若い男神。
「ブフォ!!!」
ディアーナとジャンセンが同時に吹き出した。
もう、アレだ!アレ!!超名作の漫画!!
確かに神だ!神作品だな!神漫画だ!!
「だ、駄目…笑い過ぎて、私はもう死んでいる…!わははは!」
「おとん!!そこ『私』じゃないでしょ!?あはははは!!」
闘神像の前で大爆笑していた二人だが、やがてスゥと熱を下げ冷静になる。
「方々に、あちらの世界の作品のキャラを象った神像フィギュアがありますよ。
新旧問わずに漫画、ゲーム、アニメ等々のね。
…まぁ、今は様子を見ます。笑って済ませられる内は。」
「笑って済ませられる内は…ね。師匠が言うと怖いわね。」
笑って済ませられなくなる時とは、人のふりをやめて神として相対する時。
指一本動かさずに全てを無かった事にしてしまえる。
そんな、貴重な面白敵さんの人生を強制ゲームオーバーさせる終わり方なんて……
「私がつまらないじゃないの。遊ばせてよ。」
ディアーナが口角を上げてニンマリと笑んだ。
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「あああ…ごめんなさいねぇ二人とも…」
わたしは、身体を硬直させたままカチュアとメイに支えられて、若者に親切にされているおばあちゃんの様にヨタヨタと歩く。
ついさっき草原で、いきなり現れたスファイに誘拐され掛けて怖い思い……と言うよりは、キモい思いをした。
いきなり現れた好きでも無い男に甘い台詞を吐かれて、手の平で口を塞がれた上に腰を引き寄せられ、身体が密着した。
もう、キモいわ。
スファイはもう、わたしの知っている総受け完ネコな可愛いミニマムショタボーイではないもの。
母親目線で小さかった彼の成長を喜んだけど、成長しちゃって声まで変わって男になっちゃってんだもん。
なのに中身は、あの頃の様に甘ったれ坊っちゃんって何だ。
その上、わたしを求めるとか。とにかくキモい。
そんなキモいスファイは、スチュワートさんに身体を掴まれたまま連行中。
「貴方に聞きたい事が幾つかある。
普通の宿では不都合なので、今日は、こちらに泊まらせて頂きましょう。」
と、スチュワートさんに案内されたのはご立派なお屋敷で……
ここ、宿ではないよね!お屋敷だもん!
ヒールナー伯爵邸に引けを取らない位に立派だよ!!
誰のお屋敷!?
スチュワートさんは鉄の門扉を開け中に入り、スファイを連れたままスタスタとアプローチを歩いて中に入って行く。
誰も出て来ないので空き家?かと思っていたら、玄関に到着した所で扉が開き、中から老人が出て来た。
「スチュワート様、お帰りなさいませ。」
「今夜一晩、世話になる。
急な来訪だ、我々には構わなくて良い。」
もしかしたら……スチュワートさんの実家?
確かに、スチュワートさんって、それなりに良い所の坊っちゃんだとカチュアに聞いたけど。
わたしの疑問の眼差しに気が付いたスチュワートさんが、苦笑して首を横に振る。
「私の実家が所有する別荘のひとつです。
拠点として色々使い道があるので、今も維持させております。」
わたしには良く分からないんだけど…ここはラジェアベリア国ではないから、海外別荘って感じなの?
さっきの年老いた男性以外にも、使用人らしき人が何人か居る。
この人達を雇ってるの?スチュワートさんの実家、お金持ちだな……
「邸が傷まないように管理を頼み、かわりに住む場所を無料で貸しております。
今日のように、急な来訪でも場所を提供出来る様にと条件付きで。」
ほう、管理を任され家賃ただでお屋敷に住めるのなら、悪くはないかも……シェアハウスみたいに何人かで居るみたいだし。
縛ったスファイを連れて邸に入ったスチュワートさんは、老人に指示をして、わたしとカチュア、メイの三人を寝室に案内するよう言った。
そしてスチュワートさん自身はスファイを連れて別室に向かう。
事情聴取の為!?
「あ、あの!スチュワートさん!
……あまり、手荒な事は…しないであげて?
