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92話◆消えた……
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「カチュア!!」
スチュワートが駆け寄り、カチュア達の居る辺りを見回す。
カチュアの曳いている馬は残され、馬上に居たミランダだけが忽然と姿を消していた。
「スチュワート様…!また、奥様が突然…!」
「ええ見ておりました。
一体どの様な魔法を…自身が現れる事無く、対象者だけを他の場所に連れ去るなど…」
茫然としていたメイが突然スファイの胸ぐらを両手で掴むとスファイの身体を下に引き寄せ、鬼の様な顔を寄せた。
「お前、何か知らないのかよ!!仲間だったんだろ!
こんな事をしそうな奴、奥様を連れて行きそうな場所、何か知らないの!?何でもいいから!!」
必死な形相で訊いてきたメイの、スファイの胸ぐらを掴む手は震えており、目には涙が溢れ始めた。
「ご、ごめん…マメシバ…僕…仲間じゃないんだ…
喪服のレディ以外会った事も無いし……」
「喪服のレディ…母か…。
母を捕らえて尋問しようにも、母がどこにいるかも分からないな…」
申し訳無さげにメイに言うスファイの答えは今のカチュア達には何の助けにもならない。
カチュアも自身の非力さを恨むが、うつ向かない。
そうミランダと約束した。
自分はミランダの騎士だと、守ると、わたし達は強いから負けないと。
「あちらの狙いが奥様である以上、命が脅かされる事はあるまい!
少しでも早く、何とか奥様の居場所を突き止める!」
「命は無事でも奥様の身体がぁ!!変な奴に!!」
「そんな事は分かっている!」
カチュアとメイが言い合っている間、スチュワートは何らかの手掛かりを探す。
「グレイス、俺の声が聞こえていたら奥様の居場所を教えてくれ!」
スチュワートの気持ちも急くが、ミランダの転移先が分かっても、1分1秒を争う今、すぐその場に駆け付けるのは難しい。
同じく、遠く離れたラジェアベリアのヒールナー邸に居るヒールナー伯爵夫人も焦っていた。
「ミランダは国の中心部、王城近くの邸の一室に囚われている…!
でも、その場に行くには兄さん達の居る場所から馬を走らせても30分以上掛かるわ!
サイモンはナニやってんのよ!!」
植物を介して、ある程度の意思は伝えられても会話は出来ない。
グレイスにはミランダの居る方向を指し示す事しか出来ない。
走ってすぐ辿り着く距離なのか、馬を走らせる程に離れた場所なのかも伝えられない。
「ミランダ…!私達の大切な娘…どうか無事でいて!!」
▼
▼
▼
▼
「いやっ…!やめて!!見ないで!いやぁ!!」
マグスによって、ミランダのスカートが大きくバサッと捲り上げられた。
足元に居る、ニヤリとしたマグスの姿がスカートの向こう側に消える。
内側に空気を含んだスカートが、フワリと下に落ちた時
スカートの向こう側に居たマグスは、ガックリと肩を落としていた。
人の股間を見て肩を落とすとは何事だ、と少しばかりイラッとするミランダ。
「…………お前なぁ……可愛い顔をしてんのになぁ……
下着の趣味ワリイな……
何だ、そのケバケバしい蛾の刺繍は……。」
ミランダはふ、と思い出した。
そう言えば、サイモンが去り際に下着を履かせてくれていたな、と。
あの時点では下着がエグい蝶しか残ってなかったなと。
緑と紫がメインの蝶だか蛾だか孔雀だかみたいな刺繍の上に、防犯ポスターの様なガン見状態の目玉が付いている。
ちょっと履くのに勇気がいる下履きだ。
ミランダの履いていたメイ特製のエグいパンツに、少し萎えてくれた模様のマグス。
ほんの数秒、だがミランダには焦って混乱しつつあった自身を落ち着かせる余裕が出来た。
サイモンの行動が生み出してくれた、その数秒に感謝しつつ、ミランダは声を上げた。
「ディアーナ!!助けて!!」
神聖国、国王の実弟であるマグスの私邸の寝室に突然姿を現したディアーナは、貴族の女性らしく外出用のドレスを身に纏っている。
ディアーナはベッドの傍らに立ち、今にも襲われそうなミランダと、襲い掛かろうとしたが、少しテンションダウンしているマグスを見た。
「何だお前は…いきなり現れやがって。貴族の女か?
