【R18】夜の帳に聖なる契り 『転生後の異世界で、腐女子のわたしがBLネタにしていた推しに喰われる漫画を描く罰ゲーム』

DAKUNちょめ

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128話◆いい加減にしろと叫びたい面々。

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「奥様、ただいま戻りました。」


サイモンと入れ違いで部屋を出てから2時間ほど経って、カチュアがわたしの仕事部屋に帰って来た。

わたしは、仕事用に椅子に深く腰掛けたままグッタリしており、まぁ毎度の事だからとカチュアは気にもとめずにテキパキとわたしの帰り支度を始めた。


「今日はもう仕事にはなりませんでしょう。
邸に帰る事をお勧め致します。
馬車の用意も言い付けてありますので。」


「ありがとう…そうするわ。
でも今日はマシな方なのよ…。
一回で終わったもの。濃ゆかったけど。」


カチュアが苦笑しながら手際良く、わたしの荷物をまとめ終えた。


「カチュアは、何も無かったの?
オースティンが城に来てるんでしょ。」


「何もありませんでしたよ。
また新しいお相手でも探してらっしゃるのではないでしょうか。」


え…?そうなの?

カチュアに聞いた別れ際の感じだと、カチュアに未練タラタラっぽかったけど。
この城に来たのだって、カチュアに会う為では?

わたしの、あからさまに納得出来てない顔を見たカチュアが、キラキラ粒子を飛ばしてとてつもないイケメンスマイルで微笑んだ。


「あの方の事は分かりませんね。
なにしろ、私はあの方に全く興味が無いので。」


あ、コレ…何かあったっぽい!
あったんだろうけど、カチュアにとっては

「どーでもいーヤツと、どーでもいーコト」

扱いになってる。


オースティン……バッキバキに心折られていそう。
でもまァ自業自得だよね。
女の敵には同情せん。ざまぁ。






カチュアと共にヒールナー伯爵邸に帰った。

いつものように邸の前のアプローチに侍女たちが並び、わたしを出迎えてくれたのだけれど…

いつも、わたしの胸に顔を埋めてチチを揉む勢いで飛び付いて来たがるメイの姿が見えない。

スファイの姿も………


「奥様、メイとスファイ、父の姿がありません。
それに…邸に妙な空気が流れております。」


「くっ空気!?」


元々、空気を読むのは下手くそだけど、まだ入ってもない邸の空気なんて、どうやって読むの!?

カチュアの勘、なんか凄くない!?



邸の方から、お義母様のグレイス伯爵夫人がやって来た。
少しばかり険しい表情をしている。


「おかえりなさい、メグミン。
早く、邸に入ってゆっくりお休みなさい。」


カチュアが言ったように、お義母様からピリピリした緊張感が漂う。

そんな緊張感の中でもメグミンと呼ばれてしまう嫁のわたし。
どうなのかしら…これ。


「あの…お義母様、メイは……」


「若奥様、使用人の安否よりも若奥様の身の安全が優先です。
今すぐ邸にお入り下さい。」


何かを感じ取ったのか、カチュアに早く邸に入るようにと促された。

カチュアは、僅かな情報の欠片を継ぎ足して、一番最悪のケースを考える。
わたしが何かに巻き込まれるかも知れない事。

そりゃ…確かに、わたしはトラブルとゆーかイベント呼び込み易い体質らしいんだけど…。


カチュアとお義母様に両サイドを守られる様にして、わたしは邸に入った。


広い応接間のど真ん中に置かれた長椅子に腰掛けさせられ、カチュアとお義母様、そして邸の使用人で剣を扱える者達がわたしの周りを取り囲む。

これ……何なの!?一体ナニがあったのよー!

何の説明も無しにコレ、何なの!?


「メグミン…ちょっと窮屈かも知れないけど我慢して頂戴ね。
さぁ…バナナよ。」


グレイスお義母様がわたしの手にバナナを握らせた。

お義母様、わたしを落ち着かせるのにはバナナが有効だとか思ってらっしゃる!?

サイモンとカチュアがいい仲だと勘違いしていた頃の引きこもりのわたしをまだ引き摺ってらっしゃるの!?