……彼は……悪い人じゃないの……ただ……」
スファイはメイに顔面を殴られた為に垂れた鼻血が拭く事も出来ぬまま固まっており、血だらけの生気の無い顔でスチュワートさんに連行される姿が余りにも不憫で思わず声を掛けてしまった。
そんなわたしを、スチュワートさんやカチュアやメイが、なんて優しい人だろうと言う表情で見ていた。が、
「ただ………スファイは……すんげぇアホなの。」
続くわたしの言葉を聞いて、スチュワートさんやカチュアやメイが「確かにねー」って顔でわたしを見た。
「隠す事無く、知っている事を全て話してくれたら、私は何も致しません。」
ニコリと笑ってスチュワートさんとスファイが邸の奥へと去って行った。
わたし達、女子三人はそれぞれ個室に案内された。
カチュアが「奥様をお一人にするのは…!」と言ったが、スチュワート様の指示ですから、と老人に押し切られた。
湯が張ってあるので浴室へどうぞと言われ、三人で浴室に向かう。
サイモンらしき帽子の剣士に抱かれた次の日に三人で風呂に入ってから、湯浴みをする時は三人で入る様になった。
「カチュア…お母様の事、心配?」
バスタブに浸かりながら、身体を洗っているカチュアに尋ねる。
カチュアは答えを探す様に少し無言になり、重く口を開いた。
「もう、賊だと思っているので…心配と言うよりは…何故?と思う事が多くて…。」
「カチュアのお母さん、凄く強かたらしいね。
でもカチュアの知ってるお母さんって普通の人だったんでしょ?
操られてるんじゃないの?奥様を拐おうとした連中みたいに。」
メイの言葉に、微妙な頷き方をするカチュア。
カチュアも同じ考えを持ってはいるものの、釈然としない何かを感じている様子で。
わたし達にはまだ、分からない事だらけだ。
何者だか分からないけど、わたしを拐いたいグリーンヤンキーとスファイが仲間かどうかも分からない。
「スファイ…痛い目にあってないかしら…スチュワートさんて、殴ったりするのかしら…」
温厚なおじ様だけど、剣の腕は一流。
元が戦場の狼なんて呼ばれていた位だから、人を斬り殺すのはするのだろうけど…殴るイメージわかないなぁ。
「片目はメイが殴ったから!!あれ以上はもう殴らないと思います!」
鼻息荒く、おパイを揺らしながら拳を握って言うメイ。確かにな。顔面真っ赤で悲惨だったもんな。
寝室に戻ると、部屋に軽く取れる食事が用意してあり、ありがたく戴いてベッドに入った。
あんな事があった後だから、わたしを一人にする事なんてないと思ったのだけど…
お風呂に入るまで変な緊張でバキバキに硬直していた身体も湯に浸かり落ち着いたし…スチュワートさん、転移魔法を阻害出来る方法を知ってるみたいだし…
一人にしても大丈夫だと判断してくれたのかしら。
わたしが草原で一人になりたいと言ったから…気をつかってくれたのかなぁ………
ベッドに入って何度も寝返りを打つ。
今になって、草原で大号泣した恥ずかしさが甦る。
だっ、だって!ほんとに寂しいし!!
サイモンに逢いたいと思ってんだもの!!
不満を大声に出してスッキリしたいじゃない!?
現れたのはサイモンでなくてスファイだったけど!!
こんちくしょう!!
「寂しい思いをさせてすまない……だが、俺はいつも君の側に居るから。」
ベッドに横たわるわたしの背後から不意に聞こえた台詞に、草原でのスファイ出現の瞬間が鮮明に思い出される。
背筋に冷たい汗が流れ、再び身体が強張る。
スチュワートさんの別荘にまで現れるなんて!不法侵入もいーとこだ!
わたしを怯えてばかりの令嬢だと思うなよ!!
「今度はどこの俺だ!!サイモン以外は、いらない俺だから消えろ!!」
武器としては心許ないが、枕を掴んで振り向き様に背後の輩に叩き付ける。
枕は背後に居た男の頭の上でボフッとこもった音を立て弾け、白い羽毛が雪の様に部屋に舞った。
雪とゆーかもう、ケサランパサランか?
舞い散る羽毛の吹雪の向こう側に居たのは、頭にモッサリ羽毛を乗せたサイモンだった。
「さ…サイモン…サイモン!…サイモン………どわー!!!顔、羽根だらけで白っ…あの…枕をぶつけて、ごめんなさい…」
ツッコミ所と、謝らなきゃいかん事が多過ぎて、少々混乱気味のわたしは、一人大騒ぎしながらも目の前のサイモンに素直に喜べず、警戒心さえ持って距離を取る。
いきなり現れたんだもの!さっきのスファイみたいに!
いきなり現れる魔法があるんだから、サイモンに化ける魔法だってあるかも知れない。
わたしが「サイモンだわ!」と抱き付いた瞬間、捕まったり!
「……なぜ、ここに?サイモンはジャンセンさんとアホ国に行ってるハズ……あなた、サイモンのニセも……!!」
「なぜここに?ここはもう、神聖国に近い場所だし、はは…いや、スチュワートの所有する別荘だから俺も休憩に使う事がある。
それと…君にこれを……これがないと不便かと……」
舞い散る羽毛の雪の中、愛しい人が微笑みながらわたしに向け手を差し伸べる。
「……ほんとに…サイモン?サイモン…!サイ……」
差し伸べられた手を掴もうと彼に近付く。
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