ずいぶん、いい女だが…。
ミランダと一緒に可愛がって欲しいのかよ。」
マグスがベッドから下り、ディアーナの前に立つ。
長身のマグスを見上げていたディアーナだったが、
ディアーナは無言のまま両手に拳を握り、ボクサーの様にファイティングポーズをとった。
マグスは笑い、自身の衣服の前を捲り上げて鍛え上げられた腹部を見せる。
「あん?お前もミランダみたいに俺を殴るのか?
言っておくが、お嬢ちゃんのヤワイ拳なんか、鍛えた俺の身体に効くワケないぜ!」
「やかましいわっ!!大根頭!!」
明らかに苛ついた表情のディアーナがマグスの腹部にワンパンくれてやる。
「ぶふぉあふぁっ!!」
遠慮無くマグスの腹部に繰り出されたディアーナの拳は、マグスの腹部を渦を巻くように下側から抉り、マグスの身体を足が床から浮く程に持ち上げた。
足での着地が出来ず、ドシャッと床に落ちたマグスは口から胃液を吐きながら、立ち上がろうとよつん這い状態になるが、足に力が入らず立つ事が出来ない。
「……てめぇ、何様だ。
さっきから絶世の美女の私に、お前、お前って、何度言いやがった?あん?
ショボい、ナニを握り潰したるぞ!!」
よつん這い状態のマグスの肩に足を掛けたディアーナは、口から唾液を垂らしながら見上げるマグスを睨み付ける。
「お、お前は…何者だ……何だ、この力は……。」
「ふぅん、まだお前って呼ぶ?頭悪いわね。
頭が高いわ、控えろ。」
ディアーナはマグスの肩に置いた足に躊躇無く体重以上の重みを掛けた。
マグスの肩が下がり、抵抗も虚しく上げていた肩が床に付く。
「ぐっ…!あっ!…くぁ…!」
「抗えば鎖骨が折れるわよ。私は一向に構わないけど。
私の名はディアーナ。
お前ん所のエリーゼの左頬に真っ赤なお花を贈った者よ。
月の聖女とも呼ばれてるわ。」
肩を踏みつけられたマグスの顔が床に擦り付けられる。
「え、エリーゼの…!」
マグスは、こんな力を持つ者であるならばエリーゼの人を操る力も通じないであろうと理解した。
理解した上で、いまだ見た事の無い強者に胸が躍る。
「俺は……マグス!覚えておけ、マグスだ!お前を倒す男だ!」
「あらん……嬉しいわ、プロポーズされた気分よ。」
肩から足を下ろしたディアーナは、膝立ちのままでノロノロと上体を起こしたマグスを見下ろして微笑み、マグスの前で指をパチンと鳴らした。
「ミランダに繋げた糸は切ったわよ。
魔力を繋いだ相手を引っ張って来れるなんて、面白い魔法ね。
一人を対象にしか出来ないってのなら、守りたい相手に繋げるべきなんじゃない?」
「まだ、守りたい相手なんて居ねぇんだよ。
一回切られた相手には、もう繋げる事が出来ねぇ。
俺は今、あんたに糸を繋げたいわ。
いつでも戦えるようにな!」
マグスの熱烈な眼差しにディアーナが嬉しそうに笑う。
「楽しみに待ってるわよ。さあ、ミランダ帰ろうか!」
ベッドの上で、ぼんやりと二人のやり取りを見ていたミランダが、名前を呼ばれて我に返る。
「あ、そ、そうね!ありがとう、ディアーナ!
……帰る……どうやって?