「ちょっと待って下さいよ!一体どうしたって言うんです!?
何の説明もなしにこんな…!」


この、厳戒体制なんなんです?
何で、わたし守られちゃっとりますの?


「こんな言い方はしたくないんだけれど、使用人よりも次期伯爵夫人となるメグミンの方が大事なの。

……実はねメイとスファイが朝から行方不明で…。」


お義母様のグレイス伯爵夫人が険しい顔をしてわたしの隣に腰掛ける。

それは……サイモンが聞いたら厄介払い出来たと喜びそうな…。


「朝…わたしが邸を出る時は姿を見たから…。
わたしが王城に向かってからですよね?
まだ半日も経っておりませんし、二人でデートを楽しんでるとか……ない……だろうなぁ……。」


自分で言ってみて自信を無くす。

メイのスファイに対するあの態度じゃあ、二人仲良く仕事をサボってまでデートなんて…無いよなぁ。


「若奥様、邸の使用人が居なくなったからと言って雇い主がここまで騒ぎ立てる事はそんなにありません。
問題は、あの二人だからです。」


「あの二人?くっつくかも知れないって意味?」


カチュアが首を横に振る。だよね。


「奥様がご心配なさっていらっしゃるのは、あの二人がかつて、若奥様を邸から連れ出して乱暴を働こうとしたからです。

今の二人が若奥様に害を及ぼそうとしている可能性は低いと思いますが、エリーゼとあの二人を結び付けた何者かが再び若奥様に良からぬ事を企み、二人に接触を果たしたのではないかと。
それを危惧してらっしゃるのかと。」


「そうなのよ。
だから何事もなければ、それに越した事はないのだけれど…。
メグミンに何かあってからでは遅いから、二人の状況が分かるまでは警戒を解けないのよね。」


そうなんだ……それは深刻な話だわ……

でもね、お義母様。

わたしとしては、もう当然の様に邸のみんなの前でメグミン呼びされてる事も大問題なんですけど!!

隠しておきたかったんだってば、その名前!
もう、みんな普通に受け入れてるし浸透しちゃってんじゃん。

わたしは長椅子に座りながら「はぁあ」と溜め息をついた。


なんでこう、次から次へと面倒事が起きるの?


わたし、ディアーナみたいに祭り大好きハチャメチャガールじゃぁ無いよ?

普通に平和に暮らしていたいだけなのに。





「……そう言えば……父が、最近スファイの事を探るように邸の周りをうろつく者が居ると言っていたな。」


「あぁ、それ私も兄さんから聞いたわね。
スファイにも心当たりを聞いたけど、腹違いの兄弟の誰かかな位しか分からないって言っていたわよ。」


カチュアが思い出した様に言えば、お義母様も思い出した様に頷いている。

もう、執事のスチュワートさんとお義母様が兄妹って事もバラしちゃってんの?
カチュアがスチュワートさんの娘って事もバラしちゃってんの?

何でもかんでもオープン過ぎやしませんか?
カミングアウトし過ぎだろぉ!


「とにかく、スファイかメイを見つけて話を聞いてからでないと、メグミンの警護はとけないわ。
サイモンが帰って来たら、サイモンにもメグミンを守って貰うけど、寝室の前にも見張りを立たせるから。」


え、そうなの?

サイモン、今夜はわたしを喰らい尽くす気満々でしたけど…
…どうなんのそれ。


「サイモンには悪いけど、全容が定かになるまでは絶食して貰うわ。
コトの最中に何か起きたら大変ですもの!」


お義母様、わたしが何を言おうとしていたのか、分かってらっしゃる……。

それ、サイモンが納得してくれたら良いのだけれど。












豊かな大国ラジェアベリアにも、下民層、貧民街というものは存在する。

貧しい暮らしから抜け出せずに悪事に手を染めるしか生きる術を持たぬ者も居る。

そして、自らの意思でその泥の沼に棲み続けていく者も。



「スファイよぉ、仕事を紹介してやった俺に挨拶も無しに行方をくらませてやがって……で?
久々にツラぁ見たと思やぁ、お貴族様んチで雇われてるだぁ?
テメェふざけてんじゃねぇぞ。」


