【R18】夜の帳に聖なる契り 『転生後の異世界で、腐女子のわたしがBLネタにしていた推しに喰われる漫画を描く罰ゲーム』

DAKUNちょめ

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129話◆エリーゼの置き土産。

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わたしとカチュアが邸に帰ってから2時間程して、サイモンが邸に帰って来た。

わたしは応接室から出られなかったのでサイモンを出迎えには行けず、サイモンが直接応接室に来た。


「めぐみ!!」


バァンとドアが開いてサイモンがわたしの名を呼ぶ。
だから…その名前は二人きりの時だけにしてって……

何なんだ、今日はカミングアウト大会か?

わたしの名前も、スチュワートさんが伯爵夫人の実兄であることもカチュアの実父である事も既にぶっちゃけてるっぽいし。いいのか?

でもな…わたしの名前だけは……
この世界では通常ミランダでいさせてぇ!

わたしは思わず両手で顔を覆ってしまった。
「勘弁してよ!もう!」の動作だったのだけど、サイモンがガバっとわたしを抱き寄せた。


「めぐみ!もう怖がらなくていい!
大丈夫だ、めぐみ!
俺が君を守る!めぐみには指一本足りとも…!!」


めぐみ呼び、やめい!!連呼するな!


「サイモン、メグミンを連れて寝室へ。
部屋の扉前と、部屋の窓の下。
見張りを立てるわ。
…言うまでも無いけど、しばらく禁欲して貰うわよ。」


「……………仕方あるまい。」


今、変な間があったよね。
お義母様に言われなければ、ナニを致していたの?こんな状況で?
いやいや、それこそ勘弁して下さいって。

寝室に向かう為に、サイモンがわたしを抱き上げようとした。

いや!いやいやいや!
みんなの見ている前で、そんな事をせんでいーですから!


「普通に歩いて行けます!
抱き上げなくていーですマジで!ね、聞いて!」


何か、抱き上げられたまま寝室に行ったが最後、絶対ナニをする流れしか考えられない。
サイモンを信じてないワケじゃない……

でも、貴方のわたしに対する愛が深過ぎて!

ナニに関してはもう、それが平常みたいに流れて行くじゃない!?ルーティンかって位にね!

寝室に到着したサイモンは、わたしを抱きかかえたままベッドに腰掛けた。

わたしを膝の上に横向きに座らせて、こめかみに口付けしながら優しく抱き締める。

うん…この後にガバッ!という展開が無い事を祈る。

メイとスファイが心配だし…ガバッと来られてもサイモンに冷たい態度しか取れなさそう…。


「そんなに、あの二人が心配なのか?
かつては君に非道い事をしようとした者達だぞ。」


わたしの表情を見たサイモンが、わたしの心中を察して訊ねて来た。
そんなに分かり易い心配顔をしていたのね、わたし。


「それ、いつの話ですか。旅に出る前の話でしょう?
わたし…旅の間は二人にたくさん助けて貰いましたよ。
わたしが二人の為に危ない事が出来ないのは分かっています。
でも…心配する位はいいでしょう?」