ディアーナって、魔法使えなかったよ…ね!?きゃあっ」
ディアーナにいきなりお姫様抱っこされたミランダは、焦って横抱きされた状態でディアーナの首に抱き付く。
「いいわよ、抱き付いてて!振り落とされない様にね?」
ミランダを姫抱きしたディアーナは、マグス邸の2階の寝室窓から飛び降りた。
マグスが慌てて窓に駆け寄る。
「おい…嘘だろ?なんつう動きすんだよ。」
マグスの私邸から出てきた私兵達が門内のディアーナに向かうが、ミランダを抱きかかえ両手が塞がったディアーナに足だけで倒されて行く。
私兵を全員倒したディアーナは、爽やかな笑顔を2階から見下ろすマグスに向けた。
「いつでも掛かってらっしゃい!」
ディアーナはマグス邸の閉まったままの高い門を、ジャンプで飛び越え、そのまま走り去った。
「で、ディアーナ!!ごめんね!いきなりよ、呼び出して!」
「構わないわよ!いつでも呼んでって言ったじゃない!」
神聖国の表通りを、ミランダを抱いたまま馬より速いんじゃないかって速度で走るディアーナは、数分後にはカチュア達の居る場所に到着した。
「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!」
ダバァっと涙と鼻水を垂らしたメイが、ディアーナの腕から降りたミランダに抱き付く。
「奥様…ご無事で…!ディアーナ様…ありがとうございます…」
カチュアはミランダの足元に膝をつき、安堵の笑顔を見せながら涙を流した。
カチュアは王城でのアオカン談義女子会の時にディアーナを見ており、並外れた体力を持った女性だとは思っていたが、まさか、この場に現れミランダを救い出す力を持つとは思いも寄らなかった。
「もう、ミランダが今回と同じ魔法でいきなり拐われる事は無いけど、他の方法で拐われる可能性もあるから警戒はしといてね。」
「どこの御方か存じませんが…ありがとうございます…助かりました。」
警戒を促すディアーナに、スチュワートが膝をつき、帽子を取り頭を下げた。
「私は月の聖女だし創造主の娘だから、これくらいワケ無いわよ。」
「何と、ジャンセン様のお身内の方で……」
スチュワートは創造主の娘と聞いただけで、ディアーナがジャンセンの娘であり、人の身では無い事を悟った。
だが、神の一族は人間一人の身を案じて動くなどほぼ無い事も知っている。
「ミランダは特別ね、私の親友だもの。
それは前世からの縁だからね。
それに…ミランダを苦しめようとしているのが、これまた前世の関係者なら黙ってらんないのよね。」
この世界で生まれた魂ではなく、地球から転生してきた魂。
他所から来たからって、この世界にある物、生きる人を好きにしていいなんて考える奴ぁブッ潰したるわ!
そんな考えが顔に出る。
「ディアーナ、あの…本当にありがとう!」
「気にしないでってば!」
ミランダにディアーナは笑いながら首を振る。
スファイがディアーナを怯えた様に見るが、なぜそのような態度を取ってしまうのか、自身でも分からない様だ。
ゲームにて、悪役令嬢ディアーナに蔑まれていたという設定が僅かに生きているらしい。
ディアーナやジャンセンにとってミランダは特別。
それ以外では、この世界に生きる人物がどうなろうと、それはこの世界に生きる者の運命である。
それは沈黙を貫く神の一族のみが知っていた。
この世界に生きる人の、誰も知らない誰も気付かぬ内に
サイモンの消息が不明となっていた事を。
スチュワートが駆け寄り、カチュア達の居る辺りを見回す。
カチュアの曳いている馬は残され、馬上に居たミランダだけが忽然と姿を消していた。
「スチュワート様…!また、奥様が突然…!」
「ええ見ておりました。
一体どの様な魔法を…自身が現れる事無く、対象者だけを他の場所に連れ去るなど…」
茫然としていたメイが突然スファイの胸ぐらを両手で掴むとスファイの身体を下に引き寄せ、鬼の様な顔を寄せた。
「お前、何か知らないのかよ!!仲間だったんだろ!
こんな事をしそうな奴、奥様を連れて行きそうな場所、何か知らないの!?何でもいいから!!」
必死な形相で訊いてきたメイの、スファイの胸ぐらを掴む手は震えており、目には涙が溢れ始めた。
「ご、ごめん…マメシバ…僕…仲間じゃないんだ…
喪服のレディ以外会った事も無いし……」
「喪服のレディ…母か…。
母を捕らえて尋問しようにも、母がどこにいるかも分からないな…」
申し訳無さげにメイに言うスファイの答えは今のカチュア達には何の助けにもならない。
カチュアも自身の非力さを恨むが、うつ向かない。
そうミランダと約束した。
自分はミランダの騎士だと、守ると、わたし達は強いから負けないと。
「あちらの狙いが奥様である以上、命が脅かされる事はあるまい!
少しでも早く、何とか奥様の居場所を突き止める!」
「命は無事でも奥様の身体がぁ!!変な奴に!!」
「そんな事は分かっている!」
カチュアとメイが言い合っている間、スチュワートは何らかの手掛かりを探す。
「グレイス、俺の声が聞こえていたら奥様の居場所を教えてくれ!」
スチュワートの気持ちも急くが、ミランダの転移先が分かっても、1分1秒を争う今、すぐその場に駆け付けるのは難しい。
同じく、遠く離れたラジェアベリアのヒールナー邸に居るヒールナー伯爵夫人も焦っていた。
「ミランダは国の中心部、王城近くの邸の一室に囚われている…!
でも、その場に行くには兄さん達の居る場所から馬を走らせても30分以上掛かるわ!