小汚い小屋の床に縛られたまま転がされたスファイと、同じく縛られたまま床に座っているメイは、周りを囲む男達に見下ろされ、下卑た笑い声を浴びせられていた。


「スファイよぉ俺が、お前をあの…………あの…………
誰に紹介したんだっけ?
どっかの、お嬢さんだったと思うが……。」


クロスバート侯爵令嬢エリーゼの存在は、創造神ジャンセンによってこの世から、その痕跡をほぼ消されてしまった。

先の事件での関係者であるヒールナー伯爵夫妻や、スチュワート、カチュアやメイ、行動を共にしていたスファイの中にはエリーゼの記憶が残ってはいるが、口にするなと堅く言い付けられている。


「どうでもいいけど、誰にもアンタ達の事言わないから、もう放してくんない?
コイツ、賢くないし若奥様に上手く取り入ったワケでもないよ。
コイツ攫っても何にもならないし。」


縛られたままのメイが、フハーっと大きな溜め息をついた。


「お貴族様の邸に出入り出来るんだ、コイツの使い途は何でもあるだろうよ。
邸から金目の物を持ち出す事も出来るだろうしな。」


「出来ないよ、そんなの。
そもそも、私らは金目の物のある場所には近付く事も出来ないしさ。」


縛り上げられたまま大勢の男達に囲まれても、メイは怯えを見せたりしなかった。

胸の上と下に縄が回され、メイの大きな胸が強調された状態になっており男達の目がそこに注がれる。


「お前も見た事あるツラしてんなぁ。
スファイに仕事を紹介した時に、あのー…あの、貴族の嬢ちゃんと一緒に居なかったか?
随分と雰囲気が変わってるが。」


男の内の一人が、メイの胸に手を伸ばした。

途端に、今まで黙って床に転がっていたスファイの顔が青ざめる。


「やめろ!やめろ!!マメシバに触るな!マメシバに…!!彼女には手を出すな!」


「…………スファイ………お前、私の事……」


メイが、スファイを


ドン引きした眼で見ていた。


━━旅から戻りもう、ヒールナー邸に勤め始めてなんだかんだで一ヶ月近くは経つじゃん。

もう私の名前がマメシバでない事は分かっているだろうに、いまだその名前で呼ぶか。コイツ。

マメシバは犬の名前だぞ、コラ。

引くわーコイツやっぱり頭ワリぃなー。━━


「何だスファイ、この女がそんなに大事か?
お前がちゃんと言う事を聞きゃ、この女は解放してやるよ。
当然、手を出したりもしねぇ。」


メイの胸に触れようとした部下の手をバチンと強く叩いて手を引っ込ませる。


「ほ、本当か!?」


━━あ、悪い奴らの提案にアッサリ乗っかりそう。
頭悪いを通り越して、腐ってんのか?
それとも、乗ったフリをして油断させるつもりか?━━


メイは口を出さずにスファイと、親分らしき男とのやり取りを聞く。


「あの、お貴族様の若奥様とやら犯して来い。
弱味を握って、金を引き出せるようにしろ。
元々の依頼内容通りの仕事をしろ。
誰かに助けを求めたり、逃げたらこのマメを殺すぞ。」


━━マメって…………マメシバって聞き慣れない単語を覚えられなかったからってマメ。
スファイの馬鹿、まさか奥様を本気で抱くつもりじゃないでしょうね。
そんな事しようもんなら、サイモン様に即殺されるわよ。

……私の事はどうなってもいいから、奥様が狙われている事を邸のみんなに知らせて…。━━



「マメシバ……」


縄を解かれたスファイがメイのもとに行き、縛られたままのメイをグッと抱きしめた。


「必ず成功させて戻るから……待ってて!」


小屋から出ていくスファイの背を、しばし呆然と見ていたらメイがブチ切れた。


「コラァ!!クソボケカスぅ!!
お前っお前ぇ!!ふざけんなよ!!
奥様に手ぇ出したら、私がお前殺すからな!!」


ガラの悪い言葉遣いで暴れ回るメイを、慌てた男達が押さえ込む。


「こいつ、こんな狂暴な女だったっけ!?
もっと大人しかったハズだが……!!」


小屋の中のメイがそんな状態とは知らないスファイは、ヒールナー伯爵邸に向かい走った。


「不安そうにしていた!早くマメシバを助けないと!」



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