サイモンにとってだけでなく、ヒールナー伯爵家にとって次期当主の妻である自分の命が、使用人二人より重い事は良く分かっている。

でも、平和な日本で過ごした記憶を有する自分には、人の命に差があるなんて中々割り切れない。

自分一人の安全が、二人の命にまさるとは思えないのだ。


「分かっている。
俺は君のそういう情の深い所も愛おしく思っている。
彼らを無事に助けられるよう尽力しよう。」


サイモンが優しく微笑んだ。
あの二人が絡むと、いつも苦虫を噛み潰したような態度をとっていたサイモンが。

二人を心配するわたしの気持ちを、ちゃんと汲んでくれている。


「ありがとう…サイモン………」


本当は不安だった。

あの二人を疎ましく思っているサイモンだから、あの二人が居なくなったからと言って二人を助けるような行動はしないのではないかと。

サイモンの言葉に安堵したためか、わたしの身体がドッと重たくなった。

サイモンの膝に座ったまま、肩に頭を預けてぐったりと脱力する。


「めぐみ、大丈夫か?
しばらく横になっていた方がいい。」


サイモンはわたしを膝から下ろしてベッドに横たえた。
シーツをわたしの身体に掛け、ベッドの隣に座ったサイモンがわたしの髪を撫でてくれる。


「ごめんなさい…急に疲れが出たみたい…。
少し、寝てもいい?」


「ああ、ゆっくりとお休み、めぐみ。」


額に口付けをされて目を閉じる。
ゆっくりゆっくりと、わたしは深い眠りについた。











ならず者達のアジトからミランダを襲うように言われて解放されたスファイは、ヒールナー伯爵邸の近くまで来ていた。

スファイの中に言われた通りの行為をするつもりなど毛頭無いが、愛しいメイが人質となっている事が心配でならない。


「マメシバ…ごめん。君が嫌な目に遭ったとしても…
僕は…僕達は、奥様を裏切らない。」


ヒールナー伯爵邸に仕える者となった時に、刷り込まれる様に何度も何度もメイに強く言われた。

メイはエリーゼの指示でミランダを危険な目に遭わせた事を今も悔いている。

自身を罪人だと思い、同じ悪行に加担していたスファイの事も同じ様に考えている。

罪を償えるのであれば、自分達がどうなろうとも━━

そんな考えをメイはスファイに共有させた。


『奥様が私らのせいで傷付く様な事があったら私、死ぬから。』


メイの身を優先してメイの真剣な思いを蔑ろにすれば、メイは本当に命を断つのだろう。


「分かってるよマメシバ…。
僕が奥様を傷付けたりなんかしたら、君は僕も自分も許さない。
だから僕はサイモン様に助けを……」


ヒールナー伯爵邸の大門が見えて来た。

そこに向かうスファイの前に、見慣れない男が数人立ちはだかった。


「な、なんだ!誰!?どいてよ!!」


早くサイモンに助けを求め、メイを救い出したいスファイは焦る様に声をあげ、男の身体を退けようと手を前に出した。

その腕を掴まれて男達に拘束されたスファイは、自分の身に起こった事が理解できない。

ならず者達のアジトから自分を見張る為に後をつけて来た男かと思ったが、統率された無駄の無い動きは訓練を受けた兵士に近い。


「少々、手荒になってしまいますがお許し下さい。
スファイ様。」


「!?スファイ様!?ちょ…!駄目だ、僕は…!」


身体を拘束されたスファイの前に箱馬車が来た。
スファイは馬車に押し込まれるように乗せられた。

馬に乗った男達に周りを囲まれた馬車は、スファイを乗せたままヒールナー伯爵邸を離れて行った。












「それにしても、お前いい体してんなぁ。
まだガキだろうに乳ばかりデカくてよぉ。
スケベな男共に好まれそうな体だ。」


ならず者のアジトで縄で縛られたまま床に座ったメイをジロジロと見ながら、頭目らしき男がニヤニヤとメイに話しかける。

メイは見た目が15歳前後の様に幼いが、実際の年齢は22歳。

ミランダよりも2歳お姉さん。カチュアより4歳お姉さんである。もう立派に成人女性である。


「カシラ、もう犯っちまいやしょうぜ。
どうせスファイが成功しても失敗しても犯るんでしょー?」


「残念だがな処女を高く買ってくれる娼館があんだよ。
コイツはそこに売る。」


スファイがアジトを去ってから怯える素振りも無く、だんまりを決め込んでいたメイが、手下どもと頭目の話を聞いて首を傾げながら口を開いた。


「オッサンらにとってスファイって何なん?
モト仲間って感じでもないよね。」


「あぁ?アイツは、この町に流れ着いたヨソもんだ。
病気の母親ァかかえて日銭を稼ぐ為に、優しい俺が使ってやってたんだよ。
大方、オフクロは孕まされてどっかの邸を追い出された下女か何かなんだろうけどよ。」


コイツらは、スファイの素性を知らないらしい。
スファイの父親、グイザール公爵は王族に次ぐ大きな力を持つ人物だった。
そんな人物が処刑された。
当時それは大変大きな話題となった。
その名前は貴族ならずとも誰もが知る名前だ。


━━くそエリーゼは、スファイの素性を知ってるみたいだったよな…
まぁ貴族同士だし…━━


仲介を経て、貴族の荒事を下町の者が受ける事はよくある話だ。

貴族の側からすれば後ろ暗い仕事をさせる時に、雇い主がバレる可能性のある私兵を使うより、失敗しても安い値段で使い捨てに出来る者を使う事はままある。

そう貴族は普通、仲介を幾つか挟み素性を隠して仕事を依頼するのだ。


「俺は、どっかの貴族のお嬢さんに、邸の侍女が連れ出した貴族の女に乱暴を働くよう若い男を紹介しろと言われてスファイを貸した。
だが、アイツは仕事を失敗してトンズラしやがった。
アイツが成功していりゃ手に入った成功報酬が消えちまったんだ。
貴族のお嬢さんが誰だったか思い出せないが、お前の事は覚えていたからよ。
お前に話を聞かせて貰おうと伯爵邸を見張っていたんだ。
そうしたら姿を消していたスファイまで一緒に現れやがった!
しばらくは姿を消していたようだが、お前ら二人がツルンでやがったとはな。」


「ツルンでたんじゃないけど。
しばらく旅に出ていたからね…
私もスファイもラジェアベリアには居なかったし。」


メイはカチュアに、スファイがミランダを襲い損ねた後に傭兵崩れの様な男達が現れた事を聞いていた。
それは、ここに居るコイツらの組織とは全く別。

今思えば、エリーゼは最初からミランダもスファイも殺してしまうつもりだったのかも知れない。

人の命を軽んじ、意のままに操る事も出来たあの悪女は、自分の素性をひた隠しにする事をしなかった。

あの計画の協力者となるメイの素性も隠さなかった。

後のち面倒な事が起こり得る事も意に介さずに、自分に火の粉が降り掛かるならば、神出鬼没の亡霊のような兵士を幾人も使い、簡単に「殺す」という選択の出来る女だった。


「あのくそ女…」


スファイを使い走り扱いしていた、このならず者の集まりは、スファイを使って貴族の女を襲えまでの依頼しか聞いていないのだろう。

だから、その依頼の先が、貴族の女の弱みを握って金を引き出す程度にしか働かないのか。

かなり頭が悪い。

このアジトまるごと血の海になっていたかも知れないのに。


「でも、これで分かった。
邸の周りをウロついていた、あんたらの狙いが貴族家に雇われたスファイを使い、金をせびる事だと。
小悪党じゃん。
でも許せないんだよね私は。
私の愛しい奥様に手を出そうなんて考えた阿呆が。」


鍵の掛かったアジトの重い扉が、壁と扉を繋ぐチョウツガイを破壊してドガン!と部屋の中に飛んで来た。

部屋の中に飛んで来た扉の上に立つ黒いドレスの女が、剣を手に持ちユラリと顔を上げた。


「ま、魔女か!?どうやってこの場所に…
表の手下どもはどうした!!」


「銀狼鬼の次の名前は魔女ですの。
黒衣の魔女……それも悪くありませんわね。」


問いには答えず、女は細く赤い唇にニイッと弧を描いた。

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