サイモンはナニやってんのよ!!」
植物を介して、ある程度の意思は伝えられても会話は出来ない。
グレイスにはミランダの居る方向を指し示す事しか出来ない。
走ってすぐ辿り着く距離なのか、馬を走らせる程に離れた場所なのかも伝えられない。
「ミランダ…!私達の大切な娘…どうか無事でいて!!」
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「いやっ…!やめて!!見ないで!いやぁ!!」
マグスによって、ミランダのスカートが大きくバサッと捲り上げられた。
足元に居る、ニヤリとしたマグスの姿がスカートの向こう側に消える。
内側に空気を含んだスカートが、フワリと下に落ちた時
スカートの向こう側に居たマグスは、ガックリと肩を落としていた。
人の股間を見て肩を落とすとは何事だ、と少しばかりイラッとするミランダ。
「…………お前なぁ……可愛い顔をしてんのになぁ……
下着の趣味ワリイな……
何だ、そのケバケバしい蛾の刺繍は……。」
ミランダはふ、と思い出した。
そう言えば、サイモンが去り際に下着を履かせてくれていたな、と。
あの時点では下着がエグい蝶しか残ってなかったなと。
緑と紫がメインの蝶だか蛾だか孔雀だかみたいな刺繍の上に、防犯ポスターの様なガン見状態の目玉が付いている。
ちょっと履くのに勇気がいる下履きだ。
ミランダの履いていたメイ特製のエグいパンツに、少し萎えてくれた模様のマグス。
ほんの数秒、だがミランダには焦って混乱しつつあった自身を落ち着かせる余裕が出来た。
サイモンの行動が生み出してくれた、その数秒に感謝しつつ、ミランダは声を上げた。
「ディアーナ!!助けて!!」
神聖国、国王の実弟であるマグスの私邸の寝室に突然姿を現したディアーナは、貴族の女性らしく外出用のドレスを身に纏っている。
ディアーナはベッドの傍らに立ち、今にも襲われそうなミランダと、襲い掛かろうとしたが、少しテンションダウンしているマグスを見た。
「何だお前は…いきなり現れやがって。貴族の女か?
ずいぶん、いい女だが…。
ミランダと一緒に可愛がって欲しいのかよ。」
マグスがベッドから下り、ディアーナの前に立つ。
長身のマグスを見上げていたディアーナだったが、
ディアーナは無言のまま両手に拳を握り、ボクサーの様にファイティングポーズをとった。
マグスは笑い、自身の衣服の前を捲り上げて鍛え上げられた腹部を見せる。
「あん?お前もミランダみたいに俺を殴るのか?
言っておくが、お嬢ちゃんのヤワイ拳なんか、鍛えた俺の身体に効くワケないぜ!」
「やかましいわっ!!大根頭!!」
明らかに苛ついた表情のディアーナがマグスの腹部にワンパンくれてやる。
「ぶふぉあふぁっ!!」
遠慮無くマグスの腹部に繰り出されたディアーナの拳は、マグスの腹部を渦を巻くように下側から抉り、マグスの身体を足が床から浮く程に持ち上げた。
足での着地が出来ず、ドシャッと床に落ちたマグスは口から胃液を吐きながら、立ち上がろうとよつん這い状態になるが、足に力が入らず立つ事が出来ない。
「……てめぇ、何様だ。
さっきから絶世の美女の私に、お前、お前って、何度言いやがった?あん?
ショボい、ナニを握り潰したるぞ!!」
よつん這い状態のマグスの肩に足を掛けたディアーナは、口から唾液を垂らしながら見上げるマグスを睨み付ける。
「お、お前は…何者だ……何だ、この力は……。」
「ふぅん、まだお前って呼ぶ?頭悪いわね。
頭が高いわ、控えろ。」
ディアーナはマグスの肩に置いた足に躊躇無く体重以上の重みを掛けた。
マグスの肩が下がり、抵抗も虚しく上げていた肩が床に付く。
「ぐっ…!あっ!…くぁ…!」
「抗えば鎖骨が折れるわよ。私は一向に構わないけど。
私の名はディアーナ。
お前ん所のエリーゼの左頬に真っ赤なお花を贈った者よ。
月の聖女とも呼ばれてるわ。」
肩を踏みつけられたマグスの顔が床に擦り付けられる。
「え、エリーゼの…!」
マグスは、こんな力を持つ者であるならばエリーゼの人を操る力も通じないであろうと理解した。
理解した上で、いまだ見た事の無い強者に胸が躍る。
「俺は……マグス!覚えておけ、マグスだ!お前を倒す男だ!」
「あらん……嬉しいわ、プロポーズされた気分よ。」
肩から足を下ろしたディアーナは、膝立ちのままでノロノロと上体を起こしたマグスを見下ろして微笑み、マグスの前で指をパチンと鳴らした。
「ミランダに繋げた糸は切ったわよ。
魔力を繋いだ相手を引っ張って来れるなんて、面白い魔法ね。
一人を対象にしか出来ないってのなら、守りたい相手に繋げるべきなんじゃない?」
「まだ、守りたい相手なんて居ねぇんだよ。
一回切られた相手には、もう繋げる事が出来ねぇ。
俺は今、あんたに糸を繋げたいわ。
いつでも戦えるようにな!」
マグスの熱烈な眼差しにディアーナが嬉しそうに笑う。
「楽しみに待ってるわよ。さあ、ミランダ帰ろうか!」
ベッドの上で、ぼんやりと二人のやり取りを見ていたミランダが、名前を呼ばれて我に返る。
「あ、そ、そうね!ありがとう、ディアーナ!
……帰る……どうやって?
ディアーナって、魔法使えなかったよ…ね!?きゃあっ」
ディアーナにいきなりお姫様抱っこされたミランダは、焦って横抱きされた状態でディアーナの首に抱き付く。
「いいわよ、抱き付いてて!振り落とされない様にね?」
ミランダを姫抱きしたディアーナは、マグス邸の2階の寝室窓から飛び降りた。
マグスが慌てて窓に駆け寄る。
「おい…嘘だろ?なんつう動きすんだよ。」
マグスの私邸から出てきた私兵達が門内のディアーナに向かうが、ミランダを抱きかかえ両手が塞がったディアーナに足だけで倒されて行く。
私兵を全員倒したディアーナは、爽やかな笑顔を2階から見下ろすマグスに向けた。
「いつでも掛かってらっしゃい!」
ディアーナはマグス邸の閉まったままの高い門を、ジャンプで飛び越え、そのまま走り去った。
「で、ディアーナ!!ごめんね!いきなりよ、呼び出して!」
「構わないわよ!いつでも呼んでって言ったじゃない!」
神聖国の表通りを、ミランダを抱いたまま馬より速いんじゃないかって速度で走るディアーナは、数分後にはカチュア達の居る場所に到着した。
「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!」
ダバァっと涙と鼻水を垂らしたメイが、ディアーナの腕から降りたミランダに抱き付く。
「奥様…ご無事で…!ディアーナ様…ありがとうございます…」
カチュアはミランダの足元に膝をつき、安堵の笑顔を見せながら涙を流した。
カチュアは王城でのアオカン談義女子会の時にディアーナを見ており、並外れた体力を持った女性だとは思っていたが、まさか、この場に現れミランダを救い出す力を持つとは思いも寄らなかった。
「もう、ミランダが今回と同じ魔法でいきなり拐われる事は無いけど、他の方法で拐われる可能性もあるから警戒はしといてね。」
「どこの御方か存じませんが…ありがとうございます…助かりました。」
警戒を促すディアーナに、スチュワートが膝をつき、帽子を取り頭を下げた。
「私は月の聖女だし創造主の娘だから、これくらいワケ無いわよ。」
「何と、ジャンセン様のお身内の方で……」
スチュワートは創造主の娘と聞いただけで、ディアーナがジャンセンの娘であり、人の身では無い事を悟った。
だが、神の一族は人間一人の身を案じて動くなどほぼ無い事も知っている。
「ミランダは特別ね、私の親友だもの。
それは前世からの縁だからね。
それに…ミランダを苦しめようとしているのが、これまた前世の関係者なら黙ってらんないのよね。」
この世界で生まれた魂ではなく、地球から転生してきた魂。
他所から来たからって、この世界にある物、生きる人を好きにしていいなんて考える奴ぁブッ潰したるわ!
そんな考えが顔に出る。
「ディアーナ、あの…本当にありがとう!」
「気にしないでってば!」
ミランダにディアーナは笑いながら首を振る。
スファイがディアーナを怯えた様に見るが、なぜそのような態度を取ってしまうのか、自身でも分からない様だ。
ゲームにて、悪役令嬢ディアーナに蔑まれていたという設定が僅かに生きているらしい。
ディアーナやジャンセンにとってミランダは特別。
それ以外では、この世界に生きる人物がどうなろうと、それはこの世界に生きる者の運命である。
それは沈黙を貫く神の一族のみが知っていた